第39話 《模擬戦・前編》
――3対3、火花の開戦**
リベリス支部の訓練場。
観客席には冒険者たちがずらりと並び、
中央の砂地には二つのパーティが向かい合って立っていた。
【碧牙の矛】
アニス、ドラン、リュート。
【カケル一行】
グレン、ボビン、フィン。
その後ろに、
特に守備も攻撃も受け持っていないカケルとルシアナが控えている。
「……俺も何か参加したいところなんだけどなぁ」
「いいの。世界のためだから我慢しなさい」
◇
支部長ハリスが訓練場中央に進み、
高らかに声を張った。
「これより、模擬戦のルールを説明する!」
ざわつく場内が静まる。
「――ルールは簡単だ。
一、防具・武器は訓練用に変更済み。
二、殺傷禁止・大怪我をする前に審判が止める。
三、魔法は“牽制レベル”のみ許可。
四、勝敗は《戦闘不能3名、または審判の判断》」
最後に、鋭い視線でカケルを見る。
「なお、カケル・ルシアナは戦闘参加無しだ。
見学席で静かに応援していろ」
「まぁ、ね。私たちは戦闘要員じゃぁ無いから……」
「“ムッ”専門だもんな」
「ムッ!」
◇
「では――模擬戦開始!」
ハリスの号令と同時に、
砂地が“跳ねた”。
最初に動いたのは、やはりアニス。
「いくわよ!」
風を切る槍撃が一直線にボビンへ。
ガァンッ!!
ボビンは揺るがない。
「……盾に頼るだけじゃないな。
“受ける”技術がある」
「そっちこそ攻撃が鋭い」
ボビンが一言だけ返すと、
アニスの目が愉悦に細まった。
《感情発生:強い意思600,000ルーメ》
◇
中央では、ドランとグレンの武器が激突していた。
「おい新人! 聖剣だけが取り柄なんだろ!」
「訓練用の剣で十分さ」
鋭く重い剣筋がドランを襲う。
「ぐっ」
訓練用の斧で剣を受けながらドランが苦悶の表情を浮かべる。
「どうした?」
グレンがニヤッと笑う。
「べ、別に!? 余裕だし!?」
アニスがこめかみを押さえる。
「ドラン……あんた何やってんのよ……」
《感情発生:闘志600,000ルーメ》
◇
一方、フィンとリュートのスピード戦は――
場内で最も観客をざわつかせていた。
「お、おい……新人の短剣士、ヤバくね?」
「リュートの軌道を“先読み”してるぞ……?」
「なんであんなに動きが読めるんだ……?」
《感情発生:驚き600,000ルーメ》
リュートが叫ぶ。
「なんで避けられるの!?
俺けっこう速いほうなんだけど!?」
「分かんないですけど……
今日はなんか、“視界が広い感じ”で……!」
「広い感じって何!?」
《感情発生:驚き600,000ルーメ》
◇
後方のカケルとルシアナ。
「三人とも……なんか絶好調ね」
「そりゃそうさ。だって昨日――」
ルシアナはカケルの胸ぐらを掴む。
「あなた、何かしたの!?」
「まぁ、皆に精力を付けてもらおうと思って、
以前討伐した紅蓮飛竜の肉をステーキにして出しただけさ」
「なんですって!
紅蓮空竜の肉を食べた人間は、身体能力が上がるの!!
古代聖竜のエネルギーよ!?
なんで普通に焼いてんのよ!!」
カケルはまったく悪びれずに笑った。
「インベントリにしまってあったやつ、
イメージして取り出したら、
丁度いい切り身で出てきてくれて、
普通に焼くことができたよ」
「普通に焼けた理由を聞いてるんじゃないのよ!」
「まぁ、偶然の栄養満点食を振舞ったってことで」
「偶然じゃなぁぁい!!」
ルシアナの絶叫と同時に、
グレンの剣閃、ボビンの盾受け、
フィンの軌道読みがさらに鋭さを増していく。
「なんか今日マジでキレがいいんだけど!」
「俺もだ!」
「僕、生まれて初めて“手応え”があります!」
観客席がどよめきに包まれた。
――竜の肉の効果。
それはまだ誰にも悟られていない。
ただひとり、ルシアナ以外は。
「……もう知らない。責任取ってよね」
「はいはい」
カケルは軽く手を振った。
戦闘はさらに熱を帯びる。
――次回《模擬戦・後編》へ続く。
お読みいただきありがとうございます!
模擬戦開始です。
ボビンの鉄壁、フィンの先読み……みんな確実に強くなっています。
そしてカケルさん、しれっと「竜の肉」を振る舞っていたことが発覚 。
「偶然焼けた」で済ませるメンタルが一番のチートスキルかもしれません。
次回、模擬戦決着! 上級冒険者相手にどこまで食らいつけるのか? お楽しみに!




