第五話 勇者登場
ども。コウです。
あけましておめでとうございます。投稿し始めてからわずかですが、今年も頑張っていきたいと思います。
タイトル通り、勇者がやっと登場します。彼の活躍を見守ってやってください。今回は何もしませんけど。
では、新年早々の投稿話、楽しんでください。
「今、この学園は春期休暇中なので、来学期から通ってもらうことになります。キラさんとリリィさんの受け持ってもらうクラスは後日連絡します。アゲハちゃんもですけど、寮についたらまず係りに申しつけてください。名前を言えば分ってくれると思うので」
諸注意などを受けた後、キラたちは校長室を出た。
「アゲハ。頼むね」
地図を読めなく情けない大人二人は、地図を読めて頼れる少女に地図を託し、案内してもらう。
学園都市というのはまんざらでもないようで、グランバールとはまた違った風景だった。
地面に敷き詰められた、赤茶けた煉瓦はもちろん、そこここに並ぶ店などもグランバールでは基本石造りに対して、木で建てられている。
休暇中だからか、道通りには数えるほどしか生徒達がいない。
そんな中キラたちは、次々と必要なものを買う――もらっていったのだった。
「ここ」
必要なものを買いそろえ、次に来たのはアゲハが住むことになる学生寮。
アゲハは、本当は高等部の一期生からやらなければならないらしいが、年齢が年齢で、特に一期生では基本しかしないから二期生からでも十分だとのこと。
アゲハの編入先は決まっているらしく2-Sだそうだ。
「でかいな……」
「おっきいですわね……」
寮という割にはかなり大きく、ミニ版の王城だ。教師寮もそうなのかと思うと、自然と二人の期待も高まる。
「ここで、お別れ。二人、いける?」
地図を読めるアゲハがいなくなると、自然と迷子予備軍であるキラとリリィしかいなくなり、迷子率が急上昇。
「だ、大丈夫さ。ここからそんなに遠いわけじゃないし」
「そ、そうですわよ。たとえ迷子になったとしても、空中から探せばいいだけですから」
あわてて答える二人だが、いまいち覇気がない。
「そ」
木にした様子もないアゲハは、背中を向けて寮に入って行った。
「……行こうか」
「……そうですわね」
とてつもなく嫌な予感を抱き、二人は地図とにらめっこしながら教師寮へ向かった。
~アゲハside~
表面では表していなかったものの、アゲハはかなり楽しみだった。
ドラゴン族というのは、もともと群れをなさないもの。関わりがあるとすれば、自分の家系のものだけ。だからというか、擬人化時ほどでもないが、無口だったアゲハには交流という交流がなかった。
そして人間というのは交流を文化として栄えていくもの。そう母親に教わった。それから、人間に興味を持つようになった。
それと同時に人間社会は汚い、と耳にたこができるほど聞かされたアゲハだったが、好奇心というものも、憧れというものも抑えきれるものではなかった。
だから今。自分が人間という位置にいるのが、夢のように思える。今に至る経緯となる原因は不純だが。
だから今。楽しみでしかたなかった。これからの学園生活というものが。
「アゲハ、ですか? 少々お待ちください」
カウンターにて。アゲハは今、係員に自分の部屋がどこにあるか聞いている。
ホログラムと呼ばれる、創造魔法と幻想魔法をあわせてつくった映像で。確認をとっている係員。アゲハにとってとても珍しいものなので、じぃっと見ている。
「あ、ありました。それでは生徒カードを貸してくれませんか?」
「?」
「生徒カードというのは、個人情報が書かれたもので、編入の場合校長先生が作ってくれるものです。何かもらってませんか?」
もらう、のところで気づいたアゲハは、ゴールデンカードを係員に出す。それがどういったものなのか知ってる係員は、驚いた顔をしたが、それも一瞬のこと。
ゴールデンカードをホログラムにかざし、それを返す。
「これで生徒登録は完了しました。部屋は2S-39です。あちらの魔法陣に乗って、部屋番号を念じてください。そうすれば部屋の前についています。ロックと解除の仕方ですが、そちらのカードをドアの真ん中にある小さな魔法陣にかざしてください。そうすれば、自動的になりますから」
「ありがと」
懇切丁寧に教えてくれた係員にぺこりとお辞儀し、指された魔法陣のほうへ向かう。
床に刻まれた魔法陣に乗り、部屋番号を唱えると、その場からアゲハは消えていた。
「あぅ……」
実は言うと、召喚された強制転移のとき以外、任意での転移は初めてでアゲハは軽く酔ってしまった。
本当に自分の部屋の前で、アゲハはドアにあると言われた魔法陣を探す。
木製の上品な感じのドアの中心部に、白く刻まれた魔法陣。そこにアゲハはカードをかざす。
すると、カードとドアの隙間ぐらいに刻まれた魔法陣と同じものが浮かび上がり、それが反回転するとカチャリと鍵が外れた音がした。
アゲハは取っ手を握り、開けてみる。
「広い……」
どこのVIPルームかと思われるほどに広い。おそらく一人部屋だが、正直こんなに広いと息が詰まる。
キングサイズの天蓋つきベッドに、また豪勢なシャンデリア、高級感あふれる食器棚にテーブルに椅子。本棚もあるのだが、なぜかすでに本が置いてある。
ひとまず、ベッドにダイブ。宿のような硬い木の板ではなく、ちゃんともふもふとした布団。
ひとしきり楽しんだアゲハは、荷物の整理にかかる。教科書はどうすればいいかと困ったが、本棚にある本がそれだった。
適当なところに刀とローブを置くところを創り、リリィに選んでもらった服をたたんで洋服棚へ。
することがなくなったアゲハは、再びベッドに転ぶ。やはり、人間になって初日でいろいろなことが起こりすぎたからか、気がつかぬままに眠りに就いた。
~キラside~
予感が現実となった。
「いくら方向音痴だからって、なんで校門に着くの……?」
「神様に見捨てられましたわ……」
キラの言うとおり、二人ともミーナを助けた校門の近くにいる。
今度はキラが地図を読んでいたのだが、リリィのときは逆に持っていたが、九十度回転させて持ってしまっていた。
仕方なく、ため息をついて再び挑戦する。
「うわっ。これ、ほんとに学園?」
「途方もなく広いな……」
「ふふん、すごいでしょ。なんたって、世界一の学園といってもいいほどなんだから」
二人が校内に踏み出すと、誰か三人の会話が聞こえてきた。
「それでそれで……あっ、あなたたちは……!」
自慢そうに話していた女の子が、歩いていくキラたちに気が付き、声をかけてきた。
二人には、その女の子に見覚えがあった。なぜなら、その子は――
「あなたは……もしかしてミーナさん?」
ミノタウロスに襲われそうになり、いつの間にか校長室から消えていたミーナであった。
一方で、わけがわからない顔をしているのは、ミーナの後ろに控えている少年と少女。
「はい! ミーナ・ミシェランといいます。ほんっとーに、助けてくれてありがとうございました!」
「えっと、言ったと思うけど、大したことじゃないから」
「ですけど、私は実際に命を助けられたんです。感謝してもしきれないぐらいです。……えっと、お名前を聞いても……?」
急に頭を下げ出したミーナにあわてながら、キラとリリィは何とか収めようと奮闘する。
だがその勢いは止まらず、矢継ぎ早に言葉を紡いでいたのだが、名前がわからないのか聞いてきた。
「ああ、言ってなかったけ。僕はキラ。で、こっちがリリィ」
「えっと、キラさん。なんでここにいるんですか?」
「ん? ああ、あの話聞いてなかったんだ……。実は僕たち、この学園の教師をすることになってね。……で、その、教師寮に行こうとしたらここについて……」
教師になるというところで驚くというかうれしそうなというか、そんな入り混じった表情になっていたミーナは、迷子で校門についたというくだりであきれていた。
「どこをどうしたらここにつくんですか……。ま、いいです。そういうことなら私が付いていきます」
「ですけど、いいのですの? そこのお二人を放っておいて……」
リリィは完全にミーナに忘れられている二人に気付く。あっ、という顔をしたミーナは、そこで考え始め、
「あの、じゃあこの二人を学生寮に案内してからでいいですか? 教師寮もそんなに遠くはないですし」
その案に賛成したキラとリリィは、お互い自己紹介をしながら学生寮へ向かった。
この少年をどこかで見たことがある。キラとリリィがそう思ったのは当然で、その少年は宿で読んだ情報誌に載っている勇者その人だったのだ。
名をレインといい、勇者だということは言っていなかったが、キラとリリィは確信している。
なぜかといえば、内包する魔力量が半端ない。一般人が生涯かけても手に入らないほどの魔力を持っているからだ。
そしてその隣にいる少女。勇者には必ず“巫女”という従者が付いているが、おそらくその存在。その少女、エミリアもレインには劣るが同じように魔力が多い。
そんな大物二人に、キラとリリィは内心楽しく思っていた。キラとリリィは、この二人の少年少女を抜いている。実力も、おそらく経験も。そんな二人だから、この二人がどこまで自分たちに追いつけるのか、楽しみなのだ。
ミーナが興奮気味に、キラとアゲハがミノタウロスを倒す様子を話していたが、レインとエミリアの顔が一瞬怪訝そうな顔をしたのを、キラとリリィは見逃さなかった。
キラは、意外といたずら好きで、学生寮で二人と別れる時、「じゃあね、勇者さん」と不敵な笑みとともに言った。
教師寮についてから、二人が礼を言った後、ミーナは寮を去って行った。
夫婦ということで校長が気を利かしたのか、同じ部屋だったので二人とも抱き合って喜んだ。
そうして、今までの長旅で疲れた二人は、仲良くベッドで寝たのであった。
~レインside~
「じゃあね。勇者さん」
キラ・フォルステインと名乗った、見た目漆黒の青年は、不敵な笑みを載せながらレインに言い放った。
そこで、レインもエミリアも、背筋が凍りそうな思いをした。
なぜなら、自分たちは勇者であることをミーナ意外には明かしていないわけで、それが情報誌に載っていたとしても、魔力を極限にまで抑えているのだから、気付いたとしても只の空似だと勘違いするだろうと思っていたから。
その青年も、ただの空似で済ますのかと思うと、断言してきたのだ。
「あの人、何者なんだ?」
「わかんない……でも、ただものじゃないと思う」
同時に二人は思い知らされた。自分たちでは、キラという青年を超えることはできない、と。
それほどに、静かな威圧感。それほどに、圧倒的な存在。
敗北感にも似たそれが、津波のように二人に襲いかかってきた。
「とりあえず、部屋に入ろうか」
「あの人のことはあとにして、隣にあいさつぐらいするか」
レインの部屋番号は2S-40。その右隣がエミリアで2S-41。左隣はまだだれか知らなく、あいさつぐらいしようかと思い、部屋を出る。
エミリアも同じことを考えていたのか、隣の部屋にノックを仕掛けるところだった。
「レインもあいさつに?」
「ああ。エミリアもだろ」
軽く言葉を交わした後、改めてエミリアはノックする。
「ん」
中から出てきたのは、長い赤髪を所々跳ね飛ばした、十三歳ぐらいの少女。
二人は、あまりにもその外見が子供すぎるため、魔力探知で部屋の中に誰かいないか探ってしまう。が、わかったのはこの少女一人だけがこの部屋の住人ということ。
つまり――――――
「え、えっと、君が、この部屋の人?」
「そう」
エミリアが、子供に問いかけるようにしてかがんで聞く。すると、感情のこもっていない瞳とともに、そっけない返事が返ってきた。
「そ、そっか。私は、この階の端っこの部屋のエミリアっていうの。編入して、そんなにこの学園について詳しくはないから――」
「私も、編入生」
意外なこと第二弾。教えてくれたらうれしいな、と続けるつもりだったのだろう、エミリアは口あんぐりしている。
「あなたも?」
エミリアから視線を外し、今度はレインの元へ突き刺さる。外見に似合わない瞳の光に、若干怯えつつも答える。
「あ、ああ。おれはこの隣の部屋のレイン、っていうんだ。よろしくな」
「そ。……私は、アゲハ」
意外にも普通な回答に安どするレイン。が、
「あなた、勇者?」
二度あることは三度ある。
見た目年端もいかない少女に、一瞬にしてばれたことに動揺するが、すぐに気持ちを切り替え、
「なんでわかったんだ?」
鋭い眼光とともに、ドスの利いた声で問う。
「別に。雑誌で見た。それと、魔力の量」
その表情を一切動かさずに、またも普通に返してくる。
そこで、一気にレインは気が抜けてしまう。まさか、魔王の手下が擬人化して探りに来たのかと思ったのだが、そうではないらしい。
「おれの抑え方、弱いのか?」
「それはない。私が特別敏感なだけ」
落ち込んでいたところに、なぜかアゲハのフォローが入る。が、単純なレインはそうかと安心してしまう。エミリアは、そんなレインを見てため息。
「入る?」
まさかの誘い。二人はてっきりあいさつしたら締め出されるのかと思ったのだ。
「いいのか?」
「別に」
どっちだよ、などと思いながら、レインとエミリアはありがたく御呼ばれされた。
今日来たばかりなのか、アゲハの部屋は整理整頓してきれいだったものの、生活感というものがなかった。
「なあ。キラってやつ、知ってるか?」
気を利かしてくれたのか、アゲハは備え付けの台所で三人分の紅茶を作ってくれた。
キラ、という単語を聞いた瞬間、アゲハの耳がピクリと動いたことから、知っているなと二人は確信した。
「キラが、どうした?」
予想通り。次にエミリアが聞いてみる。
「キラって、何者?」
いつでも率直なエミリアに苦笑しながらも、アゲハの言葉を待つ。
考えているのか、少し黙った後、
「絶対に誰も勝てない、最強の人」
これで何回目か、アゲハの発言に驚かされるのは。
だが、アゲハの態度からして冗談で言ったものではないとわかる。
「なんで、そう言い切れるんだ?」
確かに、レインもエミリアもキラが強いというのは分かっている。移動中でも誰にも見せない隙、にこやかに笑っていてもその瞳の奥に移る冷静な光。たとえ数分という短い時間でさえ、それだけの“強さ”を見せたのだ。
あれで、弱いというのがどうかしている。
「ミノタウロス、倒した」
それは聞いた。ミーナが興奮気味に、尾びれも背びれも付けながら語っていた。いまさらだが、とどめを刺した『アゲハ』が、目の前にいるアゲハだと気がついたのだが。
「それはミーナから聞いたから知っている。だけど、キラじゃなくてアゲハが倒したんだろ?」
だからこその質問だが、アゲハはふるふると首を振る。
「私は、魔力を馬鹿みたいにつぎ込んで、火柱に変えただけ。でもキラは違う。相手を上回るスピードを出すには、三手も四手も先を読まなきゃいけない。だけど、それは人間相手の話。魔獣を相手にするのはわけが違う。魔法を自分の技として取り込んだ魔獣は、詠唱なしでも魔法と同等か、それ以上の威力で放ってくる。ミノタウロスは、再生能力だけだけど、でもそれがあるから、防御を気にせずに全力で攻撃できる。ここまでは分かる?」
えらく長いセリフを間違えずにいえるアゲハに感心する。
でもレインは思う。アゲハだって十分にすごいのに、と。だが、ここで話の腰を折るのは失礼なので、黙ってうなずく。
「だから、ミノタウロスは危険。無理な体勢で攻撃しても、痛みを消すことができるから。それに、身体能力が優れているミノタウロスは、どんなに速い攻撃でも一応の対応はとることはできる。でも、それをキラは余裕で上回った。それが、どれだけ至難なことか、わかる?」
話は終わり、とでも言わんばかりに、テーブルに置いてある紅茶を飲み始める。
その話を聞いた二人は、しばらく放心状態に陥っていた。
しばらくして部屋に戻った二人は、とんでもない人に目を付けられたのかも、と後悔したのであった。
なんか、一気に登場人物が増えたので、また番外編で伝えたいと思います。次話かどうかはわかりませんけど。
校長の名前、出すの難しいです。
そんなわけで、これからもよろしくお願いします




