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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第2章 黒き怒気と転がる偶然の浄化

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第27話 封印の調整と、神級土器の“偶然の出現”

 翌朝の《前借亭》は、ひさしぶりに静かだった。

 店の奥。

 まだ客も冒険者も来ない時間帯。

 そこに居るのは、カケルとルシアナだけだ。

 カケルは、テーブルの上に二つの装備を広げた。

 一つはフィンの短剣。

 一つはボビンの盾。

 見た目は粗末な練習用の短剣と工業用品にしか見えない。

 しかし――それはカケルが意図的にそう“見せているだけ”だ。

「前の戦闘で、封印の紋が少し揺らいでた」

 カケルは短剣に指を触れ、静かに光を走らせる。

「カケルさんが“知り合いの鍛冶職人”に出したことにするんですね」

「ああ。あいつらには神級装備の武具はまだ早い」

 短剣の封印が、淡い輝きを取り戻す。

「フィンにも、ボビンにも……

 本当の力を背負わせるつもりはない。

 少なくともまだ、“普通の剣士と盾使い”でいい」

「……優しいわね」

「やめろって」

 ルシアナが微笑む横で、

 カケルはボビンの盾に触れた。

 ひび割れていた封印模様が、

 静かに閉じていく。

「これで、二人とも問題なく使える」

「よかった。あの子たち……少し戦いを怖がってるみたいだし」

「ああ。だからこそ、強すぎる真実はまだ見せない」

 封印の光が消え、

 二つの装備はただの武具のように見える姿に戻った。

「よし、完了っと」

 暫くして、フィンとボビンが到着。

 カケルは二人に調整した短剣と盾を渡す。

 そのとき。

 ――バンッッ!!

「おっはよーーーーッ!!」

 扉が爆発するかのように開き、

 ミレイユ・フォルティナが元気よく飛び込んできた。

「調査の準備できた!?!? 感情エネルギーの観測も!!」

「朝からすごいテンションね……」

 ルシアナがあきれ気味に言う。

「だって!! 今日見せてもらえるんでしょ!?

 噂のカケルさんの偶然アイテム!!!」

「いや、その呼び方やめろ。

……しかもアイテム限定かよ」

 カケルは頭を抱えながら、無意識にインベントリの奥を探った。

(怒気に関連してそうな……「怒気土器どきどき」《レイジポット》?

 いや、怒気で土器ってダジャレか?

まぁ出す必要は――)

 ――ドスッ。

 足元に、重厚な黒金の大きな土器が転がり落ちた。

「……ん?」

 カケルは固まった。

「ちょ、ちょっとカケル!?!?」

 隣で、ルシアナも目を見開いた。

「(なに神級アイテムを出してるんですか!!)」

「(いやだから! 意識したら勝手に出てきちゃったんだよ!!

 事故! 完全に事故!!)」

「(事故のレベルじゃないわよこれ……!)」

 二人が小声でひそひそやっている横で――

 ミレイユはまぶしすぎる光を見るような目になっていた。

「しゅ、しゅ、ご……ッ!!

 こ、これ……!!

 波長……密度……形状……

 ま、まさか……本、物……?」

「え、えーと……古い倉庫に……あったような……?」

「絶対嘘!!!!!」

 ミレイユが叫ぶ。

 ルシアナが即座にカケルの腕を引いた。

「ちょっと、もう少しマシな嘘つきなさいよ!」

「無理だって……!!」

 ミレイユは土器の周りをぐるぐる回りながら、

 新発見の宝を前にした学者のように手を震わせていた。

 周りにうっすらと漂う怒気の流れ、それが土器に流れ込む様子を見て言う。

「これ……!!

 怒気を吸い込む“封印式土器”の最高峰……!!

 間違いないわ……!!

 こんなの初めて見た……!!!」

「……と、とりあえず落ち着けよ」

「落ち着けるわけないでしょ!!

 本物の神級アイテムなんだから!!」

 ルシアナがため息をつきながら言う。

「ミレイユさん、とりあえず……乱暴に扱わないでね。

 これは……その、貴重な……何かだから」

「分かってるわよ!!

 この子は絶対大事にする!!」

 “この子”と言われたレイジポットが、

 少しだけ鈍く光った気がした。

 そこへ、ギルドの使いが走り込んできた。

「調査隊の皆さん! 伝言です!

 勇者グレン様は、遅れて合流されるとのこと!」

「グレン? 何かあったの?」

「古文書に――

 “憤の怒気は聖剣使いと相性が悪い”との記述がありまして……

 かつて憤に挑んだ聖剣使いが、怒気に呑まれた、と」

「……あー……大きなエネルギー同士で吞み込まれ易いのかも」

 カケルは納得したように頷く。

「王都で“怒気抑制用の魔道具”を調整・装備してから向かわれるそうです」

「それなら安心ね」

 ルシアナが微笑んだが――

 カケルはごく小さな声で言った。

「(たぶん……あんまり効かないぞ、それ)」

「(え、そうなの?……)」

 ミレイユは、その会話を聞いていない。

 レイジポットの紋様を見ながら、興奮で震えている。

「これ……解析できたら……

 ぜったい調査に役立つ……!!

 村の状態も読める……!!

 あああ忙しい!! 忙しいけど幸せ!!」

「元気だなあ……」

 カケルは苦笑し、

「よし。結局調査隊は俺たちだけか。

全員準備は整ったな」

「はい!」

「うむ」

「もちろん!!」

「じゃ、スヴァレ村へ向かうか」

《感情発生:強い意思120,000 ルーメ》

 こうして、怒気に覆われた北方の村へ――

 調査隊は動き始めた。


出ちゃいました。

怒気土器レイジポット」。

ミレイユの目が輝きすぎて怖いです。

さて、装備(と事故アイテム)も整い、一行は黒霧の森へ。

次回、ミレイユの実験がルシアナを襲う!? (同日投稿です)

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― 新着の感想 ―
強力過ぎる武具にフィンやボビンが振り回されないよう再び封印ですね。2人がレベルアップして使いこなせるようになるまでは封印して見守り続けるカケルは、やっぱり優しい。 さてさて、ミレイユとのやり取りは、カ…
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