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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第3章 南方の《狂》気と32個の風鈴が奏でる浄化

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第53話 狂編・成果報告 ― 封印の向こうから「出ません」宣言

 ウェルダ熱帯林圏――

 狂の封印地を後にしたカケル一行と《碧牙の矛》は、

 森を抜けて街へ戻ってきた。

 空は澄み渡り、風は爽やか。

 狂の躁気が完全に消え、自然が落ち着きを取り戻している。

「……静かだなぁ」

 フィンがしみじみと呟いた。

「躁気も……生き物の混乱も、全部収まったみたいです」

 アニスが木々を見上げる。

「そりゃ、狂本人が“出ません”って泣きながら引きこもっちまったからな」

 グレンが苦笑する。

 ルシアナは深いため息をついた。

「……二度と封印石を遊び道具にしないでよね、カケル」

「オレじゃないぞ。石が勝手に暴走しただけだぞ?」

「暴走の原因は アンタの指先 でしょ!」

「まぁまぁまぁ」

 カケルはいつもの調子で回避した。


 ◇


 街へ戻ると、支部長ハリスが既に待っていた。

「帰ったか。……顔を見る限り、無事完遂したようだな」

「はい! 狂の躁気発生は完全に停止。

 調査隊は全員救出済み、負傷者も軽症のみです!」

 アニスが胸を張る。

「森の異常生態も収束しています。

 猿の霊獣も正気に戻ってます」

 リュートが補足した。

「何より、“狂”自体の動向が気がかりだが……

 そちらはどうだ?」

 問いに対し――

 全員がそっとカケルを見る。

「……ん?」

 カケルはとぼけた顔をする。

「カケル、説明して」

 ルシアナの刺すような視線。

「いやぁ、その……なんて言うか……」

 カケルは石をひょいと取り出し、机の上にちょん、と置く。

 直後、石がブルッと震え、

 空中にウィンドウが開いた。

『封印から出ません。

 本気まじで出ません。

 今後の連絡も一切ご遠慮ください。 狂』

 …………沈黙。

 ハリスの眉がぴくりと動く。

「……………は?」

「えーっと、つまり……

 自主的ニート、いや……封印ひきこもり状態です」

 カケルが説明する。

「何があったら四魄柱が引きこもるのよ!!」

 ルシアナが机を叩く。

「聖剣を額に押し当てて……えげつなかったな」

 ドランが半目になる。

「いやいや! あいつ自分から封印に戻ったし!」

 カケルは慌てて手を振る。

「戻りながら泣いてたよね……」

 フィンが小声で突っ込む。

 それでもハリスは目を閉じ、深く呼吸し——

「結果として……

 躁気は止まり、森は救われ、調査隊も救出。

 《狂》の活動停止は事実だ。

 ギルドとしては“任務達成”と認定する」

「やった……!」

 アニスが安堵の息を吐いた。

「ただし」

 ハリスはカケルを指差した。

「カケル。

 封印石で遊ぶな。

 分かったか」

「うっ……は、はい」

「声が小さい」

「は、はい!!」

「良し」

 ハリスは満足げに頷いた。


 ◇


 ギルドを出ると、南方の街から使者が来ていた。

「皆さま……本当に、森を救ってくださりありがとうございました!」

「村も町も、被害は最小で済みました……!」

「料理や物資をお持ちいたしました!

 どうぞ遠慮なく……!」

 次々に渡される土産袋。

「わぁぁ……こんなに……」

 フィンが目を輝かせる。

「暫く食材には困らないな……」

 ボビンも静かに頷く。

《感情発生:喜び・感謝200,000ルーメ》

 ルシアナが小声でつぶやく。

「……この世界の“感情”って、いいわね」

 その声は柔らかく、どこか嬉しそうだった。


 ◇


 その夜。

 ウェルダ熱帯林の奥深く。

 薄い影の姿――

 スルヴァは大木にもたれかかって震えていた。

(……あの四魄柱《狂》が……

 封印に怯えて引きこもるだと……?

 何が……どうして……こうなった……?)

 震える影の中で、ぽつりと呟く。

(“人間ごとき”が……四魄柱を……恐怖させる……?

 これは……想定外どころの話じゃ……)

 スルヴァは顔を上げる。

(……だが、残り二つ。

 哀……そして妬……

 こればかりは……

 人間に扱える相手ではない……)

 影は静かに闇に溶けていった。

「……次は《哀》。

 封印は……もうすぐ解かれる……

 私が動く必要もなく、

 人間どもは恐怖に染まる……」

 その声は、森の奥で風に消えた。

ご覧いただきありがとうございます!

これにて第3章「南方・狂編」、完結です!

ハリス支部長も困惑の報告会でしたが、無事に任務達成ということで 。

カケルたちの冒険はまだまだ続きます。

スルヴァの言葉通り、次は《哀》、そして《妬》。

さらに手強い(?)相手が待っているはずです。

引き続き、第4章でも応援よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
カケルってば、説明面倒で、封印石使用。空中にウィンドウが開き、文書を読んだハリス支部長は、ビックリ&頭が痛かったに違いない。だが、流石支部長。内容を正確に理解し、適切に判断した。しかし、きっちり〆る。…
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