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第十八話 再会と災難

ども、コウです。

早くも最新話……でもないか……

まあとにかく、意外に早く更新できたので嬉しいのですよ。

ってことで、今回も楽しんでください。



 完全に気絶してしまったキラとヴィーラが起きるのを待つ一行。このまま帰って看病してもいいのだが、この公園はいい風が吹いて気持ちがいいし、何よりキラにちゃんとアランたちと再会させたいためでもあった。


「では、ルーファンはヴァンたちのもとで修業をしている、と?」


 世間話をすることもなく、リリィは本人の目の前でオーフェンの話をしていた。


「ああ。ド馬鹿の貴族にしちゃあ、いい根性なんだぜ?」


「才能の欠片どころか塵も見えませんが」


 オーフェンにグサグサ突き刺さる言葉で。主にセレナが。



「おい! いい加減にしてくれ! これ以上俺に恥をかかせないでくれ!」



 ついに我慢の限界が来たのか、プルプル震えていたオーフェンが怒鳴る。

 少し行きすぎたにしても、オーフェンが結婚したい! といった相手なのだ。オーフェンにしてはこれ以上のダメ押しは嫌だった。


「これぐらいで恥だと思うのですか? ルーファン家の者は」


「あ、あたりまえっ……です」


 勢いに任せて怒鳴り飛ばそうとしたオーフェンだが、相手がリリィだということで最後は何とか抑える。


 貴族でなくとも、この罵倒の数々を前にして恥以外の何物ではないのだが――


「なら、強くなればいいことです。誰も文句が言えないぐらいに」


「そんな簡単なことじゃないです」


「けどキラはそうしましたわよ? わたくしから見ても、ひどい才能のなさでしたのに」


 そんな頑張っているキラに惚れたのですけど、とキラを慈愛に満ちた目で見つめるリリィ。

 それは、誰がどう見ても、美しいものであった。



「毎日毎日無茶ばかりして……それでぼろぼろになるっていくのがどんなに苦しかったか……」


「あの時のリリィ様は、今よりひどいツンデレでした」


「う、うるさいですわよ、セレナ! わたくしは何も、ぼろぼろになりながらもがんばってるキラがかっこいい! だとかときめいただとか……ともかくそんなことはありませんでした!」


 せっかく感傷的になっているところを、セレナが水をさす。

 そこでツンデレという言葉に反応したリリィは、あわてて何かを弁解するものの墓穴を掘る。

 はっ、とリリィが気付いた時には遅く、セレナは無表情を崩してにやりと笑う。


「久々のリリィ様のツンデレ……」


 すりすりと両手を合わせて拝むセレナ。あろうことか、ヴァンとアランまでも拝んでいる。ルルテアは何をどうしたらいいのかがわからないのか、おろおろしている。


「お、拝むんじゃありません! ルルも! そんなこと真似するんじゃありません!」


 気付けば、ルルテアも見よう見まねですりすりと拝んでいた。



 そうして騒いでいるうちに、リリィの膝の上でキラが身じろいだ。

 リリィが急いで視線を合わせると、瞼が震え瞳が少しずつあらわになっていく。


「ん……リリィ」


「キラ! 大丈夫ですか? お怪我はっ」


 キラが起きたことにより、リリィはセレナ達のことをほっといて声をかける。

 が、




「――――大元帥?」




「――へっ?」


 大元帥、という他人行儀な言い方に一瞬呆け、


「ま、まさか、記憶が……?」


 頭を打ったことによる記憶喪失かと絶望する。……打ったのは額だが。

 ともかく、声が出ず、目に涙がたまり始めた時、




「うわああぁぁぁぁ!!」




 今度はヴィーラが悲鳴を上げた。

 びっくりして顔を向ければ、わたわたしているヴィーラの姿が。

 そして、先ほどの考えは――――



「なんでっ!?」



「おい、どうしたヴィーラ! てめえ、ついにイカれたかっ――前からわかってたことだが!」



 ――――思わぬ方向へと



「ヴァン! 誰がイカれているんですか!!」



「おい、坊主。どうした、そんなに怒って」





「なんで、ヴィーラの体になってるんだよぉぉ!!」





 ――――方向転換したのであった。







 結論からいえば、額を思いっきりぶつけてしまったために、体はそのまま、精神が入れ替わってしまったのだ。

 原因は、両者の魔力の波動共鳴。

 二人は、雷属性の波動を持っている。それが、とても似通っているのだ。

 似た波動は、本当にごくわずかな確率で、同調することがある。

 おそらく、額と額の間で雷の波動がつながり、そこで精神交換が行われたのだろう。


 一同はそれで納得し、それよりもどうやってまた精神交換を行うかであった。



 現在は、こそこそと移動した一行が新たにとった宿の大きな部屋で話し合っている。

 そして、キラの精神が入ったヴィーラがリリィの膝の上に。

 キラであるヴィーラは、体を確かめるように動かしている。


「まあ、今は難しいことを考えないでおきましょう。……キラ、体に違和感は?」


 そういったリリィが、ヴィーラに話しかけることに違和感を感じつつ聞いてみる。


「別に何も違和感はないけど……」


 ぺたぺたとヴィーラの体に触りながら、やはり現実なんだと落ち込んでいるキラ。

 困っているキラは、それはそれはそそるものがあるのだが、エルフの耳がたれているこの姿も、可愛いもの好きのリリィにとってたまらないものであった。


 そして、


「キラっ!」


 座っているキラ(ヴィーラ)の体を、むぎゅぅと抱きしめる。そうして今度は、すりすりと頬ずりする。


「わっ、わっ、わっ」


 手を出すわけにもいかないキラは、なすがままにされる。リリィの柔らかさに若干ニヤケているのはご愛嬌だ。

 人形のようにしばらく扱っていたリリィの目に、ヴィーラ(キラ)が入る。


「うわー、男の人の体って筋肉質ですねえ。キラ様だからでしょうか……あれ?」


 そして、とんでもないことをしでかす。



「これは……まさか……キラ様の……」



 みょーん、とズボンを引っ張ったヴィーラは、どんどんと顔を赤くしていく。


「ポ――――」


「なにをしてるんですの!」


 いち早く異変に気付いたリリィが、魔力で固めた球を投げ、ヴィーラの口をふさぐ。

 だがいつにもまして少し発狂したヴィーラは、魔球をペッと吐きだし新事実を見出す。


「まさかこれは――キラ様と私の融合!?」


 これまたとんでもないことを言い出したヴィーラにキラを下したリリィが一瞬でその背後へ移動し、手刀で気絶させる。


「まったく……馬鹿なことを考えるのですから」


 ベッドにキラの体を横たわらせ、起きても暴れないようにセレナとルルテアが二重に拘束の魔法でしばりつけた。 



「んで、どうすんつもりなんだ?」


 キラ(ヴィーラの体)を抱きしめて座っているリリィ、セレナ、ルルテア、アラン、ヴァン、そしてオーフェンで、大きな丸机を囲んで座っていた。


「どうするも何も、安静にしておくしかないだろう。誰か知り合いにでもあったら、不味いぞ。特にヴィーラが入っているキラのほうはな」


 腕を組んでいるアランが、眠っているキラの体(ヴィーラ)に目を向けながら言う。


「そうですわね……ひとまず、ヴィーラが目覚めると厄介ですからあのままにしておくのが最善なのですが……」


「……ちょうどここに、強烈な睡眠薬が」


 セレナがいつものメイド服から、うすい青色の液体が入った小瓶を取り出した。


「聞きますけど、その用途は?」

「キラ様に盛……寝れないときのためです」

「つまりはキラを襲おうと?」


 セレナは実に嘘をつくのが下手だ。真実の半分を口に出してしまうから、書く仕事など全くできないのだ。

 リリィの厳しい視線を振り払うように、眠っているヴィーラに小瓶を突っ込んで飲ませる。


「まあ、これでキラの体の確保はできたわけですけど……問題は、どうやって元に戻すかですわね」


 うーん。みんな目をつむり、唸る。



「……あ」



 ルルテアが、何か思い出したようにつぶやいた。


「どうしましたの?」


「えっと、エマ元帥なら、どうにかなるかな、って」




「あっ……」




 全員、思い当たる節があり、出した声が揃う。


 エマ・ミナフ元帥。知る人ぞ知る、天才魔術学者である。

 女性の永遠の悩みである肌の問題の解決、今まで難色を示していた古代魔法の解析、ホログラムの作成など、世界に認められ、なおかつ役立っている技術や知識を生み出した人物なのだ。

 魔術に関しても超一流で、属性と属性を掛け合わせて作る複合魔法など、自己流の魔法で攻撃するのがエマだ。


「確かに、エマならどうにかしてくれるかもしれませんね。……問題は――」


「見返り、だよなあ……めんでえ」


 ヴァンが言ううとおり、エマに何かを頼もうとすると代償を求めてくる。

 それが金や物など、わかりやすいものならまだいい。準備すればいいだけのことだからだ。

 だが、エマが求めるのは、研究材料。それは、そこらへんの雑草から世界一深い海溝に咲いているという幻の花まで。しかも、それがエマの気分で決まるものだから、たまったものではない。


「それについてはわたくしが何とかしましょう」


 リリィもそれについては頭が痛いようで、眉間のしわをもむ。


「なら、私が行ってきます。何かあったら風で連絡を取れますし」


 セレナは言い終わると、確実に転移をするために転移魔法の詠唱をし始める。

 そうして、シュンと風が薙ぎ、セレナはいなくなっていた。


「ではお嬢。私たちも分かれて何か文献でも探したほうがいいのでは?」

「そうですわね……では、わたくしとキラ、アランとルル、ヴァンとオーフェンと三組に分かれて行動しましょう」



 それぞれの行動が決まったことで、宿を出て解散した。



 ~アラン&ルル~


「なんか、大変なことになっちゃったね」


「まったくだ……だいたい、ヴィーラがあんなことにならなければ……」


 あんなこと――つまりは発狂のことだ。

 これについては、ルルテアとしても苦笑をせざる得ない。

 と、ルルテアはここであることに気付く。


「そーいえば、ヴィーラ元帥っていつからあーなっちゃったんだっけ?」

「確か……坊主とリリィがくっつきそうになった時だったと思う」

「……あー、そうかも。それで、キラさんとリリィ様は邪魔されて、結局くっついたのが一か月後だったよね」


 ルルテアはあごに人差し指を当てて思い出す。


 ヴィーラは、キラと出会うまではあんな性格はしていなかった。

 騎士団一、任務に対して最も冷静であり冷酷であった。必要のないものはばっさりと捨て、ただ任務を完遂するために動く人間――いやエルフだ。


 しかし、キラの修行も兼ねて行った任務でヴィーラの変化は訪れる。


 必要のないもの――つまりは邪魔な人間を排除しようとしたのだが、キラがそれをよしとはせず、ヴィーラと対立してしまったのだ。

 戦い、結果キラの惨敗。だが、ヴィーラの心はそれによって揺れ動き、少しずつ任務に対する考えも、性格も変わっていったのだ。


 そうして、キラとリリィの告白場面を見ることになったのだが、そこで問題が起こった。

 今のように尊敬とはいかないまでも、胸の内にはキラが好きだという思いがたまりにたまっていた。


 そこで爆発し、皆にとって初めての『ヴィーラ狂人化』を見たのだ。


「まったく……お嬢もお嬢だ。坊主のどこがそんなに――」

「言っとくけど、私はキラさんのことを諦めてないから」


 父親が坊主というのは慣れていたからいいことなのだが、ルルテアとしてはいくら父でもキラを侮辱するのは許せないのである。


「今度キラさんの悪く言ったら……口きかないから」



「…………許してくれぇぇぇぇ!」



 アランは親ばかだ。親ばかランキングなるものがあれば、ほかの親ばかに大差をつけて一位になること間違いなし。

 いきなりダンディーな男が泣いて少女に謝る姿に、行き交う人々は何か異様なものを感じたらしく、決して近づこうとはしない。



「恥ずかしいから泣かないで!」



「…………ぐすっ」



 しまいにはマジ泣きしてしまうアランであった。




 ~ヴァン&オーフェン~


「じゃ、俺たちは魔道具店にでも行くか」


「なんでだよ? 普通は王立図書館だとかだろ?」


「わかってねえなあ……あんなとこ探してたら埒あかねえだろ。んなことより、魔力の同調に関する魔道具を片っ端から集めんだよ」


「はあ!? 片っ端からって……どんだけ金かかると思ってんだ!」


「いいだろーが、全部お前持ちだし」


「なおさらだよ!」


「けちけちすんな。貴族だろ?」


「げ・ん・ど・を! 考えろ!」


「あーうるせえうるせえうるせえ! さっさいくぞ、ド馬鹿」


「名前で呼べ!」



 こんな感じで、二人は多少喧嘩しながら、ヴァンが提案したとおりに魔道具店をあさりまくっている。

 だが――


「ちっ……同調のどの字もねえ……そっちはどうだ」


「こっちもない……」


 かちゃかちゃと陳列棚をあさっているのだが、一向にそれらしきものは見当たらない。

 かれこれ一時間弱探しているので、精神困ぱい状態だ。


 いったん休憩するために、近くの喫茶店に入る。


 水をウェイトレスからもらい、一気に飲み干す二人。

「ったくなあ……だいたい同調に関する道具なんてないっつーの」

「あんたが最初に言ったんだろうが」

「忘れたなあ」

 もう一度ウェイトレスを呼び、今度はサンドイッチを頼む。


「このままふけるか……」

「もうどうでもいい……」

 何かとわがままを言うヴァンに、諦めたように言うオーフェン。

 サボる気満々の二人(ヴァンだけだが)は、運ばれてきたサンドイッチを口に運ぶ。


 ふあ~、と欠伸するヴァンの目に、三人の学生と思われる少女が止まった。


「ありゃあ……リリィの嬢さんの言ってた、確か……そう、ヴァール学園の生徒じゃねえか?」

「んぐ……ホントだ。……かわいい子ばっかり」

 サンドイッチを食べているオーフェンは口の中に残ったそれを飲み込み、ヴァンの見ている先を見る。

 そこには赤い髪の小さな少女と、茶髪で赤眼の少女、濃い青色の髪の毛をした少女が座っていたのだが、そのどれもが可愛く思わずオーフェンは鼻の下を伸ばす。


「てめえはロリコンか……しかし、あの赤い髪の奴、妙な魔力を感じるが……」

 でへへ、と笑っているキモいオーフェンの、あいていた口を強制的に閉じさせる。

 舌を噛み、苦しむオーフェン。

「こっちの視線に気づ……っ!」

 一瞬。一瞬だけこちらを向いたのだが、とてつもないプレッシャーを感じ、吐きそうになる。


(なんだよ……あの威圧感)


 心臓を握られているような、今にも襲いかかられそうな、そんな感覚に支配される。


(この感じ……坊主を相手にした時のと似てんな……)


 瞼の裏にいるのは、自然体で二本の刀を持って対峙しているキラ。

 あのキラも、何か飲み込まれるような感覚に陥った。


「……出るぞ、オーフェン。って、何やってんだよ、お前」


 あの威圧感を持つ人間と離れたいために、席をたちオーフェンのほうを見るのだが、

ひ、ひた、ひたがぁ(し、した、したがぁ)

 口をあけて何やら痛がっている。

 まったく、とため息をついたヴァンはオーフェンの首根っこを持って、

「おら行くぞ」

 連れ出した。



 ――あいつは、何者なんだ?





「やっぱりサイコーだね、目ん玉ゼリー」

 目の前ではミーナがいつぞやのアイフィッシュの頭(目)あしらったゼリーを食べている。

 なるべくアゲハはそれを見ないように、自分が頼んだ焼きプリンをほおばっている。

「ミーナ……よく食べるね、それ」

 エミリアも極力見ないようにしながら、ミーナに言う。


 ここでアゲハは安心する。アイフィッシュはみんな苦手なんだ、と。


「でも、アイフィッシュの味じゃなくて、普通のゼリーだよ?」

 ミーナを除いて。

 いる? といって目のかけらが乗ったスプーンを差し出してくるが、首を横に振って対処する。


 と、誰か見ているような気がしたので、後ろを振り向く。

 キラかと思ったが違ったので、当てつけに殺気を送る。


「どうしたの? アゲハ」

「なんでもない」

 後ろを振り向いたのが見えたのか、エミリアが心配そうに尋ねてきた。


「じゃ、そろそろ帰ろっか」

「ん」

「じゃあ明後日に向けて頑張るぞぉ!」

 異様にテンションの高いミーナを見、アゲハは本選のことを考えるのであった。



 ~セレナ~


 セレナは転移で、一気にエマの部屋へと移動した。エマの部屋はそのまま研究室になっており、危険だということからほかの部屋よりも複雑なところにある。

 なので被害が出ないのだが、その代わり道がわからない。

 だから、エマの研究室に用があれば転移で移動というのが定番になっていた。


「エマ」


 薄暗い部屋の中、背を向けて机で手を動かしているエマに声をかける。

「ん? ああ、セレナ大元帥じゃないか。どした? ここに来るのは珍しい、いや、初めてじゃないか?」

 誰にでも気さくに。それがモットーであるらしく、彼女は誰にでもフレンドリーだ。ヴァンとはまた違った接し方である。


「いえ、あなたに頼みたいことがありまして」

「へえ……あなたが頼み事ねぇ……言ってみて」

 意外、といった表情を崩さず、セレナに用件を言うよう促す。

 話が早くて助かる、そう思いながらセレナは簡潔に、わかりやすく事の次第を話す。


「それはまた珍しいことだね。キラ君とヴィーラの波動の同調か……しかも激しく額をぶつけたことが原因……」

「はい。全員、この手のことには疎くて……あなたを頼ったのですが」

 たちあがったエマは、白衣に手を突っ込みうろうろとしている。が、やがてその動きは止まり、セレナのほうを向く。


「今研究しているのとちょっと似ているから、何とかなるかも」

「そうですか……どれくらいかかりますか?」

「そんなかからないよ。長くて三十分ってとこだね。それで、だけど……」

 キラン、とエマの目が金色に輝いたような気がする。


「見返り、ですね?」

「人聞き悪いなあ……報酬と言ってくれないか」

「では、報酬はなんですか?」

 言いなおし、再度聞くセレナ。

 ふふふ、とあやしく笑うエマ。


「それはだね……キラ君の血と、赤ちゃんの素だよ!」


 ぽかん、とするセレナ。ある意味珍しい表情だ。

「血、というのは分かりますが、赤ちゃんの素、というのは?」

「ふふ、大元帥の考えているものだと思うよ」

 しばらくしゃべらなかったセレナだが、ぽっと頬を赤らめ

「わかりました。いつまでですか?」


「んー……普通なら今すぐといいたいんだけど、大元帥相手だし、何より事態が事態だからなあ……。いつでもいいや」


「そうですか。ありがとうございます。……しかし、キラ様の血と……あれを使って」

「ふふ、意外にうぶなんだな。で、私の今の目的はだね、『キラ君子犬化計画』なんだよ」

 顔を赤らめながら聞いくセレナに、くすくすと笑いながらこたえるエマ。


「子犬化、ですか?」


「そ。キラ君を子どもに戻して、さらにはさらには、子犬の耳としっぽをはやして愛でようっていう計画なんだよ」


「キラ様が……子ども……しかも、子犬……」


 かなりの衝撃を受けたのか、セレナはうつむいてブツブツつぶやく。


「素敵な計画だろ?」


「はい。ぜひ成功させてください」

 みたいのか、強い口調になる。


「頑張るよ……ところで、あれは試してみたかい?」

「はい。効果は抜群のようです」

「うんうん。実験成功だね」


 あれ――セレナが先ほど使った強力な睡眠薬である。

 キラに会いに行く直前、渡されたのだ。この睡眠薬を飲ませてみてくれと。断る理由もなかったので、面白半分にもらったのだ。


「それじゃ、開発に集中するから、そこら辺に腰かけといてくれないかな」

「わかりました」


 座ったセレナは、リリィに『風のたより』を送るのであった。




 ~キラ&リリィ~


「見つかりませんわねぇ……」

 キラとリリィは、魔道書を専門的に扱っている本屋をしらみつぶしに探していた。

 だが、いくら探しても見つからず、二人は八方ふさがりであった。のだが、


「あら? セレナからのたよりです」


 耳に手を当てて、リリィは何かを聞きとる体勢になる。


「なんて?」

「えっと、元に戻る方法があるみたいですわ。良かったですわね!」


 嬉々として伝えるリリィに、ほっとするキラ。

「で、見返りはなんなの?」

「待ってくださいね」

 また耳に手を当てるリリィ。


「……えっ?」


 驚いた様子のリリィに何があったのかキラが聞いてみると、


「その……キラの血と………………赤ちゃんの素、ですわ……」


 赤くなりながらキラに告げるリリィ。それにグッときたキラなのだが、内容が内容なだけにそれには一切気がいかない。

「それって、絶対?」

「……おそらく。エマは、頑固ですから」

 エマは、一度言ったことはめったなことがないと変えない。


「ま、まあ、期限は定められてないようですから、ね?」


 意外にも積極的なリリィであった。



 それから、念話で全員を宿へ戻るよう伝えた。






 三十分もかからなかったように思える。

 全員が興味を示すのは、セレナが持っている白い玉と青い玉。飴玉のようだ。


「これを、どうすればいいんですの?」


「お二人が飲めばいいのです」


 みんな、詳しいことは聞こうとしない。エマの作るものは便利なのだが、説明させれば一時間に及ぶものばかりだ。

 はい、とセレナはキラに白い球を手渡す。


 見守られる中、キラは白い球を口に入れて、飲み込む。

 すると、ポンと空気の抜けた音がし、今度はキラ(ヴィーラ)の口から先ほどの白い玉が吐き出され、気絶する。



「き、キラ!?」



 さすがに驚いたリリィが、倒れたヴィーラの体をゆする。


「安心してください。ヴィーラの体にキラ様の意識がなくなっただけです」

「どういうことですの?」

「そこに落ちている白い玉に、キラ様の意識が詰め込まれているのです。これと同様に」


 セレナの手には、青い玉が。言いようからすると、その青い玉にはヴィーラの意識がはいているらしい。


「これを、どうすれば?」

「本来の体に飲ませばいいだけです。このように」


 するとセレナは、ヴィーラの顎を掴んで口を開けさせ、青い球を放り込む。

 と、ヴィーラの瞳に光が宿り、


「あぅ~……わたしは、どうなったです?」


 元のヴィーラに戻った。

 それを見たリリィは、眠っているキラの元へ行く。

 が、


「あ、それと。昏睡状態なので口移しで、ですよ」


 リリィが振り向けば、にやにやしたセレナ。ほかのメンバーもニヤニヤしている。――ルルテアは顔を真っ赤にし、ヴィーラは状況をつかめていない。




「~~~~~~っ!!」




 顔を真っ赤にさせて、怒鳴るが声に全然なっていないリリィ。


 結局、口移しで飲ませ、みんなにからかわれたリリィは腹立ち紛れにヴァンとオーフェンを問答無用で殴った。





 こうして、世にも珍しい事件は幕を閉じたのであった





ども。

今回は今までで一番長かったような気がします。なんせ、この事件を一話で完結させようとしたんですから。

庭で振り分けてもよかったんですけど、なんかとてもきりが悪くて。

ま、そんなこんなで次回は! 本選出場者がメインのダンスパーティーが開催されます! キラの暴食ぶりが見れるかも?


ってことで、次回からもよろしくお願いします。

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