9 決勝戦、決着!
「これ以上、魔力が減る前に――」
マルスが突進した。
これまでのように【魔弾】を連発するのではなく、接近戦狙いに切り替えたようだ。
この試合の序盤にマルスと接近戦をしたが、分があるのは奴の方だった。
【身体強化】の効果自体は俺の方が上でも、奴の方が体術では上回っているからだ。
しかも、今のマルスは序盤よりも魔力がはるかに増している。
いくら目減りしてきているとはいえ、総合的に考えて、接近戦になれば俺に勝ち目はないだろう。
「決着と行こうか、レイヴンくん!」
マルスが肉薄する。
「おおおおおおっ……!」
何重にもフェイントをかけながら、奴が距離を詰めてくる。
俺は奴を上回るスピードで遠ざかろうとするが、巧みに距離を詰められた。
そして、ついに接近戦の間合いになる。
「終わらせる――!」
マルスは両手に魔力の剣を生み出し、稲妻のような連撃を放った。
速い!
受けきれず、胸元を切り裂かれる俺。
「これで君のライフをかなり削ったはずだ! さあ、もう一撃!」
マルスが魔力剣による二刀流の攻撃を矢継ぎ早に繰り出した。
俺のライフを一気にゼロにするつもりだ。
「はあああああああああああああああっ!」
残りすべての魔力を振り絞るような連続攻撃。
やがて、それらが一段落ついた瞬間、俺の姿は奴の前から消え失せた。
「えっ……!?」
マルスが呆然とした顔になる。
「ど、どうして……」
「お前が攻撃していたのは、俺じゃない。何もない空間を、『そこに俺がいる』と認識して攻撃していただけだ」
俺はマルスの背後に立ち、言った。
「どういう……ことだ……!?」
「特定の条件下で、俺は【認識阻害】という固有魔法を使えるんだ」
俺は淡々と説明した。
「一日に一度だけ、という条件もあるし、かなり使いづらい魔法だけど――な」
かつて高位魔族バームゲイルと戦ったときにも使った魔法だった。
簡単に言えば、今のは催眠や幻覚に似た効果をマルスに与えたわけだ。
そして、それに気づかずマルスは全力の攻撃を続けた。
自らの魔力が一気に目減りしていくことも気にかけずに。
「随分と魔力が減ったな。もう俺の【身体強化】についてこられないだろ?」
「くっ……!」
マルスが剣を振り回すが、その動きは遅く、フェイントにも全く切れがない。
俺は余裕で見切ると、
「終わりだ」
素早く距離を詰め、マルスの首筋に魔力剣を押し当てた。
「ぐっ……」
マルスが悔しげに顔を歪めるのが分かった。
俺の、勝ちだ――。
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