第52話 狂、封印引きこもり宣言
狂が封印に戻っていったあと。
森には信じられないほど爽やかな風が吹いていた。
「……終わった?」
フィンが恐る恐る封印石を見る。
「いや、“終わらせた”が正しいな」
グレンが聖剣を肩に担ぐ。
「ふぅ……なんとか生き延びたわ……」
アニスも額を拭う。
ルシアナは両腕を組み、カケルをにらみつけた。
「アンタねぇ……!
四魄柱を“首絞めで更生”させるってどういうセンスしてんのよ!」
「いや、あいつが飛び出そうとしてたからさぁ。
再犯防止には優しさが必要だろ?」
「優しさの意味分かってる!?」
その騒動の裏で——
カケルはポケットの封印石を無意識に指でくるくると回していた。
「これ、なんか光り方とかギミックあるのかな……?」
石がピッ、と一瞬だけ光る。
「ちょっ! カケル! 触らないでって言ってるのに!!」
「うぇ? 今の光、オレじゃないぞ?
偶然だ偶然」
ルシアナは天を仰ぎ、森はやけに静かだった。
――静かすぎた。
次の瞬間。
封印石がブルッと震え、
空中にウィンドウがドンッと開く。
『呼ぶなと言ったでしょうがああああ!!
二度とコンタクトしないでください!! 狂』
「……お前、絶対“何か押した”だろ……」
グレンが呆れ顔。
「押してない押してない! 多分……石の方が勝手に……」
「勝手に着信飛ばす封印石があるか!」
ルシアナがキレる。
フィンが震えて石を見る。
「……あの、なんか……狂さん、
本気で怯えてません……?」
『もう封印から出ません! 呼ばないでください!
本気でお願いします!!』
ウィンドウには、まるで土下座のように
歪んだ文字が浮かんでいた。
「ちょ……これもう被害者のメッセージじゃん……」
アニスが引き気味の声を出す。
「いやぁ……困ったら頼って欲しいんだがなぁ」
カケルが頭をかく。
「頼られるわけないでしょ!
封印石でジャグリングして首絞める人に!!」
ルシアナの叫びが森に響いた。
と、その瞬間——
カケルのポケットの封印石が
再度ブルッと震えた。
『……だから、“例の石”もう振らないでください。
死にます。』
「分かった分かった。
振らないよ。ほら、しまったし」
「しまってるだけで安全じゃないって
狂は絶対気付いてる……」
ルシアナがあきれる。
「まぁ……あいつが出てきたらまた遊んでやるよ」
カケルは軽く手を振る。
「遊ぶな!!」
全員から総ツッコミが入った。
こうして——
狂は 完全引きこもり宣言 を出し、
二度と封印の外に出てこなくなった。
読んでいただきありがとうございます。
封印石から届く「二度と連絡しないでください」というメッセージ。
完全に被害者の悲鳴ですね…… 。
狂が二度と出てこないことを祈りつつ、平穏な森を取り戻しました。
次回、ギルドへの報告と、第3章の締めくくりです。
最後までお付き合いください!




