3 友だちの距離感
さて、と。
他にも知り合いが出ている試合があるから、次はそれを見に行こうかな。
マチルダと別れた俺は別の闘技場まで移動していた。
「レイヴンくん!」
と、マルスが駆け寄ってきた。
「マルス、お前は次に試合があるんだろ?」
「ん? もう終わったよ?」
「何……?」
「バルカンくんとの試合だったけど、1分くらいで終わった」
マルスがあっけらかんと言った。
「僕の勝ちだ」
「へえ……」
以前に因縁をつけられた相手、バルカンとマルスの戦いには俺も注目していたんだけど――。
まさかの圧勝とは。
「バルカンくんとは一度戦ってるからね。自信がついたのかもしれない」
マルスが微笑んだ。
「あのときは君が助けてくれたね。ありがとう」
「いや、何」
俺は照れてしまった。
「マチルダは……負けちゃったよ」
「……そっか。やっぱり四天王の壁は厚いね」
「ああ。知り合いで残ってるのは俺とお前、それから――レスティアくらいだな」
俺は試合結果を思い出しながら言った。
レスティアはさすがに魔王の化身というか、卒なく勝ち進んでいる。
あいつとも試合で当たることがあるだろうか?
「がんばらないとな。俺も、お前も。負けた人間の分まで」
「だね」
力強くうなずくマルス。
「そういえば――」
ふと何かに気づいたように俺を見つめる。
「ん?」
「僕のこと『お前』って呼ぶようになったね」
「えっ」
「ほら、最初は『君』って呼んでたじゃないか」
「ああ、そういえば――」
確かに、そうだ。
いつからか……たぶん以前にマルスの試合を見て、必死で声援を送ったときだな。
「よくそんなことに気づくな、お前……あ、いや、『君』って呼んだ方がいいか?」
俺は苦笑した。
マルスも首を横に振り、
「『お前』でいいよ」
微笑んだ。
「君との距離が縮まったみたいで嬉しい」
俺とマルスは校庭に移動した。
特に理由はない。
ただ、なんとなく――とりとめもないことを話したかっただけだ。
キサラやマチルダたちと話すときとは違う、同性の友人同士の会話を。
「レイヴンくんは相変わらず秒殺が続いてるね。さすがだよ」
マルスが言った。
「四天王相手にも一分以内で試合を決めるなんて」
「まあ、さすがに他の生徒たちよりは強かったよ、四天王は」
俺は言った。
「それに、まだ一人倒しただけだ……と、四天王と言えば、お前も準決勝まで行けば当たるよな?」
「……うん。四天王筆頭。帝王ブライさんとね」
マルスの表情が引き締まった。





