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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第3章 南方の《狂》気と32個の風鈴が奏でる浄化

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第44話 霧雨の広場に残されたもの

 風鈴の音を響かせながら進むカケル一行は、

 まさに“無双行進”と呼ぶにふさわしい足取りだった。

チリン……チリン……

音が鳴るたびに躁気影が揺らぎ、触れる前に霧散していく。

「……これ、本当に無双じゃない?」

 アニスが苦笑する。

「うん。敵が“来る前に終わる”ってこういうことなんだね……」

 フィンも風鈴を握って感心していた。

 しばらく進むと、霧雨の降る小さな広場に出た。

 湿った地面の中央、誰かが倒れている。

「調査隊員だ!」

 フィンが駆け寄る。

 アニスが脈を確認する。

「生きてるわ。ただ、精神が相当揺さぶられてる」

 その場所には濡れた手帳が落ちていた。

「探索記録……ね」

 アニスが拾い上げる。

「調査隊は、最悪に備えて“異常事態は必ず書き残す”義務があるのよ。

 自分たちが倒れても、後で誰かが読めるように」

 ページを開くと――

『影が笑う。声は無いのに嘲られている気がする』

『森のリズムが狂っていく』

『奥から、歌……?』

「“歌”って何だ?……」

 グレンが呟く。

 そのとき、ルシアナが木陰を指差した。

「フィン、あそこにも!」

 広場の端に2人、離れた根元にさらに1人。

 アニスが即座に数える。

「遺失者3名と行方不明1名……

 全員、この広場にいる!」

 その後、それぞれを確認し、生きていることも確認された。

「ほんと……よかった……!」

 フィンの顔が緩む。


 風鈴が軽く揺れた。

チリン……

 その音が広がった瞬間、

 躁気をまとっていた隊員たちの表情が徐々にほぐれていく。

「……あ……れ……? 頭が……軽い……」

「夢を見て……歌……聴いてたような……」

「ここは……?」

「風鈴の干渉波が精神の乱れまで整えてるのね」

 アニスが感嘆した。

《感情発生:安堵・感謝60,000ルーメ》


「これで全員正気だな。」

「はい、もう大丈夫です。

自分達で戻ることができます」

 カケルはそっとインベントリに手を伸ばした。

「みんな、この風鈴を受け取って。

 一人4個ずつで計16個。

16個なら躁気の心配なく動けるから」

「4、4個……?」

 隊員の一人が驚く。

「壊さないようにね。

 それとこれは世の中に出回るとマズいものだから、

 森を出たら必ず返して」

「は、はいっ! 丁寧に扱います!」

 調査隊全員が慎重に風鈴を腰に吊り下げた。

チリン……チリン……

 緩やかな周期の音が広場の霧を揺らし、

 空気そのものが澄んでいく。


 カケルたちも2個ずつの風鈴を整え、装着し直した。

「よし、俺たちも準備完了」

 その瞬間、偶然の風が吹く。

 調査隊の16個、カケルたちの16個――

 計32個の風鈴が、“一瞬だけ” 完全同期する。

チリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!!

 世界がひっくり返ったような“共鳴”。

 音というより、“森全体が共振した”感覚。

 次の瞬間。

バサアアアアアアアアアアア!!

 森中の躁気影が―― 一斉に霧散した。

 しかし、カケルたちは気付かない。

「ん? 今ちょっと風強かった?」

 カケルが首を傾げる。

「そう……かもしれないけど」

 ルシアナも肩をすくめた。

「森が……急に静かになった……?」

 フィンが呟くが、誰も深刻に受け止めなかった。

「じゃ、奥へ進もうか」

 カケルは軽く風鈴を揺らし、歩き出した。


 ◇


 木のてっぺん。

 スルヴァは石像のように固まり、震えていた。

「…………な……なに……?」

 かすれた声。

「32個……

 風鈴……32個が同時共鳴……?

 あいつらの理屈で言うと2の32乗……

 よ……42億……?」

「森全域の躁気が……

 消えた……全部……」

「な、なんなんだアイツらはぁぁぁぁ!!!!!」

 影の官吏はパニックになり、

 泣きそうな顔で森の奥へ逃げ去った。

《感情発生:恐怖・絶望・驚愕600,000ルーメ》


「調査隊のみんな、道中気をつけてね」

 カケルが手を振る。

「必ず風鈴返しに行きます!!」

 隊員たちは風鈴の安定波に守られ、森の出口へ向かった。

「さ、俺たちは本番だな」

 グレンが聖剣を担ぐ。

「“歌”の源……狂の中心領域ね」

 アニスの瞳が鋭く光る。

「風鈴もあるし、森の躁気はもう大丈夫だ」

 カケルは歩き出しながら言った。

チリン……

「行こう。狂の封印地へ」

《感情発生:決意・覚悟2,100,000ルーメ》

ご覧いただきありがとうございます。

調査隊、全員無事でよかったです!

そしてカケルさん、さらに風鈴を配り歩く……。

計32個の共鳴で、森全域が浄化されました 。

もはや歩くパワースポットですね。

スルヴァの報告書、「風鈴で浄化されました」って書いて信じてもらえるんでしょうか(笑)。

次回、いよいよ森の最奥、「狂」の封印地へ。

そこには何が待っているのか……ご期待ください!


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― 新着の感想 ―
調査隊が無事で何より。それよりも、風鈴32個そろっている時に、偶然の風が吹くの?本当に偶然?カケル心の中で願うと風吹いたりする?謎だ。そして32個の同時共鳴で、森中の躁気影が一斉に霧散したから、調査隊…
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