第二話 キラとアイフィッシュ
ども。コウです。今回は、少し笑いを取ろうと思って書いてみました。コメディーというものを初めて書いた気がするので、いまいち自信がありません。なので、一言でもいいですから感想を送ってくれたらうれしいです。これからの参考にしますので。
では、本編を楽しんでいってください。
キラとリリィの二人は、世界中を旅した後、中心都市グランバールにすむということにしていた。
旅が終わった今、情報屋から買い取った情報をもとに、『千年樹』がある森の古代遺跡に来て、アゲハに出会ったということなのだ。
そして現在。目的地であるグランバールは、森からそう遠くはなく、三人は目と鼻の先というところまで来ていた。
「やっぱドラゴン。そこらの使えない傭兵とはわけが違うね」
近いとは言っても、出る物は出る。キラとリリィは、今後一緒に暮らすにあたって、アゲハの実力をみるために魔獣の排除を任せていた。
アゲハが使うのは、もっぱら炎属性の魔法。ただ、初級にしても何にしても、威力が半端ない。後ろを振り返れば、焼け野原が所々で来ている。
「まあ、ドラゴンですからね。……炎というところが少しイラッときますけど」
「これくらい、当たり前。大人になると、もっとすごい」
リリィは自分の得意属性のためか、嫉妬しているようで、アゲハもアゲハで、何か満足がいかないようだ。
「聞くのは失礼に値するかもしれないけど……君はいくつなの?」
「今年で十六」
あまり男性には触れたことがないのか、リリィを挟んで答えるアゲハ。
聞くところによると、妖精族で長寿で有名なエルフと同じように、ドラゴン族の擬人化した姿は、人間の体の発達よりも幾分遅く、そしてそれだけにとどまらず、身体年齢が二十歳ほどになると成長しなくなり、実質不老になるらしい。
「あと百年は、この姿」
一人の女性としてか、そのことを不満げに伝えてくる。その時二人は、苦笑いしかできなかった。
中心都市グランバール。冒険者ギルド総本部、世界最高峰の学園『ヴァール国立学園』がある場所。それとともに、商業などで金稼ぎをするには最も効率よくできる場所でもある。
そんなことから、人口は世界第一位。種族間の諍いや差別もなく、平和な町である。
「気に食いませんわね」
宿を訪ねて二・三軒。旅人が最もよる場所であるこの街にしては、意外にも早く宿が取れた。
三人は昼時ということもあって、一階にある酒場で食事をとっていたのだが、最近流行り始めた情報誌を読みながらのリリィの一言。
口が悪いのかいいのか、それは置いて。リリィが目にとめているのはひとつの記事。
「ん~、なになに? 『勇者降臨』?」
一面の記事に、大々的に乗せられている見出しと写真(魔法によって開発された映像記録機で取られたもの)。
世間的に見れば、魔族や魔獣を率いる魔王を倒す存在である勇者は、まさに神の使いともいうべき存在である。しかし、リリィにとって、自分の夫であるキラを差し置いて強いだ何だと呼ばれる勇者は、まさに邪魔者でしかないのだ。
「でも仕方無いんじゃないかな? やっぱ、勇者ってのは強くあらなきゃならないものだし。それに、一般市民の希望の象徴としてはちょうどいいんじゃない?」
「でも……やはりむかつきますわ。世界で最強なのはキラだというのに」
乱暴に果実酒をあおりながら、リリィは不平不満を次々と連発する。
「勇者って、つよい?」
アゲハはいつの間になついたのか、キラの膝の上でちびちびとノンアルコールの果汁を飲みながら聞いてくる。
そんな小動物を彷彿させるような行動に、キラはなごみ、アゲハの頭をなでながら答える。
「ま、強いだろうね」
「わからない?」
「そんなにホイホイ出るものじゃないさ。良くて百年に一度現れるだけ。どれくらい強いかなんて、そばにいる人しかわからないんだよ」
「そんなもの?」
「そんなもの」
ふぅん、とつぶやくと、アゲハは食事を再開した。
リリィはすでに雑誌のページをめくり、違うところを読んでいる。惚れた弱みか、プンスカと怒っているようなその顔もかわいくて仕方がなかった。
「というか、魔王なんて本当に復活したんですの? 地域に影響らしきものはないようですし」
魔王は、代々勇者によって滅ぼされている。が、実際には封印しただけで、そのことを知られたくない世界政府は、国民には完全に打ち滅ぼした、と伝えているのだ。幸か不幸か、国民内に混乱が起きなかったが。
しかし、封印は一時の間だけで、力がなくなるわけではなく、反対に封印された影響により何らかの力を得て復活する。だからキラとリリィは思う。それが魔王がいつも違うものだと認識されている原因だが、一方ではそれが積み重なっていけば、いずれは人間には手に負えないほど強大なものになるのではないか、と。
「勇者がいるからそうなんじゃないの? どうでもいいけど」
事なかれ主義であるキラは、面倒事には一切かかわりたくないタイプだ。関わったら関わったで退屈しないと思う、変人だが。
「……いやな予感がしますわね」
不幸に対する嗅覚というか、それに似たようなものがリリィにある。しかも百発百中。いらないが。
だから回避できるかといえば、そうではなくて、逃げ道がすでに無くなった時に発動するのだ。厄介なことに。
「ま、当たって砕けろ、だよ」
「キラ、砕ける?」
「いや砕けないから」
目ん玉(アイフィッシュという魚の一種)を突き刺して、アゲハはキラをかわいそうな目で見る。視線が痛いキラは即座に否定。
「これ、いらない」
「いや、僕もそれ苦手だから……」
それ(アイフィッシュ)を、ん、と差し出してくるアゲハ。キラとしても、魚が嫌いというわけではないが、アイフィッシュだけは好きになれなかった。
見た目、グロい。感触、ぐしょぐしょ。味、なし。栄養、たっぷり。明らかにメリットとデメリットの比率が偏りすぎている。 美食家にはこれが好評だというが、正直、頭が狂っているのではないかと疑ってしまうキラである。
「いや?」
「うっ……」
しかし、だ。泣き出しそうな表情で見られると、キラの良心が張り裂けそうなほど痛む。
そして思考すること数秒。男として覚悟を決めたキラは了承する。
「……あーん」
「あ、あーん?」
いつもリリィにされているが、相手が違うために疑問形で返してしまう。
もぐもぐと咀嚼し、渋い顔をしながら飲み込む。味はないくせに、噛んだときのにおいが独特だ。それも相まってか、本来味がしないはずのアイフィッシュが、妙な味に切り替わる。これが、キラが好きになれない理由だ。
「むむ……アゲハだけずるいですわ。私も! はいキラ、あーん」
それを見て嫉妬したリリィは、声を弾ませながらアゲハと同じようにフォークを突き出してくる。
だがキラは思う。
(なんでまたアイフィッシュなのさ!)
第二号。リリィはキラのことなら熟知しているはずだが、いかんせん負けん気が強いため、周りが見えていない。この性格がどれだけキラを困らせたことか。
しかしそこはキラ。かわいい妻の、可愛いミスだと思い、目をつむって食べる。
そこでキラの不幸性質発動。アゲハはキラに好意をもったのか、また例のアレをしてくる。それを見たリリィが、同じようにする。
無限ループの要領でずっとそれが続いた。不幸なのは、それがすべてアイフィッシュだということだった。
結果、無理して嫌いなものを食べたキラは、宿のベッドで唸りながら寝込む羽目になった。
「うわあああああああああああああ!!」
アイフィッシュの食べすぎで気分が悪くなり、さらには何か変なものにあたってしまったのか腹痛、さらにさらに、それが原因となり熱を出して寝ていたキラ。
不幸中の幸い|(不幸が多いような気もするが)か、キラの回復力はすこぶるもので一時間もうなれば治っていた。
そして、今の素っ頓狂な叫び声。ものすごくでかいアイフィッシュに求愛された夢を見たためだ。
「キラぁ! やっと起きましたのね! すっごく心配してましたのよ!」
まるで重症患者に付き添う妻のようにキラの手を握っていたリリィだが、キラの悲鳴を気にもせずガバッと抱きつく。そしてキラの胸に、涙を目じりにためながらすりすりと頬ずりをする。アゲハも同じようなもので、胸が腕に変わっただけだ。
だがリリィたちは知らない。自分がその原因を作った張本人であることを。
「ぐしゅっ、えぐっ……」
「大丈夫だから、ほら泣かないの」
相変わらず大げさなリリィに苦笑いしながらも、心配してくれたことをうれしく思いながら頭をなでるキラ。この時点で本人の中から、リリィとアゲハにアイフィッシュを食べさせられたという事実は消え去っている。
そしてなだめること数分。アゲハも泣きそうになっていたため、今なでながら落ち着かせている。
「で、不動産屋に行くんだよね?」
「ぐすっ……はい、そうですわ。先ほど、アゲハと話し合いましたの」
キラが気絶している間、リリィとアゲハは今後どうするか、重い雰囲気の中話し合ったそうで、不動産屋に行った後、アゲハ専用の武器を買いに行くということになったらしい。
「はいはい、いくよ」
いまだにぐずぐず引きずっている二人の手を引いて、キラは宿を出た。
なんとなく、大きな子供を持ったお母さんの気持がわかったキラであった。
次話ぐらいに登場人物の紹介をしたいと思います。
では、今後とも、よろしくお願いします。




