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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第4章 沈みゆく《哀》の森と決して沈まない男の感情

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第55話 沈む波長と、王都からの来訪者

 リベリスの町に、冷たい風が流れた。

 昼の前借亭。

 客足はまばらで、普段なら騒がしい店内が、妙に静かだった。

「……ミュコ、まだ震えてる……」

 フィンがタオルで包んだミュコの体を抱きしめる。

 ミュコは弱々しく「ぴゅ……」と鳴くしかできなかった。

「哀気に触れた痕跡ね」

 ルシアナが険しい顔で言う。

「でも……どうしてミュコが?

 カケルさんは“ひとりで行く”って……」

「あいつ、ミュコを抱えて行った可能性あるわね」

「否定できん……」

「あり得る」

仲間達の間で、妙な一致が生まれる。

 

「み、みなさん! 大変です!!」

 ノエルが息を荒げて駆け込んできた。

「王都魔術研究院から……ミレイユさんが来てます!

 “沈降波長”がリベリス周辺で観測されたとかで……!」

「沈降波長……?」

 ルシアナの眉がひそむ。

(嫌な予感しかしない……)

 

 ◇


「皆さん、久しぶりです」

 測定器に囲まれた部屋の中央に、ミレイユがいた。

「王都から……? 一体何が――」

「《狂》封印後の残滓解析を続けていたら、

 本来存在しない“沈降波長”が検出されたのよ」

 ミレイユは真剣な顔で続けた。

「その波長は最初、とても弱かった。

 でも……三日前、突然跳ね上がった。

 まるで、封印の隙間に別の柱が入り込んだように」

「それって……」

「“哀”よ」

 ルシアナが低く言う。

「狂とは真逆の性質……

 でも、なぜリベリス近郊に……?」

 ミレイユは測定板を指し示した。

「沈降波長の中心地点は、森の奥。

 そこに……“生体反応が1つ”ある」

「カケルだ」

 グレンが噛みしめるように言った。

 

「ミュコ……カケルさんと森に行ったんだよね?

 怖かった……?」

「ぴゅ……ぴゅ……

 (……さみしい……)」

 そのかすかな言葉に、ミレイユが息を呑む。

「感情波形……カケルから漏れてる……!

 哀気の中心にいる者の感情が、ミュコにまで流れ込んでるのよ!」

「そんな……本当に危ないんじゃ――」

「……危ないわ」

 ルシアナが前に出た。

 けれどその表情には、かすかな確信も宿っている。

「でも……カケルなら、簡単には“哀には飲み込まれない”はず。

 信じたいけど……嫌な予感もあるわ……」

(カケルならやれそう……でも、今回は油断できない)

その葛藤が、彼女の瞳に揺れた。

《感情発生:覚悟300,000ルーメ》


 ◇

 

 ノエルが呼びに行き、

 狂封印でも実績のある《碧牙の矛(アズリオン・ファング)》の

 アニス、ドラン、リュートの3名も到着した。

「来たよー!」

「カケルの野郎がいなくなったとか聞いたぞ!」

「今回も俺達が一枚噛むのか」

 ミレイユは渡された地図に印をつけた。

「作戦はシンプルよ。

 沈降波長の中心――カケルと思われる反応地点まで向かい、救出する」

 アニスが眉をひそめる。

「でも、哀が作る領域は“心を沈める”んでしょ……?」

「ええ。

 普通の冒険者なら、入口で動けなくなるわ」

「普通じゃない連中で助かったわけか」

リュートが肩をすくめる。

「やるしかねぇな!」

ドランが拳を鳴らす。


「ぴゅ……ぴゅい……

 (……カケル……まってる……)」

 ミュコがフィンの袖をきゅっと掴んだ。

「ミュコ……!」

 その小さな声が、

 救出隊の胸に強く響いた。

 

「行こう」

フィンが前に出た。

「カケルさんが……沈む前に。

 僕たちが迎えに行かないと」

 グレンも頷く。

「そうだな。

 あいつに任せっぱなしは……気分悪い」

 ボビンは盾を握りしめた。

「カケル……助ける」

 アニス、ドラン、リュートも構えを整える。

 ルシアナは深く息を吸い、

 森の方向を見つめた。

「哀……

 あなたが何を望んでいても――

 私たちが行くわ。

 カケルを取り戻すために」

 扉が開き、

 救出隊は沈む森へ向かった。

《感情発生:2,100,000ルーメ》

ご覧いただきありがとうございます。

ミレイユさんの再登場、そして《碧牙の矛》も合流しての総力戦です!

カケルのピンチ(?)に、これまでの仲間たちが駆けつける展開は熱いですね。

「沈降波長」の中心にいるカケル。

果たして彼は無事なのか、それとも《哀》に飲み込まれてしまったのか……。

次回、いよいよ《ミスルの沈森》へ突入します。 引き続きよろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
カケルを助けるために、みんなが集合する展開、熱い!みんなのカケルに対する思いを感じる事ができる回だった。みんなの感情発生の桁も大きいのも激アツ。 カケルだから簡単に沈まないと思うけど、どうなるのか?
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