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第十話 騎士団

 ども、コウです。

 今回の話は、結構説明が多いのでだるいと感じるかもしれません。そうならないようにしているつもりですが。

 なにはともあれ、今回の話もよろしくお願いします。

 キラとリリィが教師に、アゲハとレインとエミリアが生徒になって一週間。魔王についての話からも一週間たつわけだが、レインとエミリアはどこか不安を感じたのか、アゲハとミーナを連れて暇さえあればギルドで依頼を受けていた。

 キラとリリィはといえば、今までとなんら変わらない生活。危機が迫っているにしても、二人は行き当たりばったりで何とか乗り越えてきたのだ。だから、気持ちを強く構えていることにしていた。

 そして今は、キラとリリィの職員会議中。


「え~、今日からちょうど三か月後に、武術大会があるので、その旨を生徒に伝えてください」


 はげ散らかした教頭がその言葉で締め、職員室から出て行った。

「三か月後、か……意外に早くないかな?」

 教頭が去り際に、リリィにいやらしい視線を送っていたのでキラは睨みをきかせながら、疑問を口にした。

「そういえば、そうですわね。いつもは夏明けぐらいに開催しているのですのに……」

 リリィも同じように睨みを利かせて、口を開く。

「それは、今回の武術大会が少し変わっているかららしいですよ」

 口を挟んできたのは、おなじみシーナ。

 変わらない純白ローブ姿の彼女は、紅茶を飲みながら近づいてきた。

「変わってるって?」

「なんでも、最近魔獣が活発化しているらしいんです。魔獣の群れが村を襲ったという話も、ちらほら出てき始めてますし」

 それはキラもリリィも知っていた。一週間前までは何ともなかったのだが、ここ二、三日で村などの魔獣による被害が急増している。

 間違いなく、魔王の影響。そうキラもリリィも思うし、世間もそう思い始めた。

 だから、二人もなんとなくわかった。今回の大会は――


「今大会は、生徒と教師の中から選ばれた人だけが参加することができるようになったんです」


 少し特別。通常の武術大会は、生徒だけしか出ない。

 その理由も簡単。強い者を強くするためだ。弱い者はその強き者同士の戦いに憧れ、自らも強くなろうと努力する。今回はそれが目的だろう。


「ですけど、まだ続きがあるんです」


 なんとなく、今まで冷静だったシーナが、少し頬を紅潮させているように見える。

 その態度がよくわからないキラとリリィは、シーナの言葉を待つ。

「今大会のベスト8まで勝ち残った人たちには――」

 カタン、と紅茶のカップを少し乱暴に机に置き、今度は本当に興奮している状態で、キラとリリィにとって衝撃的な言葉を放った。



「なんと! あの竜滅騎士団の方々が相手をしてくれるんです!」





 ~アゲハside~

「……竜滅騎士団が直々にご指導、ね……」

 担任であるキラが、ホームルームでその事実を告げて出て行ったあと、アゲハの隣でレインがつぶやいた。

「まあ、最近魔獣が活発化しているから、当然といえば当然ね」

 机を少し前に押し、レインの呟きを聞いたエミリアが言う。

「なら何が何でも勝ち残らないと! こんな経験、滅多にないからね」

 ミーナは気が早く、すでに自分の勝ち姿を想像しているようだ。

 その中、アゲハだけが首をかしげ、


「竜滅騎士団て、何?」


 瞬間、その場の空気が凍った。

 その空気を感じ取ったアゲハは、ん? と首をかしげる。そして、他の三人はアゲハを信じられないという目で見ている。

「……はやく」

 その状態が約一分ほど続き、いい加減その存在を知りたいアゲハは、若干の殺気を飛ばしながら三人に聞く。

 そのことで再起した三人は、冷や汗をかきながら、それでもものすごい勢いで、

「なんで知らねえんだ!? 有名な騎士団だろ!」

「そうよ! 世界で一番強くて有名なのよ!?」

「アゲハちゃん、ほんとに知らないの?」

 レイン、エミリア、ミーナの順に問い詰めた。

「知らないものは知らない」

 案に早く説明しろというアゲハに、ため息をついたレインが説明をし始めた。



 竜滅騎士団。それは、昔からある、昔から有名な騎士団。

 設立理由は、その名の通り、終焉の魔獣(ドラゴン)を滅するため。

 立ち上げたある貴族の一族が、代々その身に終焉の魔獣(ドラゴン)を退治できるほどの力を秘めていた。その力を使って、それに立ち向かった。

 が、世の中そう簡単にはいかず、終焉の魔獣ドラゴンを滅すると同時に、その力を秘めた者も死に陥る。

 しかし、それでもまだやり方はあった。幸いなことに、その力は失うことも減らすこともなく、剣などの武器に宿すことができる。それを利用し、力を秘めし者を守るために、騎士団ができた。


 竜滅騎士団という、最強の騎士団が。


 最強と呼ばれる所以は、終焉の魔獣(ドラゴン)を相手に立ち向かえることのほかに、一途に個々の力が強いということもある。

 まず、四人の大元帥。この四人は世界最強の四人といわれ、十万単位の軍隊にたった一人で立ち向かい、勝利を収めることができる。

 そして十二人の元帥。平たく言えば十二個隊の隊長だが、それでも強すぎるといえるぐらい。誰もが一人で戦況を変えられるほどの力。

 次に来るのは、元帥補佐。元帥によって選ばれた者が就くことができる。これも、大元帥や元帥のように強いわけではないが、そのかわり戦況を正確に読み取り、的確な指示を出して元帥を率いることができる。

 最後に、この竜滅騎士団を立ち上げた総帥。事務的なことが主な仕事だが、それでも元帥クラスの力はある。


 まさに、怪物集団。

 だからこそ、世界中の騎士志望者は竜滅騎士団に入ることを夢見るのだ。



「って、ことなんだ。わかったか?」

 竜滅騎士団に入ろうとしたことがあるのかレインはかなり詳しく、要約して授業の数秒前までで何とか説明し終えた。

 ふむふむとアゲハがうなづくと、授業初めの鐘が鳴り、授業が始まった。


「……大元帥、誰?」

 アゲハは興味を持ったのか、授業が始まってもそんな事を聞いてきた。

 退屈な授業から逃れるなら何でもいいレインは、その質問に答える。

「今は確か……アラン・エスフォードとセレスティーナ・ルシフォンだったな。あとの二人は極秘だそうだ。なんでも、各地を飛び回っていろいろ任務をしている、とか」

 そこで、アゲハは小さな違和感を感じた。なにか、知っているようで、それを思い出せないような。

 だがそれを無視し、レインの話に耳を傾ける。

「あ、んでさっきの話の続きだけどな。ある貴族の秘められた力ってのがあるだろ?」

「ん」

「それは“封印の力”っていって、魔法を切り裂くことができる能力らしい」

 終焉の魔獣(ドラゴン)であるアゲハは、もちろんその存在を知っていた。

 正確には、魔法ではなく魔力を裂く“封印の力”に対して、その対極にあるのが、終焉の魔獣(ドラゴン)の、魔力を破壊する“侵蝕の力”。

 もちろん、この“侵蝕の力”をアゲハも持っている。

「んでだな、その力を込めた武器ってのがあるだろ?」

 そう、その存在も知っていた。だけど、武器の名前までは知らない。

 それを聞きたくて、授業のことなど忘れて聞き入る。

「その武器の名前がな――」

 少しもったいぶったようにするレインに腹が立つアゲハ。だが我慢。死なれてはここで知ることができないからだ。


「ドラゴンスレイヤーっていうんだ」


「じゃ、レイン君。この魔術式を解いてください」

「げっ……あたっちまったか。悪い、この話はまたあとでな」

 そういうとレインは、魔術式を解くために黒板へと向かった。


 アゲハは、ようやくこの小さな違和感に気付いた。

 以前、初めてギルドからの依頼を受けた時、ちらりと見た。リリィの武器を、ウルフェンの残骸の切り傷を。


 リリィの武器は、ドラゴンスレイヤー。その時は気にもしなかったが、確かにそうだった。紅い刀身に、刻まれた古代文字(ルーン)。まぎれもなく本物だ。


 アゲハは、“封印の力”についてなら一般の常識以上に教えられていた。だからわかる。ウルフェンに刻まれた傷には、魔力が通っていなかった。血にも、肉にも。それは、魔力をドラゴンスレイヤーに吸い取られたという証拠。 


 そして、一番の極め付けが、リリィの使い魔。フェリという名の不死鳥(フェニックス)だ。

 不死鳥は、不死鳥の存在そのものが、“封印の力”。断罪の炎、浄化の炎。それらも、もとはそれがすべてだから。

 ある貴族というのは、不死鳥の恩恵を最大限に受けている、ということを聞いたことがある。それなた、魔法にしても炎を得意とし、使い魔がフェニックスというのは考えなくてもわかる。


 すべてのつじつまが合致したことで、アゲハは確信した。



 リリィが、竜滅騎士団に所属、それも大元帥か総帥であるということを。



 それなら、あの時――リリィとキラにあった時――、自分におびえもせずに対峙したのが分かる。竜滅騎士団が、偶然とはいえ終焉の魔獣(ドラゴン)にあってちびってなどしていたら話にならない。


 だがそこでわからなくなるのが、キラの存在。

 キラは強い。リリィよりもずっと、自分よりもずっと。それは、使い魔で神を召喚した時点で明白だ。

 

 だからわからない。キラが。

 

 神をも超えるキラが、果たして本当に人間なのか。世界を飲み込むほどまでに魔力を蓄えているキラが、本当にこの世界(・・・・)の人間なのか。


 知りたい。が、知るのが怖い。

 


 揺れる二つの思いが、アゲハを挟むときに終業の鐘が鳴った。

 みれば、レインも席に戻っており、先生もいなくなっていた。

「アゲハちゃん、大丈夫? 具合悪いの」

 いつの間にいたのか、目の前には、でん、とどアップのミーナの顔。

 少し驚くが、あまり表情を変えずに

「大丈夫。考え事してただけ」

 そう言うと、ミーナの顔は安心した顔になった。


 それから、武術大会の話になって、いつもの四人で騒いでいた。



 ~キラside~


「ん~……なんで僕の膝の上にアゲハがいるんだろ? いや、別にいいけど」


 昼食の職員室にて。リリィ特製の弁当を食べているキラは、何ら変わりなく膝の上にいるアゲハに疑問を覚えた。

 リリィはもう慣れたもので、キラの腕に抱きついてアゲハの頭を撫でている。

 かくいうキラも、無意識なのか手が勝手に動いて、同じくアゲハの頭を撫でている。

「まあいいじゃありませんか。二人っきりの時間もいいですけど、三人でも楽しいものですよ?」

「いや、とがめてるわけじゃないんだけど……レインたちはどうしたの?」

 キラが聞くと、アゲハが忘れていた、という感情を表情にあらわにする。

「誰が武術大会出る?」

 もそもそとキラの膝の上で動き、ピタッとキラにくっつきながらアゲハが聞いてくる。

 これも恒例。リリィが歯ぎしりしている。

「えっと……クラスで担任が決めるって話だったけど」

 ねえ? と確認の意味を込めてリリィを見ると、


「んん!?」

「ふ……ちゅむ……」


 キラの唇に、リリィの唇が重なった。

 正直に言ってかなり嬉しい。

 が、人前、というか、教師やここに用事があってきている生徒とくにアゲハの手前、逃れようとする。だが、リリィの手はしっかりキラの両頬をホールド。

 ついばむような甘いキスが、五分ほど続いた。


「むぅ……」


 終止符を打つこととなったのは、アゲハの恨めしそうな唸り声だが。

「アゲハ、どいてくださいな。私も我慢の限界です」

 するとリリィは、アゲハの脇の下に手を突っ込み、抱き上げてどかせる。

 そしてリリィはアゲハを自分の席に座らせ、そしてリリィ自身はキラの膝の上に座った。

「これで落ち着きますわ」

「ぬぅ……」

 少しだけ腰を引くだけで、リリィはキラと同じ位置に頭があるようになり、キラの肩に顔をうずめた。

 アゲハは、どこか思うところがあるのか、それ以上は何も言わずに引き下がった。


「すんごく、恥ずいんだけど……」


 やはりこのようなことは目立つようで。男も女も生徒も教師も関係なく、注目していた。

 キラは、そのことに顔を真っ赤にして、リリィと同じように顔をリリィの肩にうずめていた。




 リリィは、恥ずかしそうにするキラに、胸がキュンキュン(略して胸キュン)していた。

 普段のキラは、恥ずかしがることはまずないのだが、今の行動は彼の予想外だったようだ。

 あまりの可愛さに鼻血が出そうなリリィは、ぎゅむ、とばかりに思いっきり抱きつく。

 ちなみに今のリリィは、スカートの下に短パンをはいている。いざという時にいつもはいているのがよかった。

 

「そ、それより、大会出場者だったよね? あれは、僕とリリィで決めることになったんだよ。とりあえず、五人ね」


 気を取り直したキラは、それでも恥ずかしいのか、矢継ぎ早に話し始めた。

 が、リリィは話の内容など、どうでもよかった。


 なぜなら、大好きなキラの声が、耳元で聞こえることに悶えていたからだ。


「もう決めた?」

「まあ、ね。君たち四人は確実だよ」

「はぅん……」

 気付かれないように、心地よさを声に出す。それと同時に、抱きつく力が少し強くなる。

「あと一人は?」

「うーん……それを迷ってるんだよね……」

「ふ……」

 抱きつかれる力の変化に気付いたのか、キラは抱きしめながら頭と背中を撫でてくる。

 『キラにされる大好きなこと』三~五位を同時にやられ、とうとう力が抜ける。

 ちなみに、一位はキスで、二位は……営みだ。

「授業で、どうにかする?」

「まあ、それしかないね」

 力が抜けたことに気付いてキラは、今度は抱きしめる力を強くしてきた。

 そのことによって、リリィの顔はますます肩にうずめられ、キラの匂いに包まれた。

「ふゅ……」

 そうしてリリィは、温かいぬくもりに包まれながら、心地よい眠りにつくのだった。




「あちゃ……寝ちゃったか」

 キラとアゲハが話しこんでいると、リリィは寝てしまったようで、可愛い寝息を立てている。

「ま、最近結構忙しかったからね」

 最近といっても、ここ二・三年のことなのだが、キラの感覚ではあまり変わりない。

 「ふにゅ」などと可愛い寝言を時々つぶやいているリリィを、可愛いなあ、などと思いながら頭を撫で続ける。

「……で、どうする?」

 半眼で睨みつけてくるアゲハ。その様子に、はてなマークを浮かべながらも答える。

「一週間後、ぐらいかな? それぐらいたったらその一人を決める選手権をしようかな」

「でも、あとの四人のことは?」

「適当に説明するよ。使い魔のことも言っとけば納得するしね」

 キラは、終わりのホームルームでどう説明するのか、リリィを撫で続けながら考えるのであった。






「元気でやってるかねえ、あのバカ弟子は」


 とある小さな村で。長い金髪を首裏あたりでひとまとめにしている男が、カカカ、と笑いながらつぶやいた。


「元気でしょう。すくなくとも、勇者なのですから、生きてはいます」


 紫色の髪の毛に、メイド服姿という、周りからすればかなり異色の女性が、紅茶を静かに飲みながらそのつぶやきに言葉を返した。


「はっ、違いねえ」


 今度は爆笑する男。この酒屋では、いかつい傭兵などもいるが、その男にキレる者は一人としていない。

 男の顔には、右の眉から左の頬にかけて、荒々しい切り傷。そして、そばの壁に立てかけてある大剣は、表面にびっしりと古代文字(ルーン)が刻まれてある。

 そして、その男の存在そのものが、威圧感バリバリだ。

 そのために、誰も文句を言えないでいる。


「つか、アランの旦那はどうした? もともと一緒に居る予定だったろ? それとほかの元帥も」

 男は、吸いかけの葉巻を、灰皿のふちでたたきながら尋ねる。

「あなた、上司に対する口調がなってませんね……今に始まったことではないですけど。アラン様は娘さん――ルルテアさんをどうしても連れて行きたい、と」

 この男の態度は昔から変わらないのか、紫女性はため息をつき、紅茶のカップを専用皿に置く。

「ああ……で、総帥とトンクスに直談判、ってわけか。変わんねえなぁ。前ん時もそうだったろ」

「あの方は、娘のためならプライドも捨てるような人ですしね。ほかの元帥ですが、各々任務があり、そちらが優先のようです。追いつくのは、あと一週間かと」

 二人とも苦笑。

 二人は思いだす。以前、男がルルテアと偶然同じ任務の時、総帥に土下座をして連れて行ってもらったことを。

「……なんかおかしくねえか? 大元帥であるアンタとアランの旦那がなくて、元帥が任務ありだなんて」

「失礼ですね。こう見えても私とアラン様は、与えられた任務をすべてこなしているのです。ほとんどその日に」

「いいよなあ、つよくて……」




「あなたも強いじゃありませんか。ヴァン・クラウド元帥?」




「あんたが言っても嫌味なんだよ。セレスティーナ・ルシフォン大元帥」




 ども。

 リリィとキラのラブシーンですがいかがでしたでしょう? なんとなく、リリィ視点も描いてみたんですが。すこし、難しかったです。

 さて、最後らへんですが、新キャラ出してみました。この二人は結構動くと思います。あと、アラン大元帥も。


 では宣伝を。主人公最強能力ファンタジー『リアルワールド』。まだ話数が少ないですけど、よろしくお願いします。


 次回は、多分クラス内の武術大会出場選手権……長いですね……です。たぶん、またもや新キャラが出ると思います。


 それではまた。次もよろしくお願いします

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