4 転校生
「セレン・ディ・フルーレです。よろしくお願いします」
転校生がやって来た。
白い髪に白い肌、赤い瞳――。
ゲーム内ではこんなキャラ見たことないぞ。
かといって、モブとは思えない存在感があった。
そもそも……ゲームには転校生のイベントなんてなかったな。
本来のシナリオでは現れないキャラクター、か。
「じゃあ、セレンの席は……レイヴンの隣だ」
と、教官が言った。
「えっ」
確かに俺の左隣はちょうど空席だったけど――。
「あなたが学園ランキング3位のレイヴンくん? よろしくだねっ」
セレンが明るく笑って話しかけてきた。
「えっ、ランキング3位?」
「ご存じなかったんですか、レイヴン様!?」
キサラが横から入ってきた。
「夏休み明けにすぐ発表されていたので、てっきり把握済みかと……」
ちなみに彼女の席は俺のすぐ後ろだ。
「ふーん、そういうの無頓着なんだね?」
セレンがクスクス笑う。
「まあ、夏休みも色々あったからな」
俺は苦笑交じりに言った。
そう、夏休みの間にいくつか事件があったのだ。
その辺はおいおい語るかもしれないが……そのことが頭の中を占めていて、ランキングのことを完全に失念していたのだった。
「3位か……2位と1位って誰なんだ?」
「1位は『帝王』ブライ・ザック先輩、2位が『雷光姫』アリサ・ディルブレイク先輩、この二人はランキング変わらず……3位にレイヴン様が急上昇で食い込んできてますよ」
と、キサラ。
「なるほど……俺、決勝まで行ったけど、途中敗退の二人より下なんだな」
「ランキングは学内トーナメント以外にも直近一年間の授業の模擬戦とか演習とかの成績も加味されるので」
キサラが説明する。
「私たち一年生はまだ授業も数カ月しか受けてませんし、一年間の成績すべてが加味される上級生に比べると、ランキング上はどうしても不利になります……というか、むしろ夏休み明けでもう3位まで上がっているレイヴン様がすごすぎるだけなので」
「ふーん……じゃあ、マルスは?」
「マルスさんは……確か20位前後だったと思います」
「どうせなら、あいつとワンツーフィニッシュ決めたかったな……ま、それはこれからの目標にするか」
言って、俺はふと気づく。
いつの間にかすっかり魔法学園の生徒としての生活が馴染んでしまっていることに――。





