表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

求む!夫を上手に操る方法(ただし操縦レバーは寝言のみとする)

作者: 五月ゆき

※なろうラジオ大賞投稿作品のため、1000字の超短編です。


夜中に目が覚めると、寝室に誰かが立っていた。


ギョッとしたけれどすぐに夫だとわかった。驚かせないで頂戴。お手洗いに行ったの? 早くベッドに入ったら?


まどろむ私の前で夫はウロウロしていた。大きな長方形の箱を抱えて。


なんなの、その箱?


箱は綺麗に包装されている。


そういえば明日は冬の祝祭、愛する人に贈り物をする日だ。思わず瞬いた。まさか私へのサプライズプレゼント?


政略結婚で、夫婦になって初めての祝祭。夫が内緒でプレゼントを用意してくれているなんて思わなかった。学者肌で、魔術以外は不器用な人だと思っていたのに。


夫は箱を抱えてあっちへウロウロ、こっちへウロウロ。置く場所に困っているらしい。


寝室にあるのはベッドとサイドテーブル、それに細身の椅子が二脚だけだ。箱を置くには小さすぎる。でも床に置くのは躊躇われる。夫の悩みが後ろ姿から伝わってくる。


私は心の中で念を送った。椅子よ、椅子を離して置くの、両端に置けば大丈夫!


不意に夫は閃いたようだった。こちらに近づいてきたので慌てて目を閉じる。ベッドが重みで沈んだ。なぜか私の隣に箱がある。


ばか!あなたはどこで寝るのよ。目が覚めて、あなたが隣にいてくれなくちゃ意味がないじゃない。


私は寝返りを打つふりをして箱へ近づいた。

夫が慌てて箱を持ち上げる。やったわ。


私は寝言の振りでいった。


「いいわ、素敵よ……」


怪しげな寝言になってしまったけれど、これはヒントよ。起きていることがバレないように捻ったの。


いいわのいと、素敵のすで、いす! いすよ!


夫はなぜか箱を落としそうになっていた。慌てた様子で箱を抱え直し、大きく深呼吸している。


なんなの、その反応。


私はさらなるヒントを送った。


「ふた……、ふた」


「素敵な……蓋!?」


二つの椅子!


「すい、すいすい……」


「素敵な蓋がすいすい……、泳ぐ!?」


泳がないわよ!


「蓋が欲しかったのか? 私が魔術で蓋を泳がせることを期待していた……?」


どんな魔術なの、それは?


まずい、このままでは夜が明けてしまう。


わたしのヒントがポンコツだったことは認めるわ。でもあなたの反応もとんちきすぎるでしょう。


ポンコツな私ととんちきな夫、二人の力を合わせてもポンちきにしかならない。


仕方ないわ。


「いす……はなして」


あっと夫は椅子へ向いた。

二つの椅子を離して箱を置く。

箱はようやく安住の地を手に入れたのだ。


夫と私の安堵の息がシンクロする。




そして夫は振り返り、目が合った。









メリークリスマス!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
愛すべきポンちき夫婦…末長くお幸せに!
そんなポンコツな旦那様からのプレゼントが何だったのか気になります。
寝言のふりをして夫を操縦する。 思わずクスッとなる面白い話でした。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ