第十五話 武術大会開催!
ども、コウです。
かなり間が空いてしまってすみません。
これから更新していきますが、またこのようなことにならないよう頑張りますんで、応援のほどをよろしくお願いします。
では、久々の最新話、どうぞ。
――――武術大会当日――――
「選手一同、礼!」
グランバールで一番大きな格技場。そこで、武術大会の開会式が行われていた。
「皆さん、おはようございます」
挨拶をするのは、初・中・高等部の総部校長、エスネット・ファリス。キラたちをこの学園に入学させた人物だ。
「ついに、この日がやってきました。出場者は、三ヶ月間特訓してきた成果の見せどころです。悔いのないよう、頑張ってください。観戦する生徒は、試合が終われば両選手に惜しみない拍手を送ってあげてくださいね」
選手たちが整列する一番前、魔法で空中に足場を作り、声を魔法で拡張してしゃべっている。
「ベスト8までの選手は、竜滅騎士団の方々が直々にご指導をくださいます。ぜひ手合わせ願いたいという生徒は、なんとしてでも勝ちあがってください。では、私の話はこれで。次に、国王様のお言葉です」
校長が足場を崩すと、後ろに控えていた、王冠をかぶった国王が校長と同じように話し始める。
さすがに、国のトップが現れたことで、会場全体がざわめき始める。
「静粛に」
優しく、それでも威厳のあるその言葉で、ざわめきが収まる。
「まずは校長。この武術大会にお誘いいただき感謝します」
国王は後ろを向き、一礼。校長は毎年恒例なことなのか、恐縮などせずに、いえいえと普通に返している。
「さて、約二週間にわたって行われる武術大会。私は非常に楽しみにしている。あなたたちが、どのくらいまで成長してきているか。そして、どれほどまで頼りがいのある人間になったか。それを見極めたいと思う。この武術大会に優勝した暁には、わが愛娘、ティアナとの婚約を認めよう」
突然湧き上がる歓声。主に男子で埋め尽くされている選手列は、特にうるさい。キラもリリィも、思わず耳を押さえる。
王国が手で沈める合図をすると、たちまち喧騒がしぼんでいく。
「ティアナも、十七といい年頃だ。同年代の君たち、特に強いものならば任せられると思ったのだ。だが、これはティアナの同意のうえでの婚約だ。無理やり婚約させて、愛娘を悲しませるつもりはさらさらない。ゆえに、絶対などという言葉を刻まぬよう。以上だ」
足場を崩して、すとんと着地する国王。それと同時に、生徒全員からの拍手。
「次に、竜滅騎士団総帥、シリウス・エルトリア様のお言葉です」
校長がいい出すと同時に、生徒達はまたもざわめきだす。主に、二年生の生徒が。
足場を作って現れたのは、紅のローブを着た、隻腕の騎士。頬には十字傷があり、顔の右半面は右目を通して一本の切り傷がある。
立つだけで、その圧力がきて、ざわめきついていた生徒達はおびえからか静まり返る。
「校長がおっしゃったように、ベスト8に残ったものは、教師であろうが生徒であろうが関係なしに、大元帥および元帥が直々に指導をする。いずれも、手加減などはしないので、覚悟するように。私からは以上だ」
以外と短い言葉で終わったためか、生徒達の群衆のそこここからため息が漏れる。
それからは、長々と話をする貴族だけで、開会式終了が十二時を回ってしまった。
「ふぅ……お父様に何か言われるのかと思いましたわ……」
珍しいことに、リリィが教師専用控室でため息をついていた。
「さすがに、僕も緊張したね……ずっとこっち見てんだもん……」
キラも同様だった。
リリィの父、シリウスは開会式が始まって以来、ずっとキラたち二人を見ていたのだ。それが、怒りや疑問の視線ならまだいいが、ただただ見つめられるというのは気味が悪い。
特に、父親から娘を奪ってしまった側のキラからすれば、なおのことだ。
「ま、いいですわ。過ぎたことですし。それより、今日の日程はどうなっていますの?」
一クラス5人参加、一学年50人参加の、この大会の出場生徒数は300人。教師はわずか4人の、合計304人参加。
教師はよくても、生徒は多すぎるため、十ブロックに分け、予選という形で戦わせる。
十ブロックで勝ち抜いた十人、教師四人が本選出場者となる。
最初の三日間程度で、全ブロックの本選出場者を決める。
そして、二日間を本選出場選手の休暇や訓練、ダンスパーティーを。残りの日で本選を行うのだ。
今日の昼からは、最初のブロック、Aブロックがサバイバルで勝負をすることになっている。サバイバルといっても、格技場で全員一斉バトルの、バトルロワイヤル形式だ。
それは、誰か一人になるまで続く。
「Aブロックには……レインが出ますわね」
「へぇ……しょっぱなからねぇ……運ないね。僕が言うのもなんだけど」
「まあ、嫌でも注目されますものね。勇者というだけあって」
キラとリリィは、早くも印刷されたトーナメント用紙を見ながら、観客席に移動していた。
二人の視線は、格技場へと。すでに、三十人の参加生徒が集まっていた。
「ま、レインリンチは確定だね」
キラがつぶやいたと同時に、始まりの鐘が鳴った。
「ちっ、やっぱりこうなるのかよ!」
降り注ぐ火球に雷球、発生した雲からはすごい勢いで雹が。
それらの標的は、もちろんレイン。
片手にはエクスカリバー、片手には光の剣を持ち、襲いかかるそれらすべてを防ぎ、はじき、受け流すことで避ける。
「――――大地よ わが敵を貫け――――!」
誰が詠唱したのかは分からないが、地面から鋭くとがった棘が生える。
それを、跳ぶことで避ける。
が、
「うらぁ!」
足場のない空中では、人間は無力にすぎない。
それを利用し、筋骨隆々の男子生徒が持っている槌で叩きつけてくる。
「ちっ……!」
まともに受け止めることはできないため、無詠唱で創りだした光の盾で斜めに受け流す。
確実に仕留める、と自信があったのか、男子生徒は空中で大きくバランスを崩した。
それを見逃さず、レインは体をひねってその横腹にけりを入れ、撃ち落とす。
男子生徒が土ぼこりをたてて堕ちると同時に、レインも着地。
「はっ」
短く息を吐き、疾走。残り二十八人の軍団に、レインは一人で突っ込む。
襲いかかる刃に魔法。それらを紙一重でかわしながらも反撃。
一人、また一人とレインに吹き飛ばされ、壁に激突。全員が気絶している。
まさに、一騎当千。
そして――
『勝者、レイン・フォード!!』
審判が高らかに宣言すると同時に、会場がわきあがった。
「んまあ、当然の結果かな?」
退場するレインの背中を見届けながら、キラはつぶやいた。
「開始十分で、ですか……まあまあですわね」
普通にしてみれば早すぎるといった速さなのに、酷評をつけるリリィ。
「次は……」
闘技場が整備されている中、リリィは羊皮紙に書かれた予選ブロックに回線のメンバー表を眺める。
と、リリィの瞳がぱっと輝く。
「アゲハですわっ!」
魔法での整備は一分ほどしかかからず、アゲハを含めた三十人の生徒が登場口からわらわらと出てきた。
「頑張ってください! アゲハっ」
殺気だっているほかの生徒とは違い、アゲハは緊張した風もなくきょろきょろとあたりを見回し、キラたちを見つけてひらひらと手を振る。
それにリリィは両手でパタパタと振り返し、キラもにこにこと笑いながら手を振る。
そうしているうちに、笛の音が鳴り試合が始まった。
初めの合図と同時に、アゲハはするりと群衆から抜け、壁に背を預け気配を消す。
「はは、賢いな、アゲハは」
「そうですわね。弱くとも、大勢相手は面倒ですもの」
二人は気づいていたが、それ以外の観客も選手も気づかず、試合は続く。
それほど、アゲハは周りの雰囲気に同化していたのだ。
さまざまな魔法が飛び交う中、ようやく残り三人となったところで、アゲハが動き出した。
まず最初に、無防備に背中を向けていた男子生徒へ。
キラに(ここ重要)買ってもらった『紅葉』を亜空間から取り出し、疾走ののち鞘つきのまま派手なたんこぶができるほどぶったたく。
「おぅっ……!」
おそらく何が起きたか理解できないうちに気絶したことだろう。
気付かなかったほうが悪い。
「どっからわいて出た!」
眼鏡をかけた委員長的な男子生徒が、素早く剣を構えなおす。
「私、虫じゃない」
だが、男子生徒の言葉に少しいらついているアゲハは、瞬時に懐へ移動し、構えられた剣をぱきりと折って顎を穿つ。結果、吹っ飛ぶ。
その際に、骨がすられたような嫌な音がしたが、気にしない。
眼鏡男子の結末を気にすることもなく、今度は残ったゴリマッチョ(ゴリ男)に標的を定め、
「ふんぬぅ! こいやぁ! ……ぶふぁっ!」
勢いがいいのは最初だけ。「こいやぁ!」の部分でいわれるまでもなく、アゲハは接近し刺突。もろ鳩尾に剣先(鞘つき)が入り、くの字に体を折り曲げ壁に激突した。
『しょ、勝者、アゲハ!』
――わああぁぁぁぁ!
ジャッジもアゲハの存在には全く気付けなかったのか、十数秒という短い間に起こったことに目を白黒させながら、手を挙げて勝者の宣言をするのであった。
「……最後のゴリ男クンは、痛かっただろうねぇ」
「可愛いものの前では、何もかもが無力なのですわ。……キラを除いて」
キラは、リリィの言い分を聞いて苦笑いをする。
そしてキラは思う。
――――あの刺突、下手したら鞘つきでも危ないよ
おそらく、その辺がわかっていての攻撃だろうが、冷や汗というものは止まらない。
結局、あれが突くことに特化した槍やレイピアでない分だけ良しとした。
「……ん?」
「ん?」
深い思考に入っていたキラは気づかなかったのだが、いつの間にかアゲハが膝の上に。
「……いつから?」
「ついさっきですわよ? そこから飛んで」
そこ、と指さしたのは、闘技場の真ん中であった。おそらく、本当に飛んできたのだろう。
別段気にすることではないので、頑張ったね、という意味を込めてアゲハの頭を撫で、これに関しては表情豊かなアゲハはキラの胸板に頭を預け、目を細めて甘受する。
そこで気に入らないのがリリィ。むぅ、と可愛くむくれるのは承知のことなので、アゲハの次に撫でてやる。
で、リリィも同じ反応を示す。キラの肩に頭を傾けて。
三人による和やかな雰囲気はだれにも壊されない。なぜなら、キラとリリィを怒らせると鬼を見るよりも恐ろしいということが、学園内に広まっているからだ。
さらに言えば、キラたち三人がいるのは教師の観覧席なので、レインたちはいないというわけなのだ。
「さ、お昼休憩に入ったことですし、お弁当を食べましょ?」
今日の日程は、午前中には開催式と二つの予選。そのあと一時間の昼休憩をはさみ、もう一試合して終了というあんばいだ。
リリィは事前に早く起きて(朝六時ぐらいから)豪華な弁当を作っていたのだ。これから一週間、それは続くようだ。
亜空間から御重を取り出したリリィは、キラとアゲハに箸を渡す。
いただきます、三人で声を合わせて昼食に取り掛かった。
「たく……俺もアゲハみたいにやりゃよかった」
「何いまさら……勝ったんだからいいじゃない」
「そうそう。レインが勝って後悔するなんて、キモイだけだよ? そーゆーのは、キラ様にしか似合わないんだから」
「てめっ、ミーナ……それきついぞ」
レイン、エミリア、ミーナの三人は仲良く闘技場の外の芝生で、ランチをしていた。
弁当を作ったのはエミリアとミーナ。ミーナはキラと一緒に食べたかったようで、八つ当たりとばかりにレインに毒を吐いていた。
「はぁ……まあいいけど。次はだれが出るんだ?」
「えーっと、あ、レックスだ」
「へぇ……そういやレックスはどこ行ったんだ?」
「さっき、近くにある食堂で飯食ってくる、って別れたばかりじゃん。ばかちん勇者」
「……おい。いい加減機嫌直せよ……まあいいや。ってかあいつ、一緒に食やいいのに」
「あんた、少しは遠慮ってものを知るべきね」
「……くそっ、言い返せねえ……」
こうして、レインがいじめられながら三人の昼食は、比較的和やかに進んだのだった。
「おばちゃん、カレー超得盛り一杯!」
同時刻、レックスは有名カレー食堂へと足を運んでいた。
何もレックスは三人――主に弁当を作ったエミリアとミーナ――に遠慮をしているわけではない。
カレーが目的なのだ。
大のカレー好きにとってたまらない場所なのである。
この食堂のカレーは、世界でも五本の指に入るほどのおいしさなのだ。カレーという小さな枠組みの中ではなく、すべての料理の中で、だ。
で、レックスは週一でこの食堂に通い詰めている。
「おっ、いつも通りうまそうだな」
ことり、と目の前に置かれた超大盛りのカレーを見、腹を鳴らせてカレーに食べにかかる。
この食堂のカレーの量は、四つに分けてある。
まずは並み。当たり前に、一般的な量。
次に大。並みの1.5倍の量だ。ここまではいい。
問題は次からだ。得盛りは並みの四倍ほどに当たる。これは、よほどの食い意地が張ってなければ食べきれない。意外にボリュームがあるのだ、カレーというのは。
そして最終段階は、レックスの頼んだ超得盛り。一気に並みの十倍に跳ね上がる。もうここまできたら、家族か友達同士でしか食べきれない。
それを、レックスが食べている。ばくばく、もりもり、ごくごく。
この店の常連なだけに、店の関係者はにこにこしているが、そうでない客は文字通りあいた口がふさがらない。今だって、スプーンと食器がかちゃかちゃ鳴る音がなく、整然としている。
しかし、それでも食べ続けるレックスであった。
ちなみに、キラはもっと食べる。
各々が昼食を楽しみ、ついに試合再開となった。
「レックス……ま、見る必要はないですわね」
「負けたら笑い物だね」
闘技場にはすでに選手たちが集合し、今か今かと試合開始の音を待っている。
「……強いの? レックス」
「ん? まあね。アゲハも二回ほど見たでしょ。戦ってるとこ」
「ん……。どれくらい?」
頭を撫でられながらも、その心地よい感触に流されることなく、次の質問をするアゲハ。
アゲハとリリィが言うには、キラに撫でられながらしゃべるのは難しいだとか。
「そのうち知るだろうけど、まあ強いよ。僕たちよりは弱いけど」
含みのあるキラの言い方に首をかしげるアゲハだが、笛の音が鳴ったことで闘技場に目を向けた。
「どーすっかなー……」
迫りくる刃に棒に拳に魔法。それら全部を交わし、時々突っ込んでくる奴を手刀でたたきのめしながら、この面倒な状況の脱出を考えていた。
いっそのこと、負けてしまおうかと思ったが、それはそれで後が怖い。
おそらく、笑う鬼と化した大元帥二人が、いや、下手したら元帥や元帥補佐まで加わってとんでもなく嫌ぁな状況になるのは間違いない。
なにより、総帥に何されるかわかったもんじゃない。
「なにボッと突っ立ってんだよ!」
後ろから襲いかかってきた男を、振りむくことなく横へ一歩移動して肘鉄。
ちょうど鳩尾で、ノックダウン。
「残り十七人」
黒い眼帯で覆っていないほうの左眼で数える。
全員男。
「ま、早く終わらせるにはこれしかないわな」
手に黒い鉄鞭を現し、それを真上に構える。
「間違っても当たんなよ」
忠告とともに鉄鞭が振りおろされ、ドゴォォン! とすさまじい音とともに巨大なクレーターが出来上がる。
そこに立っているのは、作った本人と、離れた位置にいる審判だけであった。
『……はっ。勝者、レックス・アーバイン!』
――……ぉぉおおおおおおお!!
もちろん、あんなことをされた後では、審判も客も瞬時に反応できるものではなく、あとからあとから感嘆や純粋な歓声が大きくなっていった。
気絶した生徒が運ばれていくのを見、レインは登場口から去っていくレックスの背中を見ていた。
「……どうやったらあんなことできんだよ」
「あんたもこの前似たようなことやったくせに」
「どっちも馬鹿力ということだね」
クレーターをみて、レインたちはまさに三者三様の反応を見せた。
「あんなの食らったら、ひとたまりもないわね」
エミリアの言うとおり、あの力は絶大だった。レックスのつぶやいた言葉は聞こえていたが、まさにその通りだと思ったのだ。
「さて、終わったことだし、寮に戻るか」
みな、試合が終わると同時に帰り道へと歩みを進めている。
エミリアもミーナも異を唱えることはなく、会場を後にした。
クレーターの修理をしようと作業員がうろうろしている闘技場の上空に、三つの影。
「わ、わわっ!」
「てめぇ、さっさと空中闊歩ぐらい覚えろ!」
「む、無茶言うなよ! 瞬歩だってこの前覚えたばっかりだって言うのに!」
「原理は同じだって前に言ったろうが! 今日はただ立つだけだ!」
「難しいもんは難しいんだよ!」
「あなたたち二人は、もう少し静かにできないのですか」
ヴァン、セレナ、そしてオーフェンの三人だ。
今回、オーフェンの修行も兼ねて、空中闊歩という魔法と武術を混ぜた技で空中感染していた。
もっとも、セレナはオーフェンのことなど気にもかけず、キラのことを凝視していたが。
「だってセレナ嬢……!」
「言い方は悪いですが。言っていることは正しいですよ。……腹立たしいことに」
いつもの毒舌口調は健在のセレナ。
オーフェンは、三か月前ヴァンが言ったのと同じように、見違えるほど強くなった。
五十キロの道を往復してもそんなに息切れをしなくなったし、純度百パーの鉄竿での釣りも普通にできるようになった。……ただ、魚は引っかからないが。
魔法はもとより、武術のほうも上達していた。
瞬歩という、達人レベルならだれもが習得している歩法。魔力をい同時に一瞬だけ爆発的な量を足に送り込むだけで、高速を超える速さを生み出すことができるものだ。
それを、苦労して会得したが、結局はこれしか本格的な武術――厳密にいえばそうではない――を習得していないのだ。
――普通、これで十分なのだが、元帥大元帥の二人には、常識が通用しない。
「ってか、あれが元帥の一人、レックス・アーバインの力かよ。むちゃくちゃじゃないか」
「あれぐらいでビビんな。あんなん、まだ序の口にも達してねえぞ」
「言ってみれば、まだ一割ほどしか出していないでしょう」
「あれで一割……どんだけ強いんだ」
オーフェンは自分とのあまりの力の差に愕然とする。
その様子を見た二人は慰めるわけでもなく、
「ま、経験の差ってやつだな」
「あとは、才能の問題ですね」
嫌なこと、だがまぎれもない事実をずばずば言う。
「うぅ……」
「まあ、落ち込むな。キラの坊主に比べりゃ、屁でもねえ」
「キラの坊主って……キラ大元帥のことか?」
またもやキラのことを坊主呼ばわりしたヴァンをセレナは睨むが、ヴァンはどこ吹く風といった風で視線を受け流す。
一方で、オーフェンはキラの名前が出てきたことを不思議に思う。
「なんで大元帥の名前が出てくるんだよ」
「ああ、あいつはな、戦闘センスのひとかけらもなかったんだ。あった時は、そりゃあ泣きそうなぐらいにな」
「まさか。だって、世界最強なんでしょ? ねえ、セレナ嬢」
ヴァンの言った言葉をまるで信じていないオーフェンに、とてつもない屈辱を受けたといわんばかりの口調で、
「まっこと。腹立たしいことに、ソレの言う通りです」
「俺はものじゃねえ!」
「な、なんで……?」
「あの方は、十五になるその日まで、剣はおろか戦というものにふれたことがないほど平和な村で育ったそうです」
「あの方が剣を持ったきっかけは、ただ巻き込まれただけなのです」
「巻き込まれた……? 何に」
「『血塗られた戦争』です。わかるでしょう? あなたなら」
確かにオーフェンは知っていた。
『血塗られた戦争』――――それは、愚かな一つの国が魔法で魔獣を操り、世界に喧嘩を吹っ掛けた戦争だ。
近くにある小さいな村を焼き払い、生存者はごくわずか。そのごくわずかの人間も、何やら後遺症で全員が例外なく死亡しているのだ。
「あの生き残り……? けど、ならなぜ……!」
生きているのか。それが疑問だった。
「んなの、俺らが知るわきゃねえだろ。坊主は知っている見てえだがな。聞き出そうにも、あの日のことは思い出したくねえ、の一点張りで……わからねえことはねえんだがよ」
「それから、一人生き残ったキラ様は、ただ生き残るために剣をふるい、生き残るために知識を得、生き残るために私たちの騎士団へ入団を希望したのです。言っておきますけど、あの時のキラ様は身びいきなしでも強かったですよ? 単独で、瞬歩まがいのものを習得していましたし」
「ま、そのあと俺がしごきいれたがな。おかげで俺やリリィの嬢さんよりも強くなっちまった」
「ひとりで、俺よりも……キラさんが今の強さになるまでどれくらいかかったんだ?」
「あ? 確か……一年ぐらいだったな」
「は!? たった!?」
目が飛び出るほど驚くオーフェン。
そんなに強くなるのが早いなら、なぜ自分よりも才能がないというのだ? そう思ってしまう。
「お前の思うことは分かる……あいつは、才能のかけらもなかった。だが、才能がないおかげで、すべての魔法や武術を自己流にアレンジして習得しやすいようにしたんだ。ったく、その頭、俺にも分けてほしいぜ」
「ふっ……あなたがキラ様に近づけるはずがありません。まあ、それは置いといて。ともかく、キラ様は自己のアレンジであそこまでなれたんです。大元帥になる覚悟は、もとから十分にありましたからね」
「おまえ、俺のことを目の敵にしてねえか?」
「まさか。れっきとした敵です。それより、上司を“お前“呼ばわりとは、どういう了見ですか?」
「ちっ……」
「……リリィ様とキラ様にきちんとしごいてもらいます。一週間。それとルーファン? くれぐれも私たちからキラ様の修行方法を聞きいて実践しないように。真似すれば、あなた、一日でつぶれますよ」
しごき、という言葉に絶望の表情を見せるヴァンと、つぶれる、という言葉に反応して同じ顔になるオーフェン。
この二人は、やはりどこか似ている。
「キラ様の強さは、もがき苦しんだ末に手に入れた“守る“力ですから。おいそれと手に入れられる代物じゃないんです」
それだけ言うと、ではまた、と言って瞬歩で消えてしまった。ここは空中だが、空中闊歩のおかげで瞬歩も併用できるのだろう。
「じゃ、俺たちも帰るぞ」
ヴァンもまたしかり。
――が、
「お、俺はまだそんなのできないんだってばぁ!」
後に残ったのは、ヴァンの支えがなくなったせいで、地面に落ちながら悲鳴を上げるオーフェンだった。
ども。
どうでしたかね? 本格的な戦闘がこれからも組み込まれる予定なので。
では、これからもよろしくお願いします




