第十四話 穏やかな日
ども、コウです。
とりあえず、内容はタイトル通りです。はい。
……と、いうことで、今話も楽しんでいってください。
武術大会まで、あと一カ月というところまで来た。
大会出場者である五人(キラとリリィも含めて七人)は、もとから強いために特に練習という練習もせず、ただギルドの依頼をこなして過ごしていた。
「ん~……暇だねぇ」
キラは、自分の椅子を魔法で肥大化させ、そこにキラが腰かけ、さらにリリィが空いている部分に座るというような形に座っている。
目の前のリリィを抱きしめながら、ゆらゆらと揺れていた。
「ふふ……暇なのは、いいことですのよ?」
リリィも、キラを背もたれにすることで甘えている。
「でも、暇」
いつの間にかアゲハは職員室にいつくようになり、その居場所は決まってキラの膝の上、あるいはリリィの膝の上になっていた。
「だよねぇ……祝日だから授業もないし、かといってギルドってのもねぇ」
キラは、リリィの膝の上にちょこんと座っているアゲハの頭を撫でながらつぶやく。
リリィも一緒になってアゲハを撫でている。
「そうですわ! 前クエストで行った平原。あそこに、みんなでピクニックに出かけません?」
キラは記憶を探り出して、リリィの言う平原を思い出そうと努力。
んー、と少しの間考えた末、浮かんできたのが
「あっ、リング平原のことかな?」
この学園に入学する前、アゲハの初クエストの時に、また来よう、といった場所であった。
それを聞くと、見上げていたリリィの顔が、ぱっと咲いた。
「ピンポンですわ! さすがキラです、以心伝心ですのね!」
デレデレになるリリィに、リリィを甘やかすキラ。アゲハは不機嫌にならないのかといえば、キラが先ほどからずっと撫でているので、そうなってはいない。
キラは、アゲハのなだめ方をマスターしていた。
「善は急げ、ですわ。アゲハ、レインたちに来るか聞いてきてくれます?」
「ん」
こくり、と頷きリリィの膝の上から下りて、職員室を出て行った。
「ん~、今日はのんびりとした一日になりそうだ」
「そうですわね」
それからしばらくの間、キラとリリィはいちゃついていた。
リング平原。キラの魔法陣によって、さして時間をかけることもなく着いた。
「うぉ……ふっさふさだ……」
「こんなところ、あったんだ……」
「キラ様に腕枕、キラ様に腕枕……」
「それ、私の」
「あの、なんで私まで?」
「いいじゃありませんの、シーナさん」
「そうそう。僕たちはいろいろとお世話になってるからね」
メンバーは、レイン・エミリア・ミーナ・アゲハのいつもの四人。大会出場者ということで、レックスも誘ったのだが、断られた。なんでも、用事があるのだと。
教師陣は、キラ・リリィ、そしてシーナ。シーナには何かとお世話になったことも多く、キラとリリィが半強制的に、お礼ということで連れてきたのだ。
キラは亜空間から前もって買っておいた大きなシートを取り出し敷いた。そこには、キラ・リリィ・シーナ・アゲハが座る。
後の三人は、使い魔を召喚して仲良く遊んでいる。レインの救世主は子犬になっていたが。
それを見たキラたちも、それぞれの使い魔を召喚し、自由に遊ばせた。
「みんな楽しそうだなぁ……」
「ふふ、そうですわね……」
足を延ばしきったキラとリリィは、にこにことその光景を見つめ、アゲハはキラの隣で早くも寝ている。
シーナも、言葉には出さないが穏やかな表情だ。
イフリート――リィという名前らしい――と不死鳥――フェリは同じ属性同士だからなのか、かなり中がいい。といっても、リィの背中にフェリが乗っているだけだが。
ウンディーネとルシファーは、属性が違うものの気が合うらしく、先ほどからレインをからかっている。
救世主――シグマは一人、のんびりと日向ぼっこをしている。
いないのは、シルヴィーとシーナの使い魔だけ。二人の使い魔は、自らの居場所で昼寝をしているらしい。
「よしっ」
キラが跳ね起きて、靴をはく。
「どうしたんですか? キラさん」
「ふふん。見ててよ」
キラは地面に手のひらをつく。
リリィも何をするかわからないようで、じっとキラ“だけ”を見ている。
――ズズゥン……
地響きをたて、適度な感覚の二本の土柱が生えた。
「まあ、これでいいかな」
呟いたキラは、亜空間へとつなぐ穴を作り、そこから白い布を取り出した。
そして、両端から飛び出ている紐を柱へとくくりつけ、
「ハンモック完成!」
それは、大きめなアウトドアの寝具であった。
キラはひょいとハンモックに飛び乗り、体を揺らして、ゆーらんゆーらんとし始めた。
「私も乗らせてください!」
滅多に見ない者には激しく興味を示すリリィが、キラの腹の上へジャンプ。わずかにうめき声を漏らすキラだが、まったく怒りもせず、リリィをやさしく自分の横に横たわらす。
「キラの腕枕と合わせると、これ以上ないぐらいに極楽ですわね」
キラの腕に頭を乗せたリリィは、気持ち良さそうにため息をついて広がる青空を仰ぐ。
「私も」
いつの間に起きたのか、アゲハものそのそとハンモックに乗ろうとしている。が、何分二人のっているこのハンモックは安定が悪いらしく、下手すれば揺れて落ちそうになる。
それを、キラはハンモックを魔法です秒間固定し、アゲハを抱き上げて一緒にハンモックへ乗せる。
そして、キラとリリィは先ほどと変わらない格好で、アゲハはキラの腹の上でくるまるという形になる。
「三人は、家族みたいですね」
シーナも、そんな三人を見てくすくすとほほ笑み、いつもの堅い口調ながらも、穏やかな声音で話しかける。
「でしょぉ……リリィ、子どもがほしくなったよ」
ひょこりと、ハンモックの端っこから顔を出してキラは頬を緩ませながら、デレッとした口調で自慢する。が、そのあと、少し真剣な口調になってリリィに懇願し始めた。
「んもぅ、キラったら……夜頑張れば、できますわよ」
上から聞こえてくる、らぶらぶトークに苦笑しながら、シーナはフェリとともに空中散歩を楽しんでいるミーナに目を向ける。
「ミーナぁ! 早く下りて来いよぉ!」
「私だって楽しみにしてんだからねぇ!」
「きゃぁ! 楽しい~!」
甘い会話によって生み出されたシーナの苦笑も、三人の楽しそうな声でまた頬が緩む。
この際、シーナは隣からアゲハの、
「私と交われば、どんな子どもが?」
という発言も気にしないことにする。
シーナは、戦いなどではなく、こういった、普通にあるほのぼのとした風景が好きだ。
例えば、子どもたちがはしゃいでいるところとか。
例えば、犬猫などの動物がじゃれ合っているところとか。
例えば、キラとリリィのように、当たり前のように恋人がいちゃついているところとか。
そんな、刺激も何もない、普通にあるものが、ことが。
「こういうときはあれですね……」
シーナは、歌が大好きだ。学園の教師になれなければ、オペラ歌手か何かになろうとしたぐらいだ。
そして、このような日には、自分が好きな曲を口ずさむ。
「――ある日、パパと、二人で、語り~あぁったさ~♪」
シーナの美声は、澄み渡るこの空気にはよく響き、弾んだ。
「あ、緑の歌かな?」
「そうですわね……私たちも一緒に歌いましょう!」
キラとリリィも、その歌が好きなようで、シーナと同じように口ずさむ。アゲハは分からないようで、不思議そうな顔をしていたが、からだを少し揺らしてリズムを取っていた。
「ほら! リリィ特製のピクニック弁当!」
「「おぉ~!」」
全員の視線が集まるのは、リリィが作ってきた弁当。
小麦飯――米は高価なので、小麦で似せた物――は使わず、サンドウィッチやドーナツ、アップルパイなど、パンが主にある。
おいしそうなのはおいしそうなのだが、驚くのはその量。十段重ねぐらいの籠があるのだ。
「これ、さ……食べきれるのか?」
「男の子なんですから、このくらい食べなさいな。キラは軽く食べれますわよ?」
「あんた、すげえな……」
レインがあきれながらキラのほうへ視線を向けると、キラは大きなサンドウィッチ(ピザ一枚分ぐら)を食べ終えようとしているところだった。
口をあんぐりとあけるレイン以外全員は、弁当に手をつけようとしているところだった。
「はい。エミリア、ミーナ」
リリィは、サラダたっぷりのサンドウィッチを、ハンモックに寝転がっているエミリアとミーナに渡す。
「あっ、ありがと、先生」
「ありがとうございます」
ハンモックがよほど気に入ったのか、二人ともそのままいると言ってきかないのだ。
「よし、じゃあ俺も……」
「レインには私の新作を上げますわ」
リリィが、レインが手に取ったサンドウィッチを取り上げ、代わりのサンドウィッチを渡した。
「えっ? 別にいいけど、具はなんすか?」
見た目は、ハム二枚とキャベツが見えているだけ。だが、中は膨らんでいて、何かつめられているのがわかる。
「ふふっ、それは食べてからのお楽しみですわ」
あやしく笑うリリィは、他から見れば怖い。
なぜかキラが、顔を青ざめて「ご愁傷様」といったのが聞こえたが、レインは気にせずそれを口に運ぶ。
「……ん……ん? 魚か?」
何か変なものでも入っているのかと思えば、なかなかの美味。味は、魚のそれ。食感も悪くはなく、柔らかい身をつぶすような感覚だ。
「ええ。名付けて、“フィッシュウィッチ”ですわ」
「やっぱ魚か……何の魚っすか?」
「アイフィッシュですわ」
途端、レインの口の中はあの独特なにおいで満たされ、追加効果として変な味も染み出てきた。
「あら、レディが作ったものを、まさか吐きだすわけではありませんよね?」
くすくすと笑いながら、リリィは剣呑なまなざしでレインを見据える。
レインは覚悟を決め、残ったものを全部口に入れ、お茶とともに飲み込む。
「ふふ、どうでしたか? 私の新作」
めちゃくちゃに苦手なものだったので、やんわりと否定しようとするレインだが、今にも殺さんとばかりに睨んでくるキラが怖く、
「え、ええ、斬新な味でしたよ……」
言った後、レインは妙に使命の達成感がする。
が、
「喜んで頂けてこちらも嬉しいですわ。まだまだありますから、たんと食べてくださいね」
悪夢はまだ終わっていなかった。
合計でいえば、キラが一番食べた。なんせ、半分ほど食べたのだから、誰も勝てる人はいない。
あとはみんな平等。唯一、レインがフィッシュウィッチを一段分食べさせられたため、途中でノックアウト。いちゃいちゃし始めたキラとリリィ以外、同情のまなざしを向けていた。
そのあとは、交代でハンモックに寝そべり、あとはシートで昼寝。
キラは大の字になって寝そべり、右腕にはリリィが、左腕にはアゲハとミーナが体を丸めて寝ていた。さらに、腹の上にはリィ、ウンディーネまで。
何に便乗したのか、シーナがキラに膝枕を。
まさにハーレムうっはうはなキラだが、かなり寝苦しそう。おそらく原因は、リィとウンディーネだろうが。
一方のレインは、いまだにうーうー唸り、エミリアが看護している。シグマが尻尾でパンパンとレインの顔をたたいているのは、何か意味があるのだろうか。
若干、そのせいで唸っているように見える。
そして、ルシファーはハンモックタイム。最初キラがしたように、ゆーらんゆーらんと揺れ、楽しいのかくすくす笑い声が聞こえる。
結果的に、全員にとって穏やかな日であった。
「ぐ、ぐ、ぐぬぅぅぅぅぅぅ!」
「ほれほれ、もっと頑張らねえか」
「ふふ、もっと苦しんでください」
もうひと組、穏やか(?)な生活を送っているのが。オーフェン、ヴァン、セレナだ。
三人は、二か月前に巨大ナマズと遭遇した湖に釣りをしに来ていた。
転移魔法でここに来たわけではなく、以前と同じように走ってきたのだ。それでも、オーフェンは二カ月の特訓の成果か、息切れをしなくなった。
そして、今は趣味と修行の両立。
三人は、純度百パーセントの鉄竿を使い、釣りをしているのだ。
「ヴァ、ヴァン……これ、重すぎだって……」
「ああ? 俺らも同じもん使ってんだよ。文句あるか?」
「文句を言うなら……重さを二倍にしますよ?」
実質いじめ。そのおかげでオーフェンは強くなったのだが。
「その調子だと、お前の晩飯は抜きだな」
ヴァンは、その鉄の重さもあってかまったく釣れていない。隣のヴァンとセレナは、すでに五十はいっているのに。
「ちくしょぉがぁ!」
プツンとキレたオーフェンは、ついにかかったのか、恨みを晴らすかのように引っ張り上げる。
「お? やっとかかったか……」
「それに、この気配は……」
ヴァンとセレナは今から釣りあげられる魚が何か分かったようで、手伝うことはせず、ただ見守っている。
「んのぉぉぉ! ――なぁっ!!」
すると、オーフェンが力負けし、湖に吸い込まれ、
――ザパァァン
水しぶきを上げ、落水。
溺れるようにしてもがいているオーフェンを見て、ヴァンは腹を抱えて笑い、セレナは口元を隠して笑っている。
「ば、ばらっでないで、だずげ……!」
ひとしきり笑っていたが、オーフェンがカナヅチなのを思い出し、しょうがないとヴァンが助けに行こうとする。
と――
「ぶば、ぶば……ぶばぁぁぁぁぁ!?」
暴れていたオーフェンが、膨れた水によって打ちあげられる。
「べほっ、げほっ……たすか……っ!?」
膨れた水の正体は、巨大ナマズだった。
固まるオーフェン。笑うヴァン。にやりと笑う、巨大ナマズ。
この後、オーフェンは巨大ナマズによってしごかれた。
ども。
なんか、最後らへん微妙でしたね。自分でも、激しくそう思いました。んが、どうもいい展開が思いつかなくて……すいませんした。
宣伝……言いたいですが、今回は少し違います。最近、またもや新しい小説を出そうかと思いまして。その名も、『幸せをその手に』、です。……自分でも単純だと思いますが、またまた最強物語です。はい。……すいません。
近々公開するつもりなので、名前を見つけたら、ちらっと見てやってください。
んでは、これからもよろしくお願いします。




