10 準決勝第2試合
「気に食わねぇ野郎だ」
ブライが俺をにらんだ。
「まあいい。決勝でお前をぶちのめす。その前に、まずはお前のお友だちからだ。よく見ているといい」
「ええ、見させてもらいますよ。あなたの伝説が終わるところを」
俺はブライを見つめた。
「……ちっ」
学園の帝王は舌打ち交じりに去っていく。
入れ替わるように、今度はマルスが歩いてきた。
「よう。決勝で待ってるからな」
俺はにっこり笑った。
「うん。約束の場所まであと一つ――」
マルスも気合いが入っているようだ。
相手が学園の帝王でも気後れしていない。
「……勝てるかなぁ、僕」
あ、意外と自信失くしてた。
「大丈夫だって。お前は一戦一戦強くなってる」
主人公としての力を信じろ。
俺は内心で呼びかけた。
二十分後、準決勝第二試合が始まった。
『主人公』マルス・ボードウィンVS『帝王』ブライ・ザック――。
これがゲームなら最高に盛り上がる試合だろう。
というか、この『現実』でも普通に盛り上がっていた。
生徒たちは誰もが息を飲んで見守っている。
「雑魚が……来いよ」
ブライが嘲笑した。
一方のマルスは無言だ。
よく見ると、顔が青ざめていた。
あいつ、緊張しているのか――。
「がんばれ、マルス!」
俺は反射的に声援を送っていた。
と、マルスの視線がこちらを向く。
こくん、と小さくうなずく。
「あいつ――」
緊張していると思ったけど、意外と集中しているな。
「……がんばれ」
今度は小さくつぶやいた。
あいつの集中を乱さないように。
あらためて、対戦を注視する。
しばらくの間、両者は動かず。
やがて、
「来ないなら俺様からいくぜぇ……【爆裂魔弾】!」
ブライが魔力弾を放った。
強大な魔力がこもった一撃。
さすがに帝王と呼ばれるだけのことはある。
その魔力量は俺やレスティアを除けば、間違いなく学園最強最大――。
……いや。
「最強最大だった、が正しいか」
ごうっ!
マルスの全身から魔力のオーラが立ち上る。
本当に一戦一戦、あいつは成長しているんだな。
俺は感慨深くそれを見つめていた。
マルスが放った魔力のオーラは――。
すでに『帝王』ブライに匹敵するほど巨大だ。





