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第九話 ファントムの存在

 ども、コウです。

 いきなり話が急展開したような気がします。……この先大丈夫かなあ? などと思いながらも、今回の話はシリアめであまり笑いがありません。真剣なんで。

 すいません、ルビ振りすぎました。携帯では少し読みにくいかもしれませんが、ご勘弁ください。

 では、ようやく書けた最新話をどうぞ。

 

「………………え……?」

 目の前でふよふよと浮かんでいる銀髪少女に、キラは唖然とする。

「滑稽じゃの。妾が現れたのがそんなにおかしいか?」

 不敵な笑みを、そのかわいらしい顔に張り付け、ジジくさいしゃべり方をする。

 一方のキラは、いまだに固まっている。何が何やらわからない雰囲気の中で、リリィも固まっている。

「……なんで……」

「ん?」

「なんで君がここにいる!」

 いつものにこやかな表情はどこへやら、険しい顔をして怒鳴るキラ。

「ふん。お主が呼び出したからに決まっておるであろう?」

 何をあたりまえなことを、とでも言いそうな顔をする銀髪少女。


「君は……君は僕の手で消し去ったはずだろう! マザー!」


 瞬間に、キラの体から莫大な量の魔力が破裂するかのように吹き出る。魔力の衝撃波は、竜巻の風のごとく吹き荒れる。

 その風に、キラと銀髪少女以外、全員が倒れされる。

「なぜそう思うのじゃ?」

 魔力の衝撃波にももろともしない銀髪少女は、その状況を楽しむかのように問う。

 漆黒の髪が揺れるなか、キラはその問いに答えない。答えることができない。

 なぜなら、彼女は――


「よもや、世界の一部である神を、本気で消せると思ったのか?」


 まぎれもない、この世界の創世神なのだから。



「ならなぜ……!」

 神、という単語を聞いて固まってしまったレインたちには気づかず、キラはまだ問い詰める。

「神という存在そのものが改造級(チート)なのじゃぞ? 塵ぐらいの細胞でもあれば、再生することは可能ぞ」

 くくくっ、と含み笑いをしながら言い放つマザー。そして続けて、

「まあよい。お主のおかげで妾も目が覚めたことじゃしな。今までの罪滅ぼしとして、条件なしでお主に仕えるぞ」

 浮いていたマザーはそっと地面に降り、キラの目の前に立つと左ひざを立てて頭を垂れた。

 キラは、険しい表情から今度は困り顔に変わる。

「その、キラ?」

「え? あ、ああ、なに? リリィ」

「仮にも、神が頭を下げているのですよ? ですから、信じてあげたらどうです?」

「ぬぅ……仮にも、というのが気に入らんが、一応プライドは高いからのぉ」

 ぎろりとリリィに睨まれたマザーは、それ以上何もいわずにキラを見つめる。

 腕組みをして悩んでいたキラは、ふぅ、とため息をついて、

「……まあ、一年前のことはいつまでも消えないものだけど……そのことをぐちぐち言うつもりはないし。というか、あんまり触れたくないことだし。だから、うん、とりあえず許すよ」

「ではキラは、妾の主となるのだな?」

「んー、そうなるね」

 どこか嬉しそうに尋ねるマザーに、ぽりぽりと頬をかいて答えるキラ。

「では名前をくれ」

「いきなり偉そうに……まあいいや。名前、ね……見た目からして……シルヴィーって言うのはどう?」

「よし、それでいいぞ。契約はこれで終了じゃ」

 満面の笑みを浮かべ、(マザー)ことシルヴィーは、先ほどの不死鳥(フェリ)と同じように小さく縮んでいく。そして、手に載るほどの小さな妖精に。

 ふよふよと浮かびながら、キラの頭に乗る。

「いつもはこうしておるからの。お主は魔力が膨大じゃろうて、さして迷惑なかろう」

 キラの額をぺちぺちたたきながら言った。


「何がなんだかさっぱりなんだが」

 五メートルほど吹き飛ばされたレインは、埃を払いながら立ち上がる。

 わかったのは、キラが怒ったのが使い魔であるという神様が原因ということだけ。あとは何も分からない。

「か、か、か、神様、とか言ってたよね? あの小さいの」

 パクパクと口を閉じ開きしながら、エミリアはシルヴィーをさして顔を青くする。

 アゲハも驚いているようで、めいっぱいに目を開いている。

 そしてミーナはというと、

「さ、さすがです! キラ様!」

 キラ至上主義であるミーナは、いつものごとく発狂してキラのもとへ走っていった。

 それに続くレイン、エミリア、アゲハ。発狂はしていないが。


「ふむ。お主が今代の勇者か」

 場所は変わってアゲハの寮。ベッドにはキラとリリィが寄り添って座り、キラの膝の上にアゲハが乗っかっている。ミーナも、リリィとは反対側にキラの腕に巻きついて座っている。

 そして今。シルヴィーが妖精姿のままで、椅子に腰かけているレインの目の前でふよふよと浮いて、問いただしているところだ。

「ああ。そうだ」

「ふむふむ……」

 シルヴィーは何やら神妙にうなづくと、レインの周りを回り始めた。

「で、お主が巫女と」

「ええ」

 今度はエミリアの周りを回り始める。

「……哀れじゃのう」

「何が?」

「お主ら二人が、じゃ。ちと今回の魔王討伐はややこしいことになっておるかもしれんからの」

 周りを飛び終えたシルヴィーは、最終地点であるキラの頭の上に戻った。

「もしかしたら、お主ら二人が魔王を倒せるほどまでに力をつけた時、魔王はすでにこの世におらんかもしれん」

「なっ……! どういうことだ!」

「さあの。未来だけは、神も操れん。運命は変えられるのじゃがな」

 意味深にため息をつくと、キラの頭の上で横になり、寝始めた。




「さっきのシルヴィーの話だけど、本当だと思うよ」

 ついにはアゲハも寝てしまったので、ベッドにそっと寝かせてから、キラはレインたちに話しかける。

「だから、なんで……!」

「魔界、っていうのは知ってるよね?」

「魔王が治める世界、だっけ?」

 キラの問いに、エミリアが答える。それにキラは大きくうなづき、続ける。

「じゃあ、魔界を創ったのは?」

「それは神様なんじゃ……」

 エミリアもレインも、キラの頭で眠っているシルヴィーを見る。

 キラは首を軽く横に振ると、


「実はそうじゃないんだ。……神が自らの手で作り上げたものに対して、わざわざ害をなすような存在を生み出すと思う?」


 その考えが思いつかなかったのか、二人ははっとした顔をする。だが次には、別の疑問を抱いたのか、怪訝そうな顔をする。

 その理由がわかるキラは、先に答えを言う。



「魔界っていうのは、もともと人間が無意識に作り出したものなんだ」



「どういうことだ? 魔界がなかったら魔獣もいないだろ? だったら魔獣も人間が創りだしたって言うのか?」


「まあ、そういうことになるね。詳しい話は難しいから置いといて、魔界っていうのは、人間の負の感情によって生み出されたんだ。厳密にいえば、生み出された魔界の創世神が創ったんだけど」


 一回、キラはリリィに差し出された紅茶でのどを潤し、また続ける。

「その魔界の創世神は、ほんの一部の間でしか知られていないんだけど、でもその中では『形なき亡霊(ファントム)』って呼ばれてるんだ」

「なんでキラ先生がそんなこと知ってるの?」

「……それが、シルヴィーを殺そうとした理由につながるんだ。けど、ごめん。これだけは言えない。多分、僕と――リリィが墓まで持っていく真実だから」

 苦い顔をするキラに、二人も遠慮を感じたのか気まずそうに居座っている。

 唯一リリィだけが、キラの言う『真実』を知っているのかリリィも顔をゆがませながら、キラの背中を撫でている。

「で、そのファントムが、魔王を“生み出して”いるんだ。自分を生み出した、この世界に住む人間たちに対して、激しい嫌悪感を感じるから。だから、この世界をつぶそうとしている」

「じゃあ、本来、俺みたいな勇者が倒すべき存在は――」



「そう。魔王じゃなくて、『形なき亡霊(ファントム)』」



 初めて明かされた事実に唖然とするレインとエミリア。

 当たり前の反応だ。勇者の対となる存在は魔王。それが常として成り立ち、それが真実だと知れ渡っていたから。



 本当はこの何千年もの間、この真実に気付くべきだった。形なき亡霊(ファントム)の存在にたどり着くまではいかないにしても、その違和感に気付かなければいなかった。

 なぜ魔王を前代と違う存在だと認知させたいのか。なぜ、わざわざその時代の魔王を殺してもっと強力な魔王で世界を壊さないのか。それをなぜ知ろうとしなかったのか。

 人間は、基本弱虫だ。赤ん坊のころから一人で生きれる人間なんて、誰も居やしない。誰かの手によって育てられなければ、到底生きていくことはできない。

 だから、弱虫な人間は、特別な力を持ってやっと倒せる魔王を生み出した存在など、考えたくもないのだ。




「キラ……本当のこと、教えなくてもよかったんですの?」

 あの二人はどうやら整理が追いつかなかったようで、話が終わってからすぐに部屋に戻っていった。キラとリリィも、教師寮に戻り、風呂に入ってベッドに入ってぬくぬくしているところだ。

 腕枕をしてもらっているリリィは、今日の話が気がかりなのか、嬉しそうながらもつらそうな、そんな複雑な表情を浮かべていた。

「……なにが、かな?」

 もそもそと布団の中で動き、キラはリリィの頬を撫でる。

 見つめられながら撫でてもらっていることに感激するリリィだが、やはりそういう気分にはなれないでいる。

「なぜ、『形なき』と呼ばれている所以(ゆえん)ですわ」

 その言葉を聞いて、何も言えなくなるキラ。ぎゅっ、とキラの体に抱きつきながらまだ続ける。

「亡霊というのは、実態がないまでもはっきりと見えるものです。ですけど――」

 いったんそこで言葉を切り、キラの目を見つめて、


形なき亡霊(ファントム)は、負の感情を持つ人間に、憑依するもの。そして――」


 この存在を知ったのは、キラがシルヴィー――(マザー)と呼ばれる創世神と雌雄を決すために戦った後だった。

 その時のキラは、自分の存在理由を見つけるために、そしてこの理不尽な世界の真理を知るために、神に戦いを挑んだ。

 結果、『世界樹(ユグドラシル)』と呼ばれる、マザーが記憶を預ける樹から世界の真理を知り、形なき亡霊(ファントム)の存在を知ったのだ。その、成り立ちも。

 



「今の形なき亡霊(ファントム)は――――



         あなたの親友、なのでしょう?」




 それを聞いた途端、キラのゆるぎない瞳が、揺れる。

 そして、ぎゅっと唇を噛み、泣きそうなのをこらえ、



「それが、あいつの運命(さだめ)だったんだ。でも、それは、僕が変えなきゃいけなかったのに……」



 キラはリリィをぎゅっと抱きしめ、その肩に顔を埋める。


 キラの脳裏にはいまだ鮮明に、残酷なまでに残っている。心が引き裂かれそうなまでの悲鳴も、親友が人間として生きた最期の瞬間も、すべて。




「キラは、キラには悲しい夢が多すぎます」



 

 リリィは、愛する夫の顔が苦痛にゆがむのを見て、泣く子供をあやすように抱きしめた


 そうして、二人はそれ以上何もいわずに眠りについた。






「悲しいものよのう……運命というのは」



 二人が悲しみに暮れて眠りについた後、シルヴィーはこっそりと二人を中で見ていた。


 思い出すのは、ぼろぼろになりながらも自分に立ち向かってきたキラ。そして、自らの運命を断ち切るために、形なき亡霊(ファントム)に最期の最期まであらがったキラの親友――シン・ファミリア。


「本当は、変えられたはずじゃのにな……」


 ジルヴィーは、すべての神だ。シンに憑こうとした形なき亡霊(ファントム)をも、消し去れるはずだった。

 だがそれは、世界が、何よりシルヴィーが許さなかった。見初められたシンでなければ、暴れ始めた形なき亡霊(ファントム)を止めることができなかった。


 そうでなければ、世界が壊れてしまうから。


 形なき亡霊(ファントム)は、代々人間の体を奪い去って自らの野望を果たす。それをシルヴィーが認めるわけにはいかなかったが、生身の体を持たない、いわゆる思念体の形なき亡霊(ファントム)には何も効かず、結果生身の体を持ってからでないと倒せなくなった。

 持ってからでも、何かしら神と同じ強力な能力を持っている。面倒なことに、シルヴィーと同じように塵からでも再生できる能力も。

「ふぅ……形なき亡霊(ファントム)のこともそうじゃが、グノーシスのことも面倒じゃの」

 関連は全くと言っていいほどないグノーシスだが、世界の終末(ラグナロク)を完遂させようとしているところを見れば、厄介さは同じ。

 おそらく、魔王が世界征服するに乗じて、終焉の魔獣(ドラゴン)を一斉召喚するともりだ。

 これも、創世神として許すことはできないことだが、


「厄介さでいえば、妾が手を出せぬことから、グノーシスのほうが上か」


 神は、今動いている世界には、干渉することができない。形なき亡霊(ファントム)は、魔界の創世神にあたることから、シルヴィーでも何とかすることができるのだ。

「魔王が勇者(レイン)形なき亡霊(ファントム)が妾とキラ、グノーシスがキラとリリィ……キラにとって、これからはちと厳しい戦いが待っておるの」

 負担が大きいキラを心配し、シルヴィーは自分専用に作っておいた小さなベッドにもぐっていった。



 ども。少し今回は量が少なかったですよね? 次は頑張りますので。


 では、宣伝を。僕が最近書き始めた二作目、その名も『リアルワールド』……ひねりがないですよね……をよろしくお願いします。内容を言えば、超能力のような異世界物語です。……パクリとか言われそうで怖いですけど。パクリではないのでこの『リアルワールド』、興味があったら読んでみてください。


 それでは、これからもよろしくお願いします。

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