1 トーナメントは四回戦に入る
学内トーナメントは佳境に入っていた。
強い者が勝ち上がり、勝ち上がった者同士でより強い者が上にいく。
そうして、より強く、より強く――本物の強者だけが残っていく。
当然、その過程で敗者が生まれていくわけで……。
三回戦で、早くもキサラが敗れた。
相手はランキングでは格下だったけど、必ずしもランキング上位が勝つとは限らない。
負けた後、キサラは残念そうな顔をして、家に帰ってからは珍しく落ち込んでいた。
「キサラ、残念だったな……」
「落ち着いていけば勝てたと思うんですけど……詰めの段階で焦ってしまいました……」
キサラはショボンとしている。
「全部、私の未熟さが招いた結果です」
「また、がんばろう。俺もがんばるからさ」
「レイヴン様はまだ勝ち残ってますもの。このまま優勝してくださいね」
キサラが微笑んだ。
「私、応援していますから」
「ありがとう。君の分までがんばるよ」
「ええ、ぜひ!」
やっとキサラが笑顔になってくれた。
「あの……」
「ん?」
「励ましてくださって、ありがとうございます」
「当たり前だろ。俺にとってキサラは大事な家族なんだから」
「っ……!」
キサラが顔を赤くした。
照れたんだろうか。
というか、俺もさっきの台詞はちょっと照れ臭かった。
学内トーナメント4回戦。
ここまですべて秒殺で進んだ俺の対戦相手は――学内ランキング4位、『白銀結界』のラーミア・シェルだ。
「噂のスーパールーキーくんと対戦できるなんて光栄ね」
ラーミアは銀髪ショートヘアの美しい少女だ。
クールな印象で静かに俺を見詰めている。
『白銀結界』という二つ名が示す通り、得意とするのは結界魔法。
その防御力は学内最高とも言われている。
「私の結界は誰にも破れない」
「ふうん」
俺は魔力を高めた。
「始め!」
試合開始の合図とともに右手を突き出し、
「【竜王火炎砲】!」
全力の火炎魔法を放つ。
「【銀の結界】」
ラーミアが体の前面に白銀色をした円形の盾を生み出した。
学内最高の防御結界――。
ばしゅんっ!
それを一撃で燃やし尽くし、そのままラーミアを直撃する俺の火炎魔法。
「ひ、ひいっ……!?」
赤い炎に飲み込まれながらも、闘技場全体を覆う防御結界のおかげでラーミアがダメージを負うことはない。
ただし、彼女のライフポイントは一瞬でゼロになった。
「し、勝者、レイヴン・ドラクセル!」
教官が驚いた様子で俺の勝利を宣告する。
四天王が相手でも、俺の試合は変わらず秒殺勝利だった。
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