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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第2章 黒き怒気と転がる偶然の浄化

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第35話 村に満ちる光と、影の気配

 憤が霧となって消え去ったあと――。

 屋敷の外へ出た途端、村の中央広場は大歓声に包まれた。

「やったぁぁぁ!!」

「憤が……いなくなったぞ!!」

「みんな……助かったんだ……!!」

 押し寄せる歓声と涙。

 村人たちが一斉に駆け寄り、カケルたちの周囲を囲む。

「ボビンさん!! あの盾さばき、すごかった!!」

「フィンくん、あんたのおかげで家族を失わずに済んだよ……!」

「え、えへっ……!」

 フィンが顔を真っ赤にして、胸の奥を押さえる。

(これ……全部、僕に向けられた“嬉しい気持ち”なんだ……)

 胸の奥が熱くなる。

 生まれて初めて味わう「ありがとう」の嵐。

 その感情が一気に解放され、周囲に光の粒子が舞い上がった。

《感情発生:歓喜・涙1,000,000 ルーメ》

 ルシアナが、ふっと目を細める。

「……これは、良い流れね」

 村の代表が前へ進み出た。

 老人だが、涙ぐむ目の奥に強い喜びがあった。

「皆さん……本当にありがとうございました。

 村の皆を……救ってくださって……!」

「ま、特に俺は何もしてないんだけどね。」

 カケルが適当に手を振る。

 代表は深く頭を下げ、

「どうか……屋敷の裏の“集会所”へお越しください。

 ここで立ち話をするには、伝えるべきことが多すぎます」

 と案内を申し出た。


 ◇


 木造で質素だが、静かな空気の漂う場所だった。

 村人の代表たちが並び、憤の被害状況を語り始める。

「怒気で心を失いかけた者もいましたが……

 今は皆、正気を取り戻しています」

「憤が撒いていた黒い怒気が消えたおかげで、

 村全体の気配が一気に軽くなりました」

 ミレイユが頷きながら記録を取る。

「怒気の残滓は、ボビンとカケルが処理してくれたわ。

 もう新しい発生は無いはずよ」

 ボビンが静かにレイジポットを掲げる。

 壺の中では、怒気が逆相でぶつかり、無害な粒子へと消滅していた。

「本当に……村が……戻っていく……」

 代表の声は震えていた。

《感情発生:感謝500,000 ルーメ》


「……あの、ひとつだけ、気になることがありまして」

 年配の男性が口を開いた。

「憤があのお屋敷に居座る直前の話です」

 その屋敷は、大昔に商家が栄えた頃の名残だった。

 商売が傾き、一族が村を離れたため、ずっと空き家になっていた。

「数日前……その屋敷の前に“影”が立っているのを見たのです」

 全員の視線が集まる。

「影……?」

「人型の……でも、人ではない。

 歩くわけでもなく……壁をすり抜けるように屋敷へ入っていったのです。

 あれは……憤でも、従者でもありませんでした」

 ミレイユが眉をひそめる。

「怒気じゃない……? じゃあ何なの……?」

 カケルは何も言わず、ただ視線を屋敷の方角へ向けた。


 ルシアナがそっとカケルの袖を引いた。

 視線だけで周囲を確認し、小声で囁く。

「(……ねぇカケル。

 あれ、“ただの影”じゃないわ)」

「(やっぱり神界か)」

「(ええ。

 下級官吏が地上に降りた時の“残り影”にそっくりよ。

 姿を保てないから、薄く揺らぐの)」

「(憤が居座る場所の見当でも付けていたのか)」

「(ええ、

 この村に憤を導いたんだと思うけど、

 神界の誰かが介入したこと自体が、一番の問題だわ。

 ……気をつけて)」

 カケルは静かに頷いた。

(やっぱり、神界が動いてる……)


 集会所の外に出ると、村人たちがささやかな料理を並べて待っていた。

「憤を退治した皆さんへ、ささやかですが……!」

 フィンは差し出された料理を受け取った瞬間、

 また胸の奥が熱くなった。

《感情発生:喜び400,000 ルーメ》

 仲間たちが微笑み、フィンの肩を軽く叩いた。

「ここからが、俺たちの旅の本番だな」

 カケルの言葉に――

 みんながうなずいた。


村人たちの感謝が染みますね……。

(感情ルーメ的にも美味しいです)

しかし、カケルたちが感じた視線の正体は……? 神界の介入の予感。


次回、第2章最終話! ミレイユが王都で大暴れ(?)して、カケルたちは日常へ。

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― 新着の感想 ―
今まで、苦労してきたフィンだからこそ、生まれて初めて味わう「ありがとう」の嵐が、身にしみて嬉しかったに違いない。勇気を振り絞り頑張って行動して良かったね。憤との戦いを振り返ってみると…憤の怒気に当てら…
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