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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第6章 神界の感情泥棒と暴走する世界初期化(ゼロ・コード)

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エピローグ いつもの場所

 ──神界から戻ってきた翌朝。

 レベリスの空は驚くほど澄んでいた。

 戦いの日々が嘘みたいに、町はいつも通りの喧噪に満ちている。

 カケルは《前借亭》の裏口で大きく伸びをした。

「……はぁぁぁ……帰ってきたなぁ」

 青い空。

 外を歩く人たちの声。

 コーヒーと焼きパンの香り。

 ミュコが店先の石畳の上で「ピュイ」と転がる音。

 どれも“いつもの音”だった。

(帰ってきた……本当に)

 

 ◇


「カケルさーん! こっち手伝ってください!」

 ミレイユが店の前から呼ぶ。

 両手に資料と工具を抱えているその姿は──

 戦いの日々の天才研究員ではなく、

 ただの“忙しい町の技術屋さん”だ。

「はいはい、今行くっての」

「だ、だから急にテーブル魔術式を拡張したら駄目だって言ったのに!

 ほら、焦げてる!!」

 ミレイユの横で何かを隠すように立つグレン。

「ちょ……ちょっと調子に乗っただけだろ!?

 昨日ラグナ倒した英雄様の余韻がだな……」

「余韻で店燃やさないでください!!」

 騒がしさに、カケルは思わず笑った。

 

 ◇

 店の裏では、ボビンが静かに鍋を混ぜていた。

「……スープ。」

「お、いつものやつか。助かる」

「……ほら。」

 差し出された器は、湯気と優しさに満ちていた。

「ボビン、お前……最高だな」

「……ぬるい。」

 照れ隠しなのか、いつもの口癖なのか。

 カケルはその曖昧さすら愛おしく感じる。

 


 通りの向こうから、フィンが走ってくる。

「カケルさーん!!

 今朝、街道沿いに新しい花が咲いてました!」

「お、ほんとか。どんなやつ?」

「黄色で……すっごく明るくて……!

 なんだか、“新しい始まり”みたいな感じなんです!」

「そっか……いいな、それ」

 その一言だけで、胸が温かくなる。不思議だ。

 

 ◇


 そして──

「カケル」

 ルシアナが店の入口に立っていた。

 もう“女神”ではない。

 ただの「ルシアナ」という一人の女性だ。

「お疲れさま。

 ちゃんと……ゆっくり休めた?」

「んー……どうだろな。

 まぁ、こういう騒がしい朝なら……悪くねぇよ」

「ふふ。あなたらしいわね」

 ルシアナは、ふっと笑う。

「でもね……

 あなたと出会ってから、私も“感情”に救われてきたのよ」

 カケルは少し照れた。

「こっちも……色々助けられたけどな」

「これからも……どうか一緒にいて」

 その言葉はとても静かで、

 けれどどんな神の声より力強かった。

「当たり前だろ。

 一緒に生きてくんだよ、これからも」

 

 ◇


 店の看板が風でカタカタ揺れる。

 風は、優しく通り抜けた。

(……風ってのはさ。

 一人じゃ吹けないんだよな)

(誰かと交わって、触れ合って、

 その中で初めて“流れ”になる)

(俺はもう、風を閉じ込めるような生き方はしねぇ)

 カケルは空を見上げた。

 青空の向こう。

 彼方へ続く風の道。

(これからもきっと、

 仲間と一緒に歩く──)

 

 ◇


 ミュコがカケルの肩にぴょんと乗る。

「ピュイ!」

「おう。行くか、ミュコ」

 扉を開けると、

 今日の“いつも通りの一日”が待っていた。

「いらっしゃいませー!!

 前借亭、本日も元気に営業中です!!」

 仲間が笑い、

 人々が集い、

 風が通り抜ける店。

(──ああ、やっぱりここが……)

「……俺の帰る場所だ」


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― 新着の感想 ―
日常生活を取り戻したカケル、大切な仲間と人生のパートナーも見つけられてよかったね。 ラグナと戦ったときに、カッコいいみんなが、ごくごく普通に前借亭で、過ごしているのが微笑ましい。 ミュコちゃんの、新作…
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