第40話 《模擬戦・後編》
グレン、ボビン、フィン。
3対3の模擬戦は、予想以上に彼らに有利な展開に転がっていた。
◇
■アニス vs ボビン
アニスの槍が三連突きを繰り出す。
「はっ!」
ガンッ、ガンッ、ガンッ!
すべてボビンの盾が受け止める。
(この盾……ほんとに“動かない”……!?
衝撃の逃がし方が……常識じゃない)
アニスの脳裏に、久しく感じなかった焦りがよぎる。
《感情発生:焦り600,000ルーメ》
■ドラン vs グレン
ドランの斧が風を裂く。
「おらあああ!」
グレンはそれを軽く受け流す。
「遅いぞ」
カンッ!
確実に――押し返していた。
(なんでだ……!
憤との闘いの疲れもあるはずなのに、体が軽い……?)
グレンは自分の体調さえ驚きながら戦っていた。
《感情発生:困惑600,000ルーメ》
■フィン vs リュート
「そっち!」
「読める……!」
高速で交差する足音。
フィンの動きはまるで相手の未来が見えているかのようだった。
(嘘だろ……こんな新人いるか!?)
リュートは汗だくで後退を余儀なくされる。
《感情発生:驚愕600,000ルーメ》
◇
三つの戦線がじわじわと《碧牙の矛》を追い詰めていく。
(……まずい)
アニスとドランの視線が一瞬で交わる。
(このままでは“新人に押し切られた”という形になる……)
(せめて一矢報いる……こちらも“総合技”を出すしか……!)
アニスの槍先に風の魔力が集まり――
ドランの斧にも地属性の気配が混じり――
リュートも“位置取り”を一瞬で“決め技用”に切り替えた。
「(あれ……模擬戦で出す技じゃないわ)」
ルシアナが小声で呟く。
まさに三人が“本気の合わせ技”を放とうとした、その瞬間――
「――そこまでだ!!」
ハリス支部長の鋭い声が、雷のように訓練場に響いた。
「アニス、ドラン、リュート!
今の連携、模擬戦レベルを超えている!
これ以上は危険だ!!」
三人はハッと我に返り、魔力を引っ込めた。
「……っ、危な……」
アニスが額に手を当てる。
「……助かったわ。
もう少しで本気で“魔法連携の合わせ技”を出すところだった」
ドランもうつむき、苦笑する。
「悪ぃ……ムキになった。
本気でやっちまうとこだった」
リュートも深く頭を下げた。
「ごめん……俺たち、負けたくなくて……」
アニスは姿勢を正し、
真っ直ぐグレンたちを見る。
「危険な技を出させるほど、あなたたちが強かった……
心から認めるわ。
南方遠征は正式に共闘で行く」
グレンは口角を上げた。
「次は模擬戦じゃなくて“実戦”で頼むぜ」
ボビンは静かに頷き、
フィンは嬉しそうに胸を張った。
《感情発生:尊敬・覚悟2,100,000ルーメ》
──そして、この模擬戦が
後の南方遠征の“序章”となることを、
まだ誰も知らなかった。
読んでいただきありがとうございます。
模擬戦、無事に(?)終了です。
ハリス支部長が止めなければ、訓練場が半壊していたかもしれません。
それほど熱い戦いだったということで……。
互いに実力を認め合った二つのパーティ。
これで憂いなく南の森へ向かえそうです。
次回、いよいよ出発。
その前に大事な「パーティ名」を決めるようですが……?
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