表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第3章 南方の《狂》気と32個の風鈴が奏でる浄化

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/102

第43話 “風鈴干渉祭り”と、躁気影の霧散行進

 ウェルダ熱帯林圏の空気は、じっとりと湿って重い。

 枝の先から落ちる水滴でさえ、不規則なリズムで落ちてくる。

「……また、風鈴が鳴り止んだ」

 フィンが腰に提げた《静心の風鈴》を見る。

チ……チ…… ……沈黙。

 途端に、黒い“影”がぬるりと地面から立ち上がった。

「来た! 影獣シャドウビースト!」とルシアナが叫ぶ。

 アニスが武器を構える。

 影獣たちは先ほどの猿霊獣よりも更に動きが激しい。

 地面を叩くテンポも狂っており、読めない。

「ちょっ……動きがさっきより速くなってる!?

 風鈴の音が負けてるのよ!」

 アニスが叫ぶ。

「風鈴が……負ける……?」

 ボビンが盾で影の爪を弾き飛ばしながら言う。

 アニスは早口で説明した。

「感情波の躁気の濃度が上がってるみたいね!

 “乱れの波長”が強すぎて、風鈴の発生波が打ち消されちゃうんだわ!

 ほら、風鈴の音の出る所、小刻みな揺れしかしていないでしょ!」

「確かに……音が鳴りやんでしまってる……!」

 グレンも気づく。

 影獣たちが連携して一気に飛びかかってくる。

「くっ……動きが読めねぇ!」

「わあっ!?」

「フィン、下がれ!」

 ただ一人、ボビンだけが“狂ったテンポ”を無視して影の攻撃を盾で受け止めていた。

ガギィィィン!!!

「ボビン、すご……!」

「盾は……テンポに影響されない。

 防ぐだけだ」

 冷静すぎる。

《感情発生:安堵・信頼60,000ルーメ》


「……なるほどな」

 カケルがぽん、と手を打った。

「理屈は分かった。

 じゃあ――単体で負けるなら、

“数で殴れば良い”」

「は?」(全員)

 カケルはインベントリに手を突っ込み――

 チリチリチリ~ンと

 16個の風鈴を数個取り出した。

「とりあえず1人2個で16個っと」

「ちょっと!? とりあえずって、何個あるのよそれ!?」

「全部で200個くらい?」

「雑貨屋か!!!」

 ルシアナの叫びが森に響く。

《感情発生:驚愕・混乱600,000ルーメ》


 風鈴が16個、それぞれが音を出し効果を取り戻し始める。

 猿霊獣は動きを止める。

 アニスは複数個の風鈴を鳴らしながら測定器を確認する。

 次の瞬間――バッと風鈴の束を掴んだ。

「ちょっと待って……

 これ全部一度に一斉に鳴らしたら……干渉強化係数が――」

「係数?」

 フィンが首をかしげる。

「風鈴1つの発生波を“2”とすると

 2個で“4”、3個で“8”、4個で“16”……

 “2のn乗”で効果が増幅していくの!!」

 アニスは震える声で宣言した。

「一人2個ずつ持って合計16個なら2の16乗で……

 65,536倍の発生波!!」

「6万!?!?」

「桁がおかしい!!」

「ここら一体の躁気が吹き飛ぶ?」ボビンが小声で言う。


「じゃ、とりあえず試してみようぜ」

 カケルが16個を全員に配り終えた瞬間。

チリン……チリリンリンリンリン!!!

 風鈴たちが“揃った周期”で鳴り始める。

 その途端――

 影獣たちの動きが ピタッ と完全に止まり、

バサァァァァァ!!!!!!

 一斉に、砂嵐のように霧散した。

「消えたああああああ!!!」

「すごっ……風鈴の音、強すぎ!!」

「16個で森が静まり返ってる……!」

「もうちょっとした衝撃波じゃない……?」

 森の躁気そのものの波長が整えられ、

 影として具現化できなくなっていた。


 カケル一行が進むたび、

チリン……チリン……

 その音に触れた影達は、触れた瞬間に 蒸発するように消える。

「……え、なんか……」

 アニスが呟く。

「強くなりすぎてない?」

「影が……近づけない……」

「というか勝手に散っていく……」

「超快適……!」

 風鈴の音が漏れるだけで、

 森が安全地帯に変わっていた。

《感情発生:安堵・奇跡500,000ルーメ》


 ◇


 はるか頭上。

 揺らぐ影がひとつ。

 神界の下級官吏スルヴァ。

「な、なな……な、なんだこれは……!?

 躁気域が……浄化されていく……!?

 風鈴だと……? 風鈴で……“狂”の領域が……!?!?」

 震えが止まらない。

「報告……! これは神界に報告を……!

 あの人間……

 あの“偶然の化け物”……

 想定外すぎて……!」

 スルヴァは涙目になりながら、それでも一行に見つからないように付いていく。

《感情発生:驚愕・絶望・困惑300,000ルーメ》



「……あれ、見て」

 フィンが指さす。

 草むらの奥、

 折れた枝と、落ちた荷物袋。

「調査隊の物だ……!」

「痕跡をたどれば、行き先が分かるわね」

「行こう。この風鈴パワー全開で」

チリン……チリン……

 森は静かに、しかし確実に道を開いていく。

読んでいただきありがとうございます!

1個でダメなら数で殴れ。 風鈴16個の共鳴で森が浄化されてしまいました。

アニスさんの計算(2の16乗=6万倍)が正しいなら、そりゃ影も消滅しますね 。

スルヴァさんの胃痛と報告書作成業務が心配です。

次回、調査隊の痕跡を追います。

彼らは無事なのか? 次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
今回も笑った、笑った。風鈴パワー炸裂!しかも、ルシアナの「雑貨屋か!!!」 の叫びが森中に木霊してそう。しかも16個で超快適になるのだから、今回は討伐本番になるまでは、楽チンなのかしら?いざとなったら…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ