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9 それぞれの成長に向けて1


 二人の想いに触れ、そのことで悶々と思い悩んでいるうちに、俺はいつの間にか眠っていたらしい。


 気が付くと、白いモヤの中にいた。


 ん、どこだここは……?


 屋敷の中じゃなさそうだけど――。


「久しぶりだな」


 そのモヤの向こうから誰かが歩いてきた。


「お前……!」


 銀髪の美しい少年――レイヴン・ドラクセル。


 つまり、俺だ。


 正確には俺の中に眠る『本来の』レイヴンと言うべきか。


「……どういうことだ? お前から俺を呼び出すなんて」


 俺は『レイヴン・ドラクセル』と向き合っていた。


 ここは俺の精神の世界だろうか。


 けれど、こいつと出会うことができるのは、以前に使った『精神を鍛える魔道具』で精神世界に入ったときだけだと思っていたんだけど――。


「ここはお前の夢の中さ。前に俺たちが出会った精神世界に近しい空間だ。いつもこうして会えるわけじゃないが、今回は上手く同調できたようだ」


 と、レイヴン。


「お前に警告したくて来たんだ」

「警告?」

「いいか、もう一人の俺。お前は――さらなる力を身に着ける必要がある」


 レイヴンが言った。


 その表情は険しい。


「戦いは……シナリオは、新たな局面に入った。お前の破滅ルートは進行を始めたんだ」

「ち、ちょっと待て。話についていけないんだが」


 俺はレイヴンの言葉にツッコミを入れた。


「さっきから何の話をしているんだ」

「マルスの話さ」


 レイヴンは忌々しそうに言った。


「奴は、お前の今後の運命のカギを握る存在だ」

「……分かってる」


 俺はうなずいた。


「けど、俺は奴と敵対する気はないし、そもそも俺たちは友だちに――」

「主人公と悪役の間に本当の友情が築けると思うのか?」


 レイヴンが言った。


「っ……!」


 俺は二の句を継げなかった。


 それは――心の片隅では分かっていたことだった。


 分かっていながら、俺はきっと目を背け続けてきたんだ。


 だって、あいつは……生まれて初めての、うわべじゃない友だちだったから。


 前世では、こんな関係を築いたことがなくて。


 だからこそ、本当に心地よくて。


 俺にとって、いつしかマルスはかけがえのない存在になっていたんだと思う。


 そして、それはマルスにとっても同じだったらいいな、って――ずっと思っていた。


 真に心の通じ合った友になれたら、って。


 それは俺が破滅したくないから言っているわけじゃない。


 あいつが俺の破滅の運命を握る相手だから言っているわけじゃない。


 本当に、純粋に――あいつと友だちになりたかったんだ。


 友だちのままでいたかったんだ。


 敵になんて、なりたくないんだ――。


「まさかお前……これで自分は安全だ、なんて思っちゃいないだろうな?」


 レイヴンが笑う。


「お前自身の破滅の運命。そして魔王レスティアによる世界の破滅……危機なんて一つも去ってないんだぜ?」

「……別に安心しているわけじゃない」


 言いながらも、俺は心の片隅でハッとしていた。


 確かに――レイヴンの言う通りかもしれない。


 俺はマルスに勝ったことで、心のどこかで気を緩めていたかもしれない。


 けれど、こいつの言うとおりだ。


 まだ何一つ、俺は解決していない。


 何も前に進んでいない。


 むしろ、これから進めなきゃいけないんだ。


「だからこそ、俺が出てきたんだ」

「レイヴン……?」

「お前には、さらなる力を手にしてもらう。主人公ですら瞬殺できる力――それがお前のこれからの課題だ」

「瞬殺……」


 俺はゴクリと息を飲んだ。


 確かに俺は決勝戦でマルスに勝ったけど、余裕の圧勝というわけじゃない。


『主人公』としての最強の潜在能力を秘めているマルスは、今後もっと強くなるだろうし、そのときに俺は対抗できるだろうか?


 もちろん、戦わないのが一番だけれど。

 戦いたくはないけれど。


 いつか、マルスと戦う運命になることは、常に考えておかなくちゃいけない――。


「そう、瞬殺だ。それくらいじゃないと、今後のマルスとの再戦やレスティアとの決戦には耐えられないぜ?」

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忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


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