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6 マチルダ

 その日はマチルダが俺の家を訪ねてきて、俺たちは軽食の後、中庭の散策スペースを歩いていた。


「ねえ、レイヴン。あたしたちって婚約者よね?」

「えっ? ああ、そうだけど……」


 正直、たまに忘れそうになる。


 こうして会っていても、マチルダはあくまでも友人という感覚だ。


 それにゲーム本編だと彼女は主人公のマルスとくっつくんだよな。


 もしかしたら、いつかこの世界のマチルダも俺とは致命的な決裂をして去っていくんだろうか?


「あたし、最初のころはあんたが嫌いだった。前にも言ったわよね?」

「ああ」


 彼女は手厳しい。


 けれど、それは彼女のまっすぐさの現れでもある。


 どこまでもストレートな彼女のことを、俺は好感を持って接していた。


 良い友だちだと思っている。


「あらためて謝りたいと思って」

「ん?」

「無礼なことを言ってごめんなさい」


 マチルダが深々と頭を下げた。


 普段の彼女らしからぬ、しおらしい態度だった。


「どうしたんだよ、急に」


 俺は戸惑いを隠せず、目をしばたかせる。


「けじめよ」


 顔を上げたマチルダが言った。


「けじめ?」

「あたしに対して、レイヴンが嫌な思いを抱いたり、何かネガティブな感情を抱いているかもしれない。それはあたしの過去の態度と発言のせいかもしれない。そこを少しでも償って、少しでも……気持ちをフラットにできたら、って」


 マチルダが俺をまっすぐに見つめる。


「マチルダ……?」

「ねえ、レイヴンはあたしとの婚約をどう思ってるの?」

「えっ」

「将来、あたしと結婚してくれるの?」


 ずいっと身を乗り出してくるマチルダ。


「い、いや、その……っていうか、マチルダは俺との結婚を嫌がってるんだろ? なら――」

「嫌がってない」


 マチルダは俺の言葉をさえぎった。


「昔は嫌だった。嫌で嫌でたまらなかった。ちゃんと自分で好きな相手を見つけて結婚したい、って夢見てた」

「マチルダ……」

「だから、今はもう――嫌じゃないの」


 マチルダがさらに近づく。


「どういう意味か、分かるわよね?」

「え、えっと……」


 さすがにここまで来たら、俺も薄々感づいている。


 いや、本当はもっと前から意識の片隅では気づいていたのかもしれない。


 けれど、俺は底から目をそらしていたんだ。


 怖かったのかもしれない。


 今の関係が崩れるのが。


 それに――俺は前世では恋愛経験なんてないに等しい。


 根本的に、どうすればいいか分からないのだ。


 俺には、恋愛の経験値があまりにもなさすぎる――。

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忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


― 新着の感想 ―
主人公に圧倒的な力の差を見せつけられて闇堕ちするなら分かるが、あれだけ文字数かけて描いた決勝戦が無駄になるようなマルスの変心だよね。
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