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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第4章 沈みゆく《哀》の森と決して沈まない男の感情

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第58話 沈んだ跡と、深まる誤解

 沈歩ちんほ現象を突破してさらに森へ進むと、

 空気はもう、灰色の深水のようだった。

 視界は薄く、

 音はほとんど奪われ、

 足音だけが世界の底を叩いている。

「……空気、重いな」

 グレンが息を吐く。

「哀気が濃くなってる証拠よ」

 ルシアナが指先をすくい、気配を読んだ。

「この森……本当に“沈んでる”んだな……」

 リュートの声は震えていた。

 

「……あれ?」

 フィンが足を止めた。

 道の真ん中に、

 灰色の、ぼやけた人影の跡が立っていた。

「人……?」

 アニスが息をのむ。

 だが影は動かず、実体もなく、

 ただ“人型の抜け殻のような跡”だけが残っている。

「これ……ひょっとして……」

 フィンが喉を鳴らした。

「沈んだ……人の跡……?」

 

 ルシアナは影に近づき、

 指先をそっと近づけた。

「……違うわ」

 その声が低く響く。

「これ……カケルの跡よ」

「え……!?」

 一行がざわめく。

「体格も、ここの感情残滓も、何もかも……

 カケルのものと一致しているわ」

「つまり……カケルさんが……沈んだ!?」

 フィンが青ざめる。

「まだ“沈んだ”とは限らない。

 ただ……哀に強制的に“跡”を抜かれたのは確か」

「強制的に……?」

 ミレイユが眉をひそめる。

「哀は、対象を沈めようとするとき、

 “心の影”を複製して消耗させるのね。

 これは……その跡の一つ」

 ルシアナは跡を見つめ、唇を強く噛んだ。

「……一度抜かれただけならまだ耐えられるけど……

 何度も抜かれたら、本当に危険」

「カケルさんが……こんな“跡”を……?」

 フィンの声が震える。

 

 進むたびに、

 “跡”が増えていく。

 一つ、また一つ。

 立ち尽くす跡。

 座り込む跡。

 倒れ込む跡。

 手を伸ばした跡まである。

「おい……嘘だろ……」

 リュートが目を見開く。

「これ全部……カケルの跡なのか……?」

「信じたくないけど……波長が全部一致してる」

 ミレイユが測定器の針を押さえるように言った。

「こんなに抜かれたら……カケル、どうなっちまうんだ……?」

 アニスの声にも焦りが混ざる。

「……最悪、意識を保てなくなるわ」

 ルシアナが低く言った。

「哀に狙われ続けてる証拠よ。

 これは……まずい」

 

「ぴゅ……! ぴゅい……!」

 フィンの肩でミュコが激しく震えた。

「ミュコ……?」

「ぴゅ……

 (……カケル……こわい……)」

「怖い……?」

 フィンは喉を鳴らす。

哀気の中心にいるからよ」

 ミレイユが言った。

「感情波形がミュコに漏れてる。

 でも……“恐怖の質”が違う」

「違う……?」

「沈む恐怖じゃない。

 もっと……奇妙な……何か……」

 

「ぴゅ……ぴゅい……!」

 ミュコが突然、森の奥を指差した。

「どうした、ミュコ?」

「ぴゅ……!

 (……カケル……もっと、さき……!)」

 ミレイユが測定器を確認して息を呑む。

「沈降波長が急に深くなった……!

 これは……哀の中心領域よ……!」

「行こう!!」

 フィンが叫ぶ。

「カケルさんを……助けないと!!」

 全員が前を見据え、

 さらに沈んだ森の奥へ踏み込んだ。

《感情発生:決意・勇気2,100,000ルーメ》

ご覧いただきありがとうございます!

森に残された無数の「カケルの跡」。

あんなにたくさん「感情」を抜かれてしまったら、普通なら廃人コースです。

ルシアナさんの推測通り、事態は深刻なのか……?

ミュコが感じる「恐怖の質」の違いも気になるところです。

次回、さらに深部へ。

そこで見つかる「跡」の秘密とは? 引き続きお付き合いください!

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― 新着の感想 ―
カケルの跡がいくつもある。大丈夫なのか?と不安になる一行。恐怖の質”が違う?沈む恐怖じゃない。もっと……奇妙な……何か……???奇妙とは?カケルだからなのか? でも、みんなの感情発生は、決意・勇気なの…
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