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「少女は魔剣を携えるようです」

作者: 結晶蜘蛛


 私、ピンチです。

 女奴隷として売られて、船で運ばれてる最中だったんですが、嵐にあって船が沈んでしまいました。

 手枷足枷がついたままなので、泳ぐことすらできません。

 ぶくぶくです、ぶくぶく。

 いえ、言ってる場合じゃありません、息苦しさで頭がいっぱいで、我慢できずに息を吸おうとして、水を吸ってしまってもう、思考すら――

 ――我を取れ、主よ。

 そんな声が聞こえた気がした



 私は夜、目を覚ましました。

 どこかの屋敷のようです。

 見ると、私の手元には一本の剣がありました。


「――起きたか主よ」

「な、なんのですか、あなた?」

「私の名前は夜を裂くもの、月光の魔剣ルナリクス。運命的な出会いにより主は私を手に取った」

「は、はぁ……それはわかりましたが、私はどうやって助かったんですか?」

「私を手に取っている限り、主は月夜の間は不死身になる。そのおかげで助かった。無論、代償もあるが……」

「だ、旦那様ー! 彼女が起きました!」


 なにか不穏な単語が聞こえましたが、部屋に入ってきた侍女のお姉さんらしき声がかき消してしまいました。

 それからは目まぐるしいものでした。

 どうやら、私は近くの浜辺に流れ着いていたようで、そこをこの屋敷の坊ちゃんが拾ったようなのです。

 つまり、坊ちゃんは命の恩人……!

 さらに食事や服まで用意してくれました、天使ですか、あなたたち。

 行く当てもなかったし、ここまで恩を受けたら、恩を返さないのはちょっと心が痛いです。

 なので、頼み込んで住み込みで働かせてもらうことにしました。

 ところで代償ですが、昼間は感情を失うようです。

 なので、昼間はどうしてもぎこちなく笑みを浮かべながらなんとか、業務をこなしました。

 そして夜に感情が戻ってから昼間のことを思い出して、イライラするのです。

 まったく、初めて見ましたよ、枠をツイッとふいて「埃が残ってますわよ」っていう人。

 ルナリクスは夜以外は役に立ちませんし……「主よ、我は置物ではない。素振りでいいからつかってくれないか?」じゃありません、家事には何の役にも立たないんですよ、あなた。

 それはそれとして、坊ちゃんは私によく会いにきてくれました。

 どうやら、初対面で倒れてたのが印象的なようで、心配してくれているようでした、かわいいやつめ。



 仕事に追われながら、楽しい日々でしたが、坊ちゃんにとんでもない予言が下されました。

 なんと坊ちゃんは魔王の生まれ変わりであり、将来、国を亡ぼすというらしいです。

 そして、屋敷の周囲はすでに兵士に包囲され、坊ちゃんを引き渡すように要求されてます。


「頼む、お前だけが頼りなのだ。息子を連れて逃げてくれ!」


 旦那様が血相を変えて、私に頼みます。

 あの包囲網を突破できる可能性があるのは、魔剣を持っている私だけ。

 私も大恩のある坊ちゃんは守りたい。


「ルナリクス、力を貸してください」

「当然だ、主よ。今夜は月夜、わが幻惑の力があれば逃げることができよう」


 荷物をまとめ、私は坊ちゃんの手を引き、ルナリクスの力で幻を見せ、兵士に見せかけ、逃げだしました。

 そうして、逃避行が始まったのです。


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