時よ、止まれ
ある日、一人の青年が偶然にも時を止める力を手に入れた。
時を止めれば何でもできる……!!
そう思った青年は早速時を止めた。
そして、止まった世界の中で彼は普段であれば絶対に出来ないあらゆることをしたのだ。
当然、中には犯罪行為やそれに類するものもあったが、止まった世界であるがために誰も彼を咎めることは出来なかった。
そして一通りやりたいことをした青年は時を動かそうとした。
しかし、ここにきて青年は気づく。
どうやっても時を動かせないことに。
そう。
青年は時を止める力を手に入れたは良いものの、時を動かす力は手に入れていなかったのだ。
止まった世界の中で青年は何度も時を動かそうとしたが、遂に時は再び流れ始めることはなかった。
結果として、彼はまるで絵画のように精巧で美しくそれでいて停止した世界の中で今も一人で生きている。
時が止まっている故に彼自身も一切の老化をしないままに。