19 決勝戦が、ついに始まる
「以前、君と一緒に戦ったことがあったね。あれは……夏休みのことだった」
マルスがふいに遠い目になった。
「懐かしいな。あれからまだ二か月くらいしか経ってないのに、随分と昔のことみたいに思える」
俺は当時のことを思い、感慨にふけった。
そう、それは夏休みの出来事だった。
俺はキサラやマチルダと一緒に海水浴に来たんだけど、そこでマルスと出くわした。
で、海水浴場の近くにあった古代遺跡に、なぜかマルスと一緒に転移してしまったんだ。
「あれから随分時間が経った気がする」
「あのとき、君と一緒に戦って、君の力を間近で見て――すごいと思ったよ。僕にはとても敵わない、って」
マルスが言った。
確かに、客観的に見て、あのころの俺とマルスには大きな力の差があったと思う。
ただ、マルスに成長性はゲーム中でも随一だ。
あれからしばらくの時間が経ち、こいつはもっと強くなっているだろう。
「君は、強い。でも、その強さの中に『ある違和感』を覚えたんだ」
「えっ……?」
「君の背後に――なぜか【闇】が見える」
マルスが俺をジッと見つめる。
「今までずっと言えなかったけど、戦う前に言っておくよ。君から、何か禍々しいものを感じる。それが君の力の源泉なんじゃないか、って」
「っ……!」
俺は思わず息を飲んだ。
俺が宿す【闇】――。
それはもしかしたら、俺の精神に潜む【本来のレイヴン】のことだろうか。
奴がいる限り、俺はいつか『悪役』になってしまう……?
あるいは、かつて俺に接触してきた【神】に操られ、『悪役』としてこの世界に君臨する……?
「俺は、俺だ。ただ平穏に生き、正しい道を歩むことだけを望む――ただのレイヴン・ドラクセルだよ」
俺はマルスを見据えた。
「だから俺は――『俺の力』でお前に勝つ」
「正しい道を歩んでいきたいのは、僕も同じさ」
マルスが微笑む。
「今日の決勝戦で、僕は君の力の本質を確かめる。いや、君という人間を確かめる」
「なら、見せてやるよ。俺の今の力と、そのすべてを――」
そして。
俺たちの決勝戦が、ついに始まる。
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