4 VS『魔剣士』ファービィ
「ラーミアに勝ったからっていい気にならないことだね。彼女は四天王の中で最弱――」
学内トーナメント五回戦。
今日の俺の相手は四天王の一人にして『魔剣士』ファービィだ。
「君はあたしには勝てない」
「じゃあ、試してみるか」
ボウッ!
俺の手に炎が生まれる。
「強大な魔力を収束し、大火力魔法を放つ――一撃必殺が君の身上だろ? だけど――」
しゅんっ。
ファービィの姿が消えた。
「速い――」
「あたしは【フィジカルブースト】によって学園最強の身体能力を得られる。君の攻撃魔法なんて当たらないよ」
そのまま複雑なフェイントをかけながら突進してくる。
なるほど、確かに身体能力じゃ敵わないな。
「君にあたしの動きは捉えられない。あたしの斬撃を見切ることもできない。だからこれで終わりっ!」
振り下ろされる魔力剣。
がきいん。
「確かに反応も見切りも無理だ」
俺はニヤリと笑った。
「だから、とりあえず全方位に【シールド】を張って、防ぐことにした」
「なっ、この防御結界はラーミアより――」
「今日から俺が学園一の防御魔法の使い手でも名乗るか」
冗談めかして告げる俺。
「このっ……! 【ラッシュブレード】!」
ファービィが魔力剣での斬撃を矢継ぎ早に繰り出した。
連続攻撃の近接魔法か。
だが、無駄だ。
がきがきがきがきがき……がきいん。
金属音が連続して響き渡る中、彼女の攻撃は俺の【シールド】に傷一つ付けられない。
「そんな……最上級の【シールド】すら切り裂くあたしの魔力斬撃が――」
「【シールド】の硬さは魔力量で決まる。魔力剣の切れ味も同じく魔力量で決まる。要は」
俺はファービィをまっすぐ見つめた。
「君の魔力は俺の足元にも及ばない。それだけの事実さ」
「このぉぉぉぉぉぉぉっ!」
ファービィが怒りの声とともに斬りかかる。
「【シールド・変性】【リアクト】」
俺はそこで呪文の性質を変更した。
『防御』から『反射』へ。
防御力は多少落ちるが、こいつは相手の攻撃をそっくりそのまま返すことができる。
「ひあぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
自分の攻撃をそのまま跳ね返されたファービィは一気にライフをゼロにした。
「ううう……負けた……」
「さすがに攻撃力が高いな。だからこそ、自分自身に食らったときに、ライフを全部持っていかれたわけだが」
俺は小さく笑った。
俺の、勝ちだ。
「がんばれよ、マルス。次はお前だな」
「ありがとう、レイヴンくん」
俺と入れ替わりでマルスが闘技場に入る。
「さて、と」
俺はマルスの試合を見守ることにした。
正直、自分の試合よりよっぽど緊張する。





