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第十六話 武術大会予選二日目

 ども、コウです。

 頑張って書きました。はい。

 ほかに書くことないので終了です。

 では、楽しんでいってください


――武術大会二日目


 この日は十時から一試合目が開始され、昼から二試合といった形だ。


 現在、九時三十分。キラはアゲハを抱えたリリィとともに、教師専用観覧席で試合が始まるのを待っていた。


「今日は確か、ミーナとエミリアが出るんだったよね? いつだっけ?」


「ミーナが二試合目で、エミリアが三試合目ですわね。一試合目には知り合いはいませんわね」


「暇」


 んじゃあ一試合目はトランプでもしようか、と試合そっちのけで遊戯を始めることにした。


 勝ったのは、ランベルク・ジョーカという銀の長髪男子生徒であった。獲物は、片手剣と盾。

 典型的な標準装備だ。



 一試合目が終わった後昼食ということで、キラとリリィとアゲハは昨日と同じようにリリィ作の愛妻弁当を口にしていた。


「うん、やっぱリリィの手料理が一番だねぇ」


「美味」


「ふふん。完璧なる私が作ったのですから当然ですわ」


 豊かな胸を張って答える者の、照れているのかその頬は紅い。


「ところでさ、リリィ……んぐ、さっきのランベルクっての、どう見る?」

 サンドイッチをほおばりながら、対戦表で丸をした『ランベルク』の文字を見ながら尋ねる。

「しょうじき、取るに足りませんわね。盾と剣のバランスがなっていませんし、それを補うほどの意外性もありません。あれでは本選一回戦敗退は確実ですわね。……あらあら、口元が汚れていますわよ」


 ざっくりと酷評をつけた後、キラの口元が汚れているのに気付き、持参していたタオルで拭う。リリィの母性本能が働いたのか、いつもとは違う姉のような笑みをしていた。


「でも、それにしたら、魔力がでかすぎ」


「ええ。アゲハがおっしゃったようにわたくしもそう感じましたけど、あれはジョーカー本人ではなく、盾と剣――特に剣のものですわね」


「だよねぇ……でもそうだとしたら、国宝級じゃないかな? ありゃもう魔剣だよ」


 ランベルクの持っている剣の魔力量は、明らかに異常であった。どうやら封印の術か何かで剣の魔力を隠し、抑えているようだが、魔力探知に優れている三人にはごまかしが効かない。


「そうだとしても、使い手があれでは、宝の持ち腐れというやつですわ。……もうすぐ第二試合ですわね」




 この試合ではエミリアが出ていた。

 今の闘技場の様子を一言で伝えるなら、混乱。

 今までの試合とは違い、魔法を得意とする選手が集まっていたので、そこらじゅう燃えていたり凍りついていたり水浸しになっていたり。所々でひどく地面が盛り上がっていたりしている。

 気を抜けば、足場に取られてやられそうだ。


 その中でエミリアは、ひときわ会場の中を荒らしていた。言葉通り、嵐の風で。


「――――風球(ストームボール)――――」


 目には目を、歯には歯を――魔法には魔法を。

 会場の真ん中に放たれた、風が渦巻く塊は破裂と同時に会場内にものすごい嵐を引き起こす。


 もちろん、魔法壁を張っているエミリアにはその突風は届かず、反射的に反応して障壁を張った生徒達も何人か残っている。

 当たり前のことだが、接近戦を得意としている生徒達はそのまま壁にぶつかり気絶した。


 風が収まり、それぞれ詠唱を始める。各々が得意の魔法を放とうとするところで、エミリアもそれに合わせ、


「――――風龍(ストームドラゴン)――――」


 巨大な火球も、とげとげの氷球も、土で造られたゴーレムも、すべてを嵐が飲み込み、消し去った。


 直接攻撃したわけではないが、エミリア以外は魔力が果てたのか、へたりと座り込んでいる。


『勝者、エミリア・ウェールズ!』




「はは。派手な戦い方するねぇ」

 キラは笑いながら、自分たちに被害が届かないように張っていた障壁を解く。

「まあ、魔法使い同士の戦いは大体が派手ですから」

「おもしろい」

 アゲハがつぶやいたように、見た目派手な戦いはかなり興奮する。

 炸裂する魔法。飛び交う魔法。そのどれもがあきさせないものだ。


「次はミーナだよね」

「ええ、そうですわね。ちょっと楽しみですわね、どんな戦いをするか」

 亜空間から出したおかきを三人でポリポリ食べながら、入場してきたミーナを見る。

 と、


「キラ様ー!」


 ぱたぱた、いや、バタバタと手を振ってきた。


「ぜぇぇぇったいに勝ちますから! 見ててください!」


 そんな強気発言に少し苦笑いしながら、キラは手を振り返す。

 そうしているうちに、試合の音が鳴った。



「勝って……勝ってキラ様に褒めてもらうんだから!」


 業火の炎を瞳に宿し、自らの獲物である長い杖を構える。




「――――氷の世界(アイスフィールド)――――!」




 いきなりの強烈な魔法。

 ミーナの杖の先からとんでもない冷気が漂い、空気の流れに従って地面に流れ落ちる。

 冷気が地面に振れると同時に、パキパキっ、と凍りついていく。

 それは徐々に、だが確実に、フィールド全体を氷で覆っていった。


 あちこちで、寒い! などの声が聞こえているが、気にしない。


「さあ、もう私の勝ちは決定だね!」


 よほどうまくいったのだろう、誇らしげに勝利宣言。

 だがそこで納得するはずもなく、


「あんただけが有利なわけ、ないじゃない!」


 ミーナの視界に、詠唱をし終えた女子生徒が水の波を放った。

 放たれた水の波は、冷気によって瞬時に氷の波となりミーナを襲う。


「無駄だよ」


 右手側から迫りくる氷の波を冷静に見つめ、右手をさっと振るう。

 と、地面から氷の壁が発生し、氷の波を飲み込み同化する。


 今度は、左からうぅおおおお! とばかりに槍をもって突進してくる男子生徒。

 ミーナは、今度は左手をさっと降り上げ、うすいガラスのような氷の壁を何枚も作り、突進を阻もうとする。

 が、それだけでは止まらず、ついに最後の壁を破ってミーナに向かって突進。


「もらったぁ!」


 誰もがミーナの負けだと思った。



「――――氷の分身(アイス・ボディ)――――」



 このぼそりとつぶやいた魔法を聞いていないから。


 男子生徒の槍がミーナの左腕に刺さった瞬間、そのミーナは音を立てて“割れる”。


「なっ……」



「詰めが甘いよ」



 後ろに現れたミーナの氷の爆破によって、男子生徒は吹き飛ばされた。


「ころ合いかな?」


 パチン、と指を鳴らすと氷の世界は音を立てて割れていく。

 もはやそこには、体をさすってがちがちと震える生徒しかいなかった。



『うぅ、さぶっ……しょ、勝者、ミーナ・ミシェラン……』



「……いつの間にあんな大技覚えたんだろ……」

 はじめと同じようにパタパタと手を振ってくるミーナに、手を振り返しながら疑問を口にするキラ。

「この三カ月の間でしょうね……しかし恐ろしい子ですわね。いくら氷の属性が水の属性の派生属性だからといって……三か月であのレベルまでなんて、到底無理ですわよ」

「ミーナ、恐ろしい子」


 ミーナのいきなりの大技には、さすがのキラとリリィも驚く。寒さなんてそっちのけだ。


「ま、無事二日目も終わったことだし、帰ろっか」


 驚きはするものの、黄金世代(ゴールデンエイジ)と呼ばれる世代なので、どれだけ化け物進化してもおかしくはない。

 かくゆう、キラとリリィもこの時期で一気に化け物じみた強さを得たのだ。


 来た時とは違い、キラがアゲハを抱えながらリリィとともに帰路へ着いた。





「ほらほら、どうした? てめえの力はそんなもんかよ」


「くそっ、なめるな!」


 闘技場の裏の森。そこで、オーフェンはヴァンに訓練(いじめ)を受けていた。

 オーフェンが手に握るのは、薙刀。長い木の棒の先端に、刃渡り五十センチほどの刃物が付いている。


 オーフェンは、無駄のない動きで突き、払い、時に柄を使って殴るのだが、そのどれもがかわされる。


「せぁあ!」


 両手で持った薙刀を、思いっきり下へと突き刺すように振り下ろす。だが、それもバックステップでよけられる。

 だが、それを予想していたかのように、刺さった薙刀の柄を持ってグルンと周り、タイムラグも生じさせずに追加攻撃である蹴りを放つ。


「いい攻撃だ……だが甘ぇ!」


 顔に迫りくる足を、腕で受け流す。と同時に、もう一方の手でオーフェンの腹を殴り吹き飛ばす。


「ぐぇ……!」


 カエルを踏みつぶしたようなうめき声がオーフェンの口から出、木にぶつかって止まる。


「だらしねえなあ。素手の俺に傷一つも付けられねえのかよ」


「で、でたらめなんだよ……あんたの強さは」


 情けねえ、と顔を右手で抑えるヴァンに、その理不尽な強さにいらついたオーフェンは反論する。


「いまいちルーファンは詰めが甘いですね。それと、切る瞬間にためらいがあります。相手は馬鹿な獣一匹なので戸惑うことはありません」


「……おい。俺はけものじゃねえ!」


「何を馬鹿なことを? あなたが生まれそうになるその瞬間から、もはや決定事項なのです。私に言われても困ります」


 二人の言いワイはいつの間にやら増大し、オーフェンなど眼中に入っていない。


 もっとも、オーフェンは疲れていてそれどこれでなくなっているが。



「キェエエエエエ!」



 奇声を発した何かが、言い争いをしているヴァンの元へと突っ込んでいく。


「おぉ!?」


 驚きながらもきちんと反応して、大剣――アロンダイトを亜空間から引き抜き未知の生物(?)の攻撃を受け止める。

 と、ここでヴァンはあることに気がついた。


「てめぇ、ヴィーラじゃねえか!」


 巨大な斧をこれでもかとばかりに押してくるのは、エルフ少女のヴィーラであった。

 その瞳は、爛々と輝きもはや正気を保っているとは思えないものであった。


「ヴィーラ! てめえ、また発狂したのか、えっ? つか、アランの旦那とルルがいたんじゃねえのか!」


 さすがのヴァンも、仲間を切り飛ばすことはできずにヴィーラと拮抗した状態を保つ。

 一方のセレナは、風圧で少し乱れた紫の髪を払い、亜空間から茶菓子を取り出してぽりぽり食べている。『ぽっぽ焼き』――キラが好きな甘いせんべいだ。


「こんの……ちびのくせに力はいっちょ前だな……」


 ただ拮抗“させている”のではなく拮抗“しかできない”のだ。ヴィーラはその姿のくせに力が強い。


「ふぅ……やっと追い付いた、ってヴァンさん!」


「む……ヴァンが止めていたのなら急ぐ必要はなかったようだな」


 ガサガサと草むらから現れたのは、あごひげを生やしたダンディーな男性のアラン。そして、その愛娘のルルテアだ。


「旦那ぁ! んでこんなことに!」


 理解者二人が現れたことでほっとしたヴァンは、いつものように軽口をたたく。


「ん? あぁ、なに、この三カ月会えそうで会えないキラの坊主のことをずっと考えていたらしくてな。それが爆発しての発狂だ。……久方ぶりだな、セレナ」


 言いながら、セレナに軽く手を挙げるアラン。


 なんというか、キラ依存症なのだ、ヴィーラは。リリィにも似たような節があるが、そこは己の精神力で耐えている。再開の時の反動蓮様じいものだが。

 だがリリィと違いヴィーラは、我慢が出来ない。我慢して我慢して我慢して、結局自分の中にため込んだ気持ちが爆発し、正気ではなくなり暴れまわるのだ。


「呑気にあいさつなんかしてないで、気絶させてくれねえか」


 仕方がないな、とでも言うように首を振り、瞬時にヴィーラの後ろに回り込んで手刀を入れて気絶させる。


「で?」


「は?」


 言葉が少なすぎるために、ヴァンにはアランの言いたいことが分からなかった。


「なんでルーファン家がいるんだ? 屋敷から飛び出したとは聞いたが」


 アランの茶の瞳が、オーフェンをとらえる。

 オーフェンは気圧されたかのように尻もちをつきながら後ずさる。


「もう、お父さん。いくら気に入らないからって、そんな睨むことないじゃない」


 短いツインテールを揺らしながら、アランの目の前に立って、めっ、とばかりに睨む。かわいくて怖くもなんともない。


 このようにしかることができるのは、実質ルルテアのみだ。それは、


「ぬ、ぬぅ……しかしだな……その、以前任務にも失敗したわけだし、それなりの態度をだな……」


 アランが極度の親ばかだから。


 『アランのことなら、ルルテアに』。騎士団内の格言だ。


「……わかった、わかったから睨まないでくれ」


「ならよし」


 なんといっても、ルルテアのほうが立場が上なのだ。なぜか。


「……ぉほん。だが本当になぜ貴様がいる? 家に帰ったと、話では聞いたのだが」


「それは私が答えましょう。簡単にいえば、釣りです」


 わざとらしく咳払いをしたアランが再度問いかけたが、腰をおもいっきし抜かしたオーフェンは口を利ける状態ではなく、代わりにセレナが答える。


「釣り?」


「ええ。私とヴァンが釣りをしているとちょうど疫病神……いえ、ルーファンがやってきて、あまりにも弱いということで、私が連れてきました。仮にも、大元帥なのですから」


 表情一つ変えず(疫病神のところでは情けないとばかりに眉をしかめていた)、淡々と報告するセレナ。

 その説明に納得したアランは、そうか、とだけいい再びオーフェンに目を向ける。


「で、強くなったのか?」


「そりゃ、元帥と大元帥がつきっきりでしごいてるからな。使えるレベルくらいにはなったところだ」


「へぇ……それはすごいね! 私なんてトンクス元帥について行くのがいっぱいいっぱいなのに」


 ヴァンとセレナのしごきが厳しいというのは、騎士団内で有名な話で、これについて来れた者はリリィとキラぐらいのものだ。

 トンクスは重火器の扱いが常軌を逸している元帥だ。魔法銃などを持たせれば、鬼神と化す。のだが、普段はボケっとした性格で、そんなに厳しくはないのだ。


 ちなみに、ルルテアはトンクスの補佐だ。つまりは、元帥補佐。


 本人も気づいてはいないのだが、その実力は元帥でも驚くほどのものだ。



「キ、キサマァ! ルルに褒められるとはなんとうらやま……馬鹿な事をしでかしてくれたのだぁ!」


「ひぃ!」


 オーフェンの胸ぐらをつかむアラン。『羨ましい』という言葉を掻き消そうと焦ったばかりに、意味のわからないことを喚き散らす。


 それでも大元帥の迫力か、オーフェンは気絶してしまった。


「あーららぁ……気絶してら」


「鍛え方がなっとらん証拠だ」


「……お父さん?」


「はっ!」


 眼力で気絶させたアランを、無敵のルルテアが制裁を加えたのだった。





「かんぱぁ~い!」


 キラとリリィとアゲハは、レイン組とレックスと合流し、近くの居酒屋で全員の本選出場祝いをしていた。


 キラとリリィは、夜ということもあってラム酒を飲んでおり、ほかは学生の身分のために果汁ジュースを飲んでいる。


「ま、無事全員が勝ってよかったよ。……て、ほとんど楽勝みたいだったけど」


「ホントですかっキラ様!? ホントに私が一番圧倒的でしたか!?」


「いや、そこまで言ってねえだろ」


「どっちかっていうと、レックスのほうがすごいと思ったんだけどなあ」


「んあ? あれは普通だろ」


「ふふ、これからはあれ以上の派手さがないと認めませんわよ、わたくしとキラが」


「キラ、ラム酒頂戴」


 わいわい、がやがや。周りからしてみれば騒がしいことこの上ないが、あいにくキラが押さえて貸し切り状態だ。


「やっぱ何と言っても、キラさんとリリィさんの戦いが見てみたいっすよ」


 おしゃべりのなかで、誰と誰の戦いが見たいかという話になり、レインが興奮したように答えた。


「二人とも戦ったところは見たことないけど、強いってのは分かるからな!」


「確かに……そういえば、キラさんとレックスって、どっちが強いの? 前戦ってたじゃない」


「おいおい、比べんなよ。キラさんのほうが何十倍も強いって」


 やはりこの二人は、未知の強さ同士ということも相まって、どちらが上か見てみたいようだ。


「キラ様が見てみたい戦いはなんですか?」


「僕は……リリィとアゲハかなあ。炎同士でどっちも強いし」


「あら。わたくしは負ける気ありませんわよ」


「負けない」


 戦いが始まるわけでもないというのに、火花を盛大に散らす二人。


「リリィは誰と誰のが見たいの?」


「わたくしですか? うーん……レインとエミリアですわね。勇者対巫女というのは、なかなか見ごたえがあると思いますから」


 ぱっとお互いを見あう、レインとエミリア。心なしか火花が。


「アゲハはどう思いますの?」


「エミリアとミーナ。面白そう」


「あはは……軽い理由なのね」


 おそらく、面白いというのは、観客席から見た魔法のことだろう。

 結局は、魔法のうち合いが見たいということだ。


「ミーナは?」


「わたし? うーん……今日一試合目で勝ったランベルクさんって人と、キラ様だね。キラ様がぼっこぼこにやっつけるとこをみたいです!」


 もはやミーナは、妄想の世界に旅立ってキラを応援しているようだ。

 『そこで顔を!』などと言っている。


「お前はどうなんだ? レックス」


「俺か? やっぱ、キラさんとリリィさんだな。二人の真剣勝負見てみたいから」


 やはり、キラとリリィの組み合わせが人気なようだ。



 あとは、ラム酒を飲みすぎたアゲハが酔ってキラから離れようとしなかったり、トランプでポーカーをしたらキラがぼろ勝ちだったりと、何とも有意義な時間をし五すキラたちであった。



 ども。

 予選が意外にあっさり終わっちゃいましたね。主要人物を固めすぎたせいかな?

 あと、アランたちが合流して一層描きにくくなりました。難しいですね、大ぜいを操ることは。


 ではこのあたりで、これからもよろしくお願いします。

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