第七話 S組
ども。コウです。
今回は少し長くかけた気がします。ちょっと、いろいろと忙しく疲れていたときに書いた時もあるので、変な文になっているかもしれませんが、ご了承ください。
で、今回も楽しんでいってください。
ギルドから戻った後。キラは約束通りに、アゲハに刀の扱い方を教えた。
アゲハは覚えが早く、教えたことをとてつもない速さで吸収し、日が沈むまでにほとんどのことを教え終えた。
だが、唯一ほかの武器と違うところ、つまり斬線を見極めるということはあまりできなかった。
それでも、実戦では十分に威力を発揮できるところまで、刀を使いこなせるようになったのは、キラとして褒めるべきことである。
翌日も同じように、ギルドで依頼を受け、キラはアゲハに刀の指導をした。
そして、今日。キラとリリィは教師として、アゲハは生徒として学園に通い始める。
~キラside~
「基本的に、新任教師の紹介というのはしないので、始業式が終わった後にあなたたちが担当する、2-Sに案内をします、S組というのは特別なクラスなのですが、その説明は後からでも十分ですので。では、始業式が終わるまで、ここで待っておいてください。自己紹介を何か考えておくといいですよ」
丁寧に説明してくれているのは、ミノタウロスを倒した時に会ったシーナ。校長は教師に決まった服はないと言っていたが、シーナは背中に校章の入ったローブをきっちりと着こなしている。
対するキラとリリィは、漆黒姿と紅姿という出で立ち。武器は装備していない。めんどくさいという理由でいつもしてないからだ。
シーナは説明を終えると一礼し、この職務室から去っていった。
今、この部屋にいるのはキラとリリィだけ。ほかの教師もシーナと同様、始業式に行ってしまった。
「普通、紹介とかするでしょ」
「新学期とともに新学年ですから、そういったことは後回しにしたほうがいい、ということでしょか?」
リリィの言うことも一理ある。春期休暇が終われば、学年が上がるというのが常識で、いろいろと準備が忙しいということがある。と、キラとリリィは予想する。二人共学校に行ったことがないから、それぐらいしか考えられないのだが。
「ま、別にいいか」
深く考える必要のないものなので、思考を放棄する。
「そういえば、私たちが受け持つクラスって、アゲハがいるんですよね?」
「あぁ、そうだったね。あと、勇者君と巫女さんもいるよ」
自分に与えられた席に着いたキラは、出席簿に書かれてあるその名前をトントンとたたく。
リリィの席は、キラと隣り合わせで、机がほぼくっついている。
「うーん……暇ですわね」
リリィは、最近アゲハに取られていた『キラの膝』を取り戻し、そこに座っているわけだが、いかんせんすることが何もない。そのため、『キラ椅子』の座り心地にうっとりしながら、キラと話している。
「まあまあ。あと十五分で終わるんだから、それまでの我慢だよ」
「んぅ……そうですけど……んふ……」
時々色っぽい声を出しているのは、ちょうどリリィの首筋あたりにキラの吐息がかかってしまうからだ。それによってリリィは悶えている。
「あの、さ……そんな声出されると、こっちもやばいんだけど」
キラだって男だ。もっとも愛している女性が、そんな至近距離でそんな声を出されたら、ムラムラするに決まっている。自然と、リリィのおなかに回している腕の力が強くなる。
「もっと、ぎゅぅっとしてくれると嬉しいですわ」
デレデレモード突入。こうなってしまったリリィは、キラの言葉が一切届かなくなる。自分に都合のいい言葉(例えば『好き』とか『愛してる』とか)だけを聞きとる。
キラは、甘えられるのは嫌ではなく、逆に甘えてほしいと思っているので、リリィの要望通りにする。
それから教師陣が帰ってくるまでの十五分間、ずっとそのままの状態を維持し続けていた。
「S組というのは、生まれ持った才能が抜群の生徒たちの集まりです。特に生徒数が多いこの学園では、その人数がほかのクラスに劣るということはありません」
帰ってきたシーナに、2-Sの教室にまでの移動中、S組の説明を受けていた。
「ランクでいえば、ルーククラス(序列三位)の中・上の生徒が比較的多いです。まれに、ナイトクラス(序列二位)の下・中という生徒もいますが、今年はおそらくいません」
(それがいたりするんだよねぇ)
勇者の存在を知っているキラは、シーナのその言葉に小さく苦笑する。
「本来なら、このクラスは王国騎士団にでも入れるような実力を持った先生が担当するのですが、今年はそういった先生がいないので、あなたたちが穴埋めに入ったのです。……とはいっても、ミノタウロスを倒したあなたたちに心配はいらないような気もしますが」
今度は、シーナが苦笑しながら言う。少し頬を染めているのを見る限り、自分たちでふがいないことを恥じているように思える。
だがリリィは、そんなシーナにお構いなしに、豊富な胸を張って「当然ですわ」と答える。
「頼もしい限りです」
苦笑を引っ込め、シーナはほほ笑んだ。
「ここです」
S組の説明を終え、いろいろと学園について聞いていると、シーナが立ち止る。
中からは、生徒たちの元気な声が聞こえ、二人とも柄にもなく緊張する。
実は言うと、二人は大勢の人に注目されるということがなかった。だからだろう。
「最初は私も入りますから、そんなに緊張しないでください。お二人の自己紹介を終えたら、私は教室から出ていきますので、あとのほうはお願いしますね」
そう言ってシーナは、キラとリリィがうんともすんとも言わないうちに、教室に入っていった。
~アゲハside~
「つか、入学式って、だるいな」
そうつぶやくのは、アゲハの隣に座っている、茶髪の勇者レイン。
今は、高等部での新2~4期生に向けての始業式。そして、これから始まるのが入学式。
「仕方ないでしょ。式は神聖なものってされてるんだから」
後ろからにゅっと会話に入ってきたのは、赤眼の巫女エミリア。
式というものは、昔から儀式の代わりとして用いられてきたものだから、由緒正しきものとされてきた。
「けど、だるいもんはだるいだろ」
「二人とも、静かにして。さっきから先生がこっち見てるよ」
エミリアと同じように会話に割り込んできたのは、エミリアの隣に座っているミーナ。
ミーナが言うように、先生の一人のゴツイのが睨むようにしてみている。
アゲハはもっぱら聞き役担当。なわけで、口を挟まずにいるわけだが、そのアゲハもじろりとにらむものだからたちが悪い。ムッとしたアゲハは、周りに気付かれないように、殺気を垂れ流しにして睨み返す。
すると、面白いように冷や汗を流して、視線を外す。
「あー……早くおわんねぇかな」
なおもつぶやくレインに、アゲハも同意する。正直、自分に関係のないものは、邪魔で仕方がない。
なぜか校長よりも話が長い教頭に移ったところで、アゲハは居眠りをし始めた。
十五分後。ようやく式が終わったことで、アゲハたちはほかの生徒と一緒に、自分たちがすごすこととなる教室についた。
「今思ったけどさ、かなり運がいいよな。この四人が全員一緒のクラスなんて」
「いいじゃない。知ってる人がいたほうが」
アゲハとミーナは、会ってはいるが名前を知っていない同士で、レインとエミリアが話しているときにお互い自己紹介していた。
「じゃじゃ、アゲハちゃんはキラ様のことをよく知ってるの!?」
いつの間にか、ミーナの中ではキラの存在が格上げされたようだ。
「最近会ったばかり」
つい二日前にあったばかりだ。そんなによく知っているわけではない。
ミーナは、キラのことがもっとよく知りたかったのか、「そうですかぁ」と言ってうなだれてしまった。
「けど、キラとリリィは夫婦」
これはその場にいる全員にとって新事実だったらしい。
「うぇ、まだあんなに若いのにか!? 俺らと二つか三つくらいしか変わんねぇだろ?」
「でもそれだったら、あの親密さも頷けるわね。熟年夫婦みたいに仲良かったもん」
「あぅ!? わ、私とキラ様のらぶらぶライフが……」
三者三様とはまさにこのことだ。レインは純粋に驚き、エミリアは納得、ミーナに至っては呪詛のようにブツブツと何かをつぶやいている。
「で、でも、私は諦めない! この国は一夫多妻制なんだから、あ、あ、愛人にでもなれば、私にもまだチャンスが!」
結論が出たのか、ミーナはいきなり強気な発言をしだす。
「お、おい? 変なことやめといたほうが……」
「そ、そうよ? それに、一夫多妻制って、最近発布されたばかりなんだからちょっと……」
現実的にはもう可能なことだが、世間体を考えると、まだ受け入れられないのが現状だ。
それが今の常識。
だが――――、
「それ、いい案」
「……もう突っ込まん」
「……アゲハの突然な発言にはもう慣れたわ」
以前の突拍子もない発言から教訓を得たのか、悟りを開いたレインとエミリア。
「でしょう!? ……はっ! ということは、アゲハちゃんは恋敵に!?」
「負けない」
一方のミーナは、同意してくれたアゲハにひどく感激したようだ。が、それもつかの間、アゲハが自らのライバルになることが分かり、威嚇し始める。
アゲハも、先ほどの発言が本当なのか、威嚇し返す。
「はい皆さん、席に着きましょう」
にらみ合っていたところに、きっちりと純白ローブを着こなした先生が入ってきた。
そのことで、たって友達と話していた生徒はそそくさと席に戻る。
一瞬沈黙したが、今度はざわざわと雰囲気が動き出す。
「担任って、シーナ先生かな?」
「そうじゃない? シーナ先生、この学園でもトップの実力持ってる先生だし」
「よっしゃぁ!」
ひそひそと話し合っている内容が、耳のいいアゲハには丸聞こえっだ。最後のは、叫んでいたから普通に聞こえていたが。
「言っておきますが、私がクラス担任ではありません」
シーナが事前に訂正すると、クラス中が落胆の声であふれた。
「普通、このS組には基本担任は一人なのですが、今回限り、副担を付けて二人ということになりました。そのお二人は、校長が推薦で雇った方々なので、実力のほうは申し分ありません。しかし、新任でもあるのでこの学園のことがよくわからないので、ぜひ、教えてあげてくださいね」
このシーナの言葉に大盛り上がり。良い教師が担任に入れば、自分たちが強くなることができるためだろう。
「せんせー! その二人は女性ですか?」
さっきも叫んだいた生徒が手をビシッとあげて聞いている。
「いえ、男性と女性です」
「なんだー……あっ、女性のほうは可愛いですか? きれいですか?」
彼には、“ブサイク”かという質問はないのだろうか、とアゲハは思ってしまう。
男であるレインも、食い入るように聞いていたが、エミリアに睨みをきかされて若干引っ込んだ。
実は言うと、アゲハにはだれが教師かわかっている。覚えのある魔力の波動がすぐそばにあるからだ。
「綺麗と可愛いを足したような感じの人ですね」
「よっしゃー!」
「あ、ナンパとかしないほうが身のためですよ。今から紹介する二人は夫婦ですから」
「んなの関係ないっすよ!」
「あぁそういえば、女性の先生に食事の誘いをした先生が、男性の先生に殺されかけてましたね。自業自得ですけど」
その言葉を聞いて意気消沈するその男子生徒。それを見たシーナは、くすくすと笑い、
「さて、いつまでもお待たせさせるわけにもいきませんから。入ってきてください」
ドアに向かって声をかける。
入ってきたのは、やはり漆黒姿のキラと紅姿のリリィだった。
「あ、あの人……」
「マジかよ……」
エミリアとレインは誰かわかっていなかったようで、あんぐりと驚いている。
「はうん……キラ様……!」
ミーナはミーナで、また会えたことがうれしいのか、なぜか気絶寸前。
ほかの生徒達も様々な波紋を揺らしている。
キラを見てかっこいいだとか、リリィを見て綺麗だとか。肯定的な言葉が主だが、男子に至ってはキラに対して醜い嫉妬の視線を送っている。レイン以外全員。
だがアゲハは分かる。にこにこしていながらも、キラはその全員の視線を受け止め、なおかつ殺気を交えながら返している。
そして、男子(レイン以外)敗北。
「ではお二人とも。あとはお願いしますよ」
シーナが教室を出ていく。
「んじゃ、とりあえず自己紹介から。名前はキラ・フォルステイン、で十八歳。得意武器は二刀流の刀で、得意属性は雷。……男子諸君に忠告! リリィに手を出したら許さないから」
十八歳というのは、この学園の高等部三期生と同い年だ。そのためざわめきが広がるが、キラは無視して自己紹介を続ける。締めはもちろん、男子生徒への忠告。
「では私ですね。リリィ・フォルステインと申します。歳はキラと同じ十八歳ですわ。得意武器はレイピアで、得意属性は炎です。言っておきますが、私はキラのものですから」
やはりこちらに対しても同じ反応。最後の言葉は、男にとってうらやましい限りの言葉だ。
そして、二人の自己紹介も終えたところで、沈黙が舞い落ちる。
「……よし。じゃあみんなの自己紹介行こうか」
一体何の沈黙だったのか。見当はつかないが、教室の一番前の右端の生徒から自己紹介を始めた。
蛇行するかのように各々自己紹介をしていく。
そして、金髪をオールバックにした派手な服装の男子生徒。
「僕は、デイル・パーカーだ。言わずと知れたパーカー家の次期当主だ。言っておくが、僕は低俗な平民と仲良くするつもりはない。……リリィ先生。あなたはとてもお美しい。さっさとその愚民から別れるべきです。そして僕とともに明るい未来を」
もはや自己紹介でも何でもない。最後らへんなんかは、まさにプロポーズ。
それに対してキラは、怒るのを通り越してあきれている。ほかの生徒もそうだ。
「嫌ですわ」
即答。きっぱりと拒絶するリリィ。
「なっ……!? 何を言っている? このぼくが言うのだぞ!?」
「私が愛しているのはキラであり、あなたではありません。たとえあなたがどれだけすばらしかろうが、その事実は曲がりません。そんな、やわな想いではありませんから」
はっきりと、恥ずかしげもなく公言するリリィ。
デイルは諦めたのか、悪態付きながら席に座った。
「ま、変な茶々も入ったけど、続きから」
それから続いていき、アゲハの番に。
「アゲハ。得意属性は炎」
たったそれだけの自己紹介。あまりの短さにみんな唖然としているが、それを気にせず次のエミリアが立つ。
「エミリア・ウェールズ。得意属性は……風ね。うんと、趣味はお買いもの。以上!」
そして順番が回り、アゲハの隣のレイン。
「レイン・フォードだ。全部の属性を使えるが、得意なのは雷属性だな。趣味は……エミリアと遊ぶことか? ま、一年間よろしくな」
まばらな拍手。女子しかしていない。
その次がミーナだ。
「ミーナ・ミシェラン。得意属性は水。趣味は、読書かな。……リリィ様! 宣戦布告です! キラ様を私のものにして見せるです!」
ぶっ飛んだことを言うミーナ。鎮まるクラスだが、アゲハはミーナを見、立ち上がる。
「そのセリフ、私の」
「むっ、アゲハちゃん。これは譲れないの!」
身長差があるため、自然とアゲハが見上げる形になる。二人してにらみ合っていると、
「二人とも落ち着きなさいな。まだ残っているわけですし、後にしたらどうですの? ……キラは渡しませんけど」
さりげなく受けて立つというニュアンスを含めるリリィ。
「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
「くすくすくすくすくすくすくすくすくす」
「…………………………………………ふっ」
三人がそれぞれ、無気味な笑い方をするので、クラス全体は震え上がっていた。
そのあとは、微妙な空気の中、何とか頑張って進めたキラによって次の段階へと移った。
しかし――――、
「……ん? 何をすればいいんだろう?」
腕組みをしたキラが、首をひねりながら生徒たちに尋ねる。
レインとエミリアは呆れた顔をしていたが、ミーナはそうではなかった。
「はい! キラ様! 今日は使い魔召喚と魔武器の生成と聞いています!」
「あ、ミーナ、ありがとう。……様、ってなに?」
普通に返すキラは、教師の態度ではなかった。リリィも別にいさめる気ではなく、キラと同じ疑問を抱いたようでミーナを見る。
「キラ様は命の恩人ですから!」
「……ま、いっか」
やめてくれとは頼まなかった。しかしアゲハは知っている。ミーナのような子は、意外と頑固で、言い分を絶対聞いてくれないのだ(リリィの恋愛小説参考)。
「先生は使い魔とかいるんですよね?」
デイルが嫌みたっぷりに聞く。正直、男の嫉妬は醜いものだとアゲハは思う。
「いや」
あっけらかんと答えるキラに、唖然とするクラス。
当たり前といえば当たり前の反応だ。教師というのは、生徒たちの模範となるもの。当然、使い魔や魔武器などもないといけないわけだ。
S組ともなれば、それは当然で、さらに上位の使い魔がいけない。
それを理解したうえで、デイルは聞いたのだ。
そしてデイルは気味の悪い顔をもっと気持ち悪くする。
「だったら――」
「だって邪魔だし」
デイルの声にかぶせてキラは言う。そして続けて、
「生か死かっていうところで、使い魔なんかに頼ってられなしね。それに、僕にはリリィ、っていう最高の相棒がいるしね」
「やですわ、キラったら」
腕組みを崩さずに、うんうんと頷きながらキラは堂々といい、それを聞いたリリィが頬を染めながら照れる。
そこから数分、夫婦でいちゃいちゃして、
「ってことで、あ~、とりあえずグラウンドに集合しようか」
そういうと、リリィを連れて教室を出ていったのだった。
人物紹介の件ですが、もう少し後に書こうと思います。まだ人物がそんなに出そろっていないので。あと、すでに書いた紹介文のほうも、変える時があるので。
では、これからもよろしくお願いします。




