5 育ち始める闇
(結局、君は僕を下に見ているだけじゃないのか、レイヴン……!)
彼の人格に触れれば触れるほど、劣等感が刺激されていく。
その劣等感を、今のマルスは払拭したいと願っているのだった。
「……変なことを言って悪かったね。で、話したいことというのは?」
マルスは気を取り直し、話を元に戻した。
「ああ、さっきも言った進路のことなんだけど――」
レイヴンはマルスを見つめた。
「俺、魔法師団に誘われたんだ」
その言葉に、マルスは絶句した。
「それって……世界最強の魔術師集団にスカウトされた、ってことじゃないか。それも団長直々に……!」
体の震えが止まらない。
レイヴンはすでに世界最高レベルの魔術師の一人だと認識されているということだ。
だからこそ魔法師団が誘いに来たのだ。
彼の才能をもってすれば、近いうちに世界一の魔術師と言う称号を得るのも難しくはないだろう。
まだ学生だというのに――。
一方のマルスは、学内トーナメントで決勝戦まで勝ち残ったとはいえ、『しょせん学生レベル』の域を出ていないだろう。
少なくとも世間はそう評価するはずだ。
(どんどん差が開いていく……くそ……っ!)
悔しさ。
怒り。
屈辱。
羨望。
そして――抑えきれない嫉妬。
いくつもの気持ちがマルスの中で荒れ狂っていた。
「マルス……?」
レイヴンは不思議そうにこちらを見ている。
今、マルスが感じているドロドロとした気持ちを、彼は想像すらしていないだろう。
(それこそが――お前が僕を見下している何よりの証拠なんだ、レイヴン)
「君にはもう……僕なんて必要ないだろ」
「マルス……!?」
「おめでとう、レイヴン。だけど僕も必ず追いついて――いや追い越してみせるよ」
言いながら、声がどうしようもなく震えるのを感じた。
負けないからな。
お前を必ず倒す。
マルスの内側には暗い炎が燃え盛っていた。
レイヴンと話し、彼の今後に輝かしい未来が待っているのだと知ったことで、さらにその炎は燃え盛っていた――。
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