第50話 狂の核 ― 封印の鎖が外れそうで外れない時
封印核の中心で、狂の頭部はまだ鎖に締め上げられたまま呻いていた。
ギ……ギギ……ギチチ……!
苦しげにうめくたび、鎖は黒い火花を散らす。
その様子を見ながら、ルシアナが心底不安そうに言った。
「今は封印の鎖が締まっているから出てこられないけど……
時間の問題なんじゃない?
このまま放置したら、本当に完全覚醒しそうよ……」
それを聞いた瞬間。
カケルはポンと手を叩いた。
「じゃ、この石をさ――」
「……は?」
「ちょ、カケル……?」
「お、落ち着けってカケル……!」
一同が止める暇もなく。
カケルは2つの封印石を両手に乗せ、
お手玉のように、ぐるぐる回し始めた。
ポンッポンッポン……
全員、絶句。
「おま……何して……!!」
「や、やめろカケル!!」
「ふざけていい石じゃない!!」
その背後で――
ギチチチチチチチ!!!
封印鎖が狂の首にさらに巻きつく。
『アッ……アァァァァァァァッ!?!?』
狂は目をひん剥き、
白目をむいて 泡を吹いた。
「や、やっぱり締まってるわよねこれ!!」
ルシアナが震える声で叫んだ。
「んじゃ次、逆に回したらどうなるんだ?」
「カケル本当にやめて!!!」
止める声もむなしく――
ポンッポンッポン……(反対方向)
ギ……
ギギギ……
……ギィィィ……ッ!?
鎖が少しだけ緩み、
狂の口元にかすかに血色が戻る。
『……ハァ……ハァ……
ニ、ニンゲンども……!!
い……いい加減にしろッ!!』
狂、復活の怒号。
「はい、生意気で〜す」
ポンッポンッポン……
再び逆お手玉。
ぎちちちちちちち!!!
『アーーーーーーッ!!?!!?
マ、ママ待って、待って待って待って!!!
待ってくださいッ!!!!!』
狂が 全力で懇願した。
「……狂ってこんなキャラだったっけ?」
グレンがぽそっと言う。
「もう……何が何だか……」
アニスが目を覆った。
「さすが……さすがカケルさん……
悪魔よりえげつない……」
リュートが震えながら呟く。
ルシアナは頭を抱えた。
「カケル……!
本当にお願いだから、
その……“封印いじり”をやめて!!
狂が可哀想になってきたわよ!!」
「えー?
だって封印石って“封印を調整するもの”なんだろ?
このくらい普通に――」
「普通じゃない!!!」
全員、総ツッコミ。
狂は涙目になりながら鎖に縛られ、震えていた。
『わ、わかった……!!
わかったから……!!
動かすな!!
その石をこっちに向けるな!!
お願いだ……お願いだから!!
首……絞まる……!!』
四魄柱の狂が 人間に命乞い している。
これは、もはや世紀の珍事だった。
「な、ルシアナ。
封印が緩みそうになったらまた回せばいいよな?」
「ちがぁぁぁぁぁぁう!そういう問題じゃなぁぁぁぁぁい!!!!」
空洞中にルシアナの叫びが響き渡る。
狂は泣きそうなかすれた声でつぶやく。
『……っや……やめてくれ……
アタマ……とれる……』
狂の頭上では、鎖がギリギリと光っていた。
《感情発生?:狂の悲嘆150,000ルーメ》
ご覧いただきありがとうございます。
……ええと、緊迫したボス戦のはずなんですが……。
カケルのお手玉によって、四魄柱《狂》がかつてないほど情けないことになっています 。
ルシアナさんのツッコミも追いつきません。
次回、このままどう決着するのか? まさかの展開にご期待ください(笑)。




