表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/144

14 もうすぐ夏休み


 俺とマルスの決勝戦――。

 その前に、夏休みがある。


「少しリフレッシュするのもいいかもな」


 俺は気持ちを浮き立たせていた。


 マルスと別れると、今度はキサラがやって来た。


「さすがレイヴン様です。一年生で学内トーナメント決勝戦まで進出するなんて」


 キサラは目をウルウルさせていた。


「ほんの一年と少し前までは、まったく努力せず、他人を見下すばかりで性格最悪で行く末がすごく心配でしたが……」

「けっこう容赦ないな、キサラ」

「はっ、つい本音が!?」

「別に本音で話していいよ」


 ハッとしたように口元を押さえるキサラに俺は苦笑した。


「確かに俺は自分の才能にうぬぼれて努力してこなかったんだろう。けど、それじゃダメだって知ったから――」


 生き延びるために。

 運命を変えるために。


 俺は努力を始めた。


 もともと超天才だったレイヴンの能力は、俺が始めた努力によってみるみる開花した。


 今の俺なら――本来のシナリオなら『勝てない相手』であるマルスに勝てるんだろうか?


「私はあなたの努力を一番間近で見てきました。ただ強くなるために、ひたむきに頑張るあなたを」


 キサラが俺を見つめ、微笑む。


「恵まれた才能に溺れることなく、さらなる高みを目指すレイヴン様を――そんなあなたを尊敬しているんです。そんなあなたを追いかけて、私も魔法学園に入ることにしたんです」

「キサラ……?」

「私にはレイヴン様のようなずば抜けた才能はありません。それでも強くなるために努力することはできます。あなたのように」


 キサラの声に熱がこもった。


「私は……これまで日々を生きるだけで精いっぱいでした。獣人奴隷として……前の家ではあまりいい目に遭わなくて……それをドラクセル家に拾っていただいて。その恩に報いるために必死で仕事して……」


 ……キサラって、そんな過去があったのか。


 ゲームじゃ語られなかった背景だ。


 裏設定として存在しているのか、それともこの世界独自のものなのかは分からないけれど――。


「でも、毎日の仕事をこなすだけの日々じゃなく……私もレイヴン様のように、ひたむきに追いかけるものが欲しかったのかもしれません」

「キサラだってがんばってるよ」


 俺はにっこり笑った。


「ひたむきに追いかけるものが欲しい、って言うなら――もう君は手に入れてるんじゃないのか、そいつを」

「そうだと……いいですね。レイヴン様ほど努力できてませんけど」


 俺の言葉にキサラは照れたように頬を染めた。


 照れたように狐耳がくにゃっと折れ曲がる。


 やっぱり可愛い。


「……というか、モフモフしたいぞ」

「えっ」

「えっ」


 あ、しまった、つい口に出していた――!


「も、もう、どうしたんですか、急に……」

「い、いや、あんまり可愛いから」

「えっ? ええっ?」


 俺の言葉にキサラは真っ赤になった。


 だって可愛いよな、キサラのモフ耳。


「可愛い……私が可愛い……えへへへ、そ、そこまで言ってくださるなら……い、いいですよ? 恥ずかしいので、ちょっとだけですけど……」


 キサラが俺に頭を向ける。


 ぴょこぴょこと狐耳が可愛らしく揺れている。


 う、うおおおおおっ!


 俺は急に萌え心マックスになり、彼女の狐耳をモフモフさせてもらったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して
★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!


▼書籍版2巻がKADOKAWAエンターブレイン様から6/30発売です! 全編書き下ろしとなっておりますので、ぜひ!(画像クリックで公式ページに飛べます)▼



ifc7gdbwfoad8i8e1wlug9akh561_vc1_1d1_1xq_1e3fq.jpg

▼カクヨムでの新作です! ★やフォローで応援いただけると嬉しいです~!▼

忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ