第66話 西の夜道、影が呼ぶ
夜のリベリス。
店の灯りが遠のくほど、空気は冷たく重くなっていった。
カケル、グレン、ボビン、フィン。
四つの影が、ゆっくりと西の森へ進んでいく。
「……いつもより、夜が静かだな」グレンが呟く。
その時――
道に落ちていた“影”が、彼らの足元にスッと移動した。
フィン
「な、何ですか今の……!?」
ボビン
「お、俺たちの影と逆方向に動いたぞ……!?」
カケル
「影がズレるか……懐かしいな。狂の時以来か?」
グレン
「普通は懐かしまねぇよ!!」
◇
森に入ると、さらに異様だった。
風がない。
木のざわめきも、虫の声もない。
まるで世界が呼吸を止めているようだ。
「妬は……こういう静けさの中で動くんだな……」
フィンが小声で言う。
「お前、共鳴で感じるのか?」
「……はい。
泣き声が……夜になるほどはっきり聞こえるんです」
「ルシアナのか?」
「……多分、妬が吸った“心の声”です……」
フィンの顔が苦しげに歪んでいた。
◇
森の奥。
木々の間から淡い光が漏れていた。
近づくと――そこは小さな泉だった。
だが、水面には星空が映っていない。
“逆さの夜空”が沈んでいた。
「……ここか」
グレンが聖剣に手を置く。
ボビン「もう完全に異界じゃねぇか……」
フィン「……妬の気配……強いです……。
この先に、ルシアナさんの気配が……」
カケルは一歩前へ。
泉の中央の“ひらけた水面”に視線を向けた。
「……お前の声、届いてるぞルシアナ。直ぐに解決して帰る」
その瞬間――
水面が揺れ、声が空間中に落ちてきた。
――来て……
カケル……
わたしのところへ……
フィン
「ち、違う……! これはルシアナさんじゃない……妬の声です!」
ボビン
「声だけで人を惑わせる……嫌なタイプだ!」
グレン
「おい、カケル……耐えろよ……?」
カケル
「ん? なんか言ってるのは分かるけど、内容は一切届かん」
3人
「「「なんでだよ!!」」」
カケル
「いや俺悪くなくね?」
泉の中央が、ゆっくりと裂けた。
まるで星空を切り開くように。
裂け目の向こうから、強い影の波が吹き出す。
「……この先が妬の本拠地だ」
グレンが息を整えた。
ボビン
「フィン、いけるか?」
フィン
「……はい。ルシアナさん、待ってますから」
カケル
「よし、行くぞ。
妬をぶった斬りに」
カケルが足を踏み入れ、
続いてグレン、ボビン、フィンが飛び込む。
夜と影の境界が閉じ、
一行は“妬の領域”へと吸い込まれていった。
《感情発生 決意1,200,000ルーメ》
ご覧いただきありがとうございます。
夜の森、逆さの星空、そして誘惑する声。
ホラーテイストな展開ですが、カケルさんには通じません。
「内容が届かない」って、ある意味最強の防御スキルですね(笑)。
グレンたちのツッコミが追いつきません。
次回、いよいよ《妬》の領域へ突入します。
引き続きよろしくお願いいたします!




