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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第3章 南方の《狂》気と32個の風鈴が奏でる浄化

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第46話 テンポの狂う森での遭遇

 ウェルダ熱帯林圏の奥へと踏み込むほど、空気は重く湿り、風もぬるい。

 木々の葉が震え、どこか不自然に“ズレた”音を響かせていた。

「……なんかさっきから妙じゃない?」

 アニスが弓を握りつつ周囲を見回す。

 ボビンは静かに頷いた。

「鼓動が……遅れて聞こえるような……そんな感じがする」

「狂の影響が濃くなると、空間そのものの“テンポ”が乱れる。

 古い文献にもそう書いてあったわ」

 ルシアナが短く説明する。

 本当は、神界の元女神だった知識なのだが。

 グレンやドランはまだ気づいていないらしく、訝しげに耳を澄ませる。

「まるで……音と景色の再生速度が違うみたいだな」

「なんか酔いそう……」

 フィンが額を押さえた。

 そんな中――

 木々の間の“影”が揺れた。

「来る!」

 アニスが矢を構えると同時に――

 影から三体の黒いファントムが滑り出る。

 遅れた影、早い音、ズレた動き。

 常人なら狙いを外して当然の相手だ。


 三体は音もなく散開し、それぞれ違う方向から奇襲してくる。

「くっ……!」

 グレンが剣を振るうが、当たったのは“影だけ”。

 実体は別の場所に跳んでいた。

「ちょ、なんでそこにいるのよ!」

 アニスも狙いを外す。

 その一撃がドランに迫る――が、

ガンッ!!

 ボビンの盾が割り込んだ。

「守る」

 短い一言。

 だが、それだけで場が安定する。

「お前……ほんと鉄壁だな……!」

「助かった……!」

《感情発生:安堵・信頼60,000ルーメ》


 フィンは影と音を見比べながら叫ぶ。

「たぶん……姿が遅れてる!

 本体は……もっと前……!」

 ルシアナが続ける。

「音と影のズレ……文献通りね。

 両者の“中間”が実体の位置よ!」

「それを攻撃なんて芸当、できねぇって!」

 ドランが叫ぶが――

 フィンは短剣を握り直し、小さく息を整えた。

「……やってみる」

 その横にリュートが立つ。

「じゃあ、俺はその逆行くわ。

 選択肢を二つとも選べば、どっちか絶対当たる!」

「よし、行こう」

 二人の間に無言の合図が流れる。


 ファントムが正面から近づき、ボビンの盾の手前で跳ぶ瞬間、

「右……!」

「じゃあ俺は左!」

 二人が同時に跳ぶ。

 ズバッ!!

 フィンの短剣がファントム本体を捉え、霧散させた。

「やった……!」

「ほらな、どっちか当たるって言っただろ」

 リュートが笑う。

《感情発生:喜び・驚き20,000ルーメ》


 暴れるファントム二体がグレンとドランに錯乱攻撃を仕掛ける。

「うわっ!? 何だこの動き!」

「こっちか!? いや違う!!」

 混乱する二人を――

 何度でもボビンが盾で庇う。

ガン!ガンガン!

「落ち着け。狙われやすい場所は俺が受ける」

「ボビンさんマジで神……!」

「お前が前衛で本当に良かった……!」

《感情発生:信頼・畏敬・安堵250,000ルーメ》


 次の瞬間、ルシアナには霧の中に一点“黒い歪み”が見えた。

「アニス!!

 幕の“結び目”が見えたわ!

 そこを射抜けば、空間のズレは全部消える!

 斜め前方、霧の中の黒い歪みよ」

「結び目……了解!」

 アニスは静かに弓を引く。


「姿じゃなく、音でもなく……

 幕の結び目…歪みを射る……!」

 矢が放たれ――

 何もない空中の一点へ吸い込まれ、

バチィィィン!!

 鏡が割れたように空気が震え、

 テンポの狂った空間が元に戻る。


「今だ!」

 グレンが一直線に踏み込む。

「よっしゃあああ!」

 ドランも並走し、

ズシャッ! ガンッ!

 ファントム二体も、正しい位置が露わになった瞬間、

 一息に斬り倒された。

霧が薄れ、森は静かになった。


「――ふう、やっと終わった」

 グレンが肩で息をする。

 アニスは弓を下ろし、にこりと微笑んだ。

「良い連携だったわ。

 みんな、それぞれ役割を果たした」

 フィンが嬉しそうに頷く。

「うん! 本当に……すごかった!」

 ドランも悔しそうに笑う。

「新人のくせに……なんでこんな強いんだよ……!」

 ルシアナはため息をつく。

「フィンの勘、ボビンの盾……

 むしろあなた達のほうが主役だったわね」

 そこで、木の根元に座って見ていたカケルが――

 ポツリと言った。

「偶然だけど――

 みんな良い仕事したな」

「お前絶対“偶然”って言いたいだけだろ!!」

 全員が一斉に突っ込んだ。

森に、久々に“正常な笑い声”が戻った。

《感情発生:笑い・絆60,000ルーメ》


 少し離れた高所の枝から、

 スルヴァが震える手で帳面を開いていた。

「ふ、ファントム三体……数十分持つ予定だったのに……

 わ、わずか……一分……!?」

 額に汗がにじむ。

「く、狂の封印地まで来られるのが……

 は、はやすぎる……っ!!」

 青ざめた顔で枝の上にへたり込んだ。

《感情発生:驚愕・恐怖200,000ルーメ》

読んでいただきありがとうございます。

テンポのズレる空間での戦闘。

未来と過去、音と影のズレ……厄介なギミックですが、フィンとリュートの即席コンビネーションが見事でした!

ボビンさんは相変わらず安定の神盾です 。

そしてカケルの一言「偶然だけど」。

もう誰も信じてませんね(笑)。

次回、いよいよ封印の扉の前へ。

感想など頂けると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
ルシアナの「両者の“中間”が実体の位置よ!」を受けて、フィンとリュートは理解して速攻攻撃に転じる。成功。これは喜びと自信につながつるね。なのに、グレンとドランは、まだまだ(ふぅ)もう少し頭使おうね。そ…
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