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少女たちの宿暮らし  作者: お餅
宿暮らしの慣れ編
7/7

6話 貼る照明

 お昼ご飯はパスタだった。たらこソース美味し。

 どうして和食を提供する旅館でパスタを食べていたのだろう?

 まぁ、いいや。


 午前のうちに廊下と備品補充は終わったので、本館と別館を結ぶ通路の方を先にしようかな?

 通路もそこまで距離があるわけではないので、そこまで時間をかけることなく終わりそうだが。


「2人は私といっしょに通路の掃除ね」

「あれやな」

「がんばろっ!」

「愛は引き続き、ゆめさんといっしょに部屋の掃除をしてもらいたいのだけど、大丈夫?」

「わかりました」

「終わり次第通路の方の掃除を手伝ってほしい。あと、みんな休憩したかったらいつでもしていいから、楽にね」

 義務感で作業はしてほしくない。あくまでも『お手伝い』なのだから。


「お気遣い、ありがとうございます」

「当然でしょ」

「通路の掃除終わったら今日は終わりなの?」

「そうだね。他の部分は明日以降になってくるかな」

「明日から何すんの?」

 るるの質問だ。


「大浴場の清掃かな、掃除関連終わったら、お母さんから仕事の具体的な内容について教えてもらうと思う」

 食材の買い物なども行うことになるだろう。大変だな。

「いよいよですね」

「多分、料理を運んだり、食器の回収をするとかだけだから、そんなに杞憂しなくていいよ」

「そうなんだ、なら安心だね」

「じゃあ、清掃に取り掛かりますか」

「せやね」

「そうですね」

「うん!」


 ーーーーーー


 私達は、別館通路のほうにやってきた。


「暗いね」

 りんにそう言われて、私は明かりのスイッチに手を伸ばす。

 一応、通路には中庭に面した窓があって、少しの光はあるのだが、窓が北東向きなので、今の時間だと、あまり明るくない。


 カチッ、カチッ

 点かない。照明が切れているのかも。

 今は技術の進歩によって、なにもないところから光が発しているように見える。照明は天井に『貼る』時代になったのだ。

 無論、客室の照明は、吊り下げの糸引っ張ったらカチッってなるやつだ。名称は知らない。


「切れてるみたいやね」

「そうだね、倉庫の方に明かりがないか見てくる」


 倉庫に入る。倉庫は住居のほうのリビングの隣りにあって、構造上、リビングを通らなければいけない。

 貼る照明は無かった。どうやら予備はもう使ってしまったみたいだ。


「お母さん?照明無いんだけど買ってきたほうがいい?」

 照明がなければ効率のよう掃除にはならないし、後々付け替えなければならない。



「そうねー、行ってきてくれるー?」

 階段の奥から声が聞こえた。母は2階にいるようだ。2階には私の自室と母の寝室、ベランダがある。


「うん、他に買ってきてほしいのとか、無いー?」

「無いわー、お金は後で渡すからー、頼むわねー」

「2人はどうするー?」

「脱衣所の掃除を任せるわー、私が教えるからー、大丈夫よー」

 助かる。報告だけしておこう。


「照明はなかったよ」

「暗いけど掃除するしか無いね」

「いや、お母さんが脱衣所の掃除を教えてくれるみたい」

「自分は照明()うてくるん?」

「うん、行ってる間頑張ってね」

「任せなさい!」


 大丈夫そう。

 では、北傘モールに繰り出しますか。

 ……一応、余所行きに着替えてから行こうかな…。


 ーーーーーー


「午後もよろしくね、愛ちゃん」

「はい、よろしくお願いします」


 この2人は、別館4号室から掃除を始める。


「どう?疲れてない?へいき?」

「問題ありません」

「そう、じゃあ、始めよっか」


 フフフ、とゆめが笑う


「どうかしましたか?」

「いや、なんだか職場体験みたいだなって」

 自然な笑みを浮かべるゆめ。


「そうですね、似ているような気がします」

「愛ちゃんは、職場体験でどんなことをしたの?」

「私は、スパーマーケットに行って、品出し作業のお手伝いをしました」

「結構大変そうだよね」

「そうですね、アイスを保管しているところに入ったときは、とても寒かった記憶があります」

「あー、なんか冷凍室?的な」

「多分、そういうものです。アイス自体も冷たいですから」

「学べるところはあった?」

「そうですね、普段、よく目にする人たちが、どのようなことを考えて仕事をしているか、わかったような気がしました」

「働く大人も大変なんだよね」

「そうですよね。私は、ゆめさんの助けになっていますか?」

「そりゃ、勿論。愛ちゃんが手伝ってくれてなかったら、もっと時間がかかってたと思うよ」

「嬉しいお言葉です。ありがとうございます」

「全然、愛ちゃんは優しい人だね」

 ゆめはそう褒める。かつての自分を思い浮かべながら。


「愛ちゃんは学校好きだった?」

 箒を愛に渡しながら。そう尋ねる。


「少なくとも、嫌いではなかったですよ。学校は楽しいものでした」

「学校、楽しいよね勉強はできなかったんだけど…。愛ちゃんは勉強できたの?」

「まぁ、それなりには」

「いいね、勉強できる人って。私なんか順位も結構下の方だったから、よく担任に怒られたなー」

「熱心な先生だったんですね」

「そうだね、みんなの学力を上げるために相当努力をする先生だったよ。愛ちゃんは好きな先生とかいた?」

「国語の先生とは、よく小説の話題で盛り上がりました」

「いいなー、私もそういう話してみたかった。愛ちゃん、読書家なんだっけ」

「はい、よくミステリー系を読みます」

「うわ、それっぽい、今度、おすすめあったら教えてね」

「はい、イチオシを紹介させていただきます」

 会話をしながらも、着々と掃除を進めていった。


「トイレ掃除しとくから、次の部屋を先にお願い」

「わかりました」

 愛は部屋を出て、すぐに次の部屋の掃除に取り掛かった。


 ーーーーーー


「じゃあ、脱衣所、お願いね」

「「わかりました」」


 2人が任されたのは、脱衣所の掃除。主にすることは2つ。

 1つ目は、床と扉の掃除。床は箒ではいた後に、拭く。

 2つ目は、椅子やロッカーの掃除。籐ベンチやスツールを拭いたり、ロッカー拭いたり。


「りんは、ゲームが好きなん?」

 るるが問う。


「うん!アフター、家でも結構やってたんだよね」

「どんなゲームしてたん?」

「えっと、対戦系とかかな。るるちゃんは何かある?」

「FPSは結構やったわ」

「いいね、FPSって難しそー」

「上達するまでが大変やねん。2人は、そんなにゲームしてるとこ見ーへんよね」

「たしかに。フローもあんまり触ってないから、ソシャゲもほとんどしてないかもね」

 フローとは、フローティングフォンの略称で、空に浮かんだスマホのようなものだ。一般的には、腕につけたバンドに触れて、透明な画面を呼び出して操作を行う。呼び出した本人にしか操作はできない。今では欠かせない情報器具の1つだ。


「結衣は絵描いとるし、愛は小説読んどるもんな」

「そうだね、充実した趣味だと思う」

「りんは結構触っとるやんね、何しとんの?」

「イン◯タばっかり、たまにY◯uTubeも見るかな」

「見始めちゃうと時間溶けてまうんよ」

「そうそう、こっち来てからは、そんなに見てないけど」

「アフターやっとる時間のほうが多いんちがう?」

「そうだね」

 相槌を打つ。微笑む。


「ところで、……」


 2人の会話は、結衣が戻って来るまで続いた。出会ってすぐの、ちょっとしたぎごちなさは、もうそこには無かった。


 ーーーーーー


 意外にも時間がかかってしまった。北傘モールのエディ◯ンで買い求めるつもりだったが、対応する規格のやつの枚数が足りなかったため、急遽、近くの別店舗に行く羽目になってしまった。


 こんなときに限って。これでは、脱衣所の掃除が終わってしまうじゃない!

 仕方ない。全部2人がするの、大変そうだなぁ。


 なので、現在、大急ぎで戻っている最中なのである。


 時刻は——午後1時50分。

 フローの待受画面を横目に、走る。


 ようやく駅前についた。ここからは近いぞ。

 バスも通っているから、傘見市内の観光地に行く際には便利なのだ。傘見城とか、南傘見水族館とか。

 いつかみんなで行ってみたいなぁ。


 ——着いた。母はリビングで、掃除をしていた。


「照明、買ってきたよ」

「ありがとう、つけてきてちょうだい」

「わかった」


 通路に戻る。

 愛とゆめさんももうそろそろ終わる頃ではないのだろうか。

 私は照明を貼った後、ジャージに着替え、脱衣所に入った。


「結衣、おかえり」

「ちょうど、掃除終わったところやで」


長くなったので、ここまで!

人物紹介

柏原安美かしはらあみ

3話にちょっとだけ出てきた人

愛の姉

自由奔放だが、仕事はできるらしい

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