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10 俺の提案


「ふうん。あたしの誘いを断るんだ?」


 レスティアが俺を見つめる。


 ゾクリと背筋が粟立った。


 少なくとも現時点で、俺は魔王には勝てない。


 とはいえ、このまま努力を重ねていけば、いずれ魔王すら超える力を得られるかもしれない。


 それほどまでに『レイヴン・ドラクセル』の潜在能力は圧倒的だ。


 ゲーム内でこいつが魔王より弱いのは、あくまでも『まったく努力をしない』のが理由だからな。


 今の俺みたいに魔法の修行に打ち込んだ場合、俺と魔王との力関係は逆転するかもしれない。


 ただ、今の段階では奴が上。


 だから立ち回りに気を付けなければ、すぐに殺されるかもしれない。


「だったら、どうする? 俺を殺すか?」

「殺す? 君を? まさか」


 レスティアが笑った。


「そんな勿体ないことしないよ」

「俺がお前と戦う側に回ると言っても、か?」

「うーん……それはちょっと困りものだね」


 レスティアが口をへの字にした。


「なら、こういうのはどうだ――」


 俺は取り引きを持ちかけることにした。


 最初から、こういう流れにしたかったのだ。


 だから最初に、あえて『魔王と戦う』と強気の態度を取ってみせた。


 後々、俺から譲歩を示し、同時に相手の譲歩を引き出すために。


 腹の探り合いは苦手だけど、生き残るためにはそんなことは言っていられない。


「俺もお前も互いに干渉しない、ってのは」

「ん?」

「魔王軍はこの世界を侵略するつもりなんだろう? 俺はそれに関与しない。自分から戦うことをしない」

「……世界を見捨てる気?」

「まあ、そうだな」


 俺はニヤリと笑った。


 まさに『悪役』そのものの顔で。


「じゃあ、あたしたちが世界を滅ぼしたら、君はどうするの?」

「そのときは魔王軍の末席にでも加えてもらうさ。俺の力を欲しいだろう?」


 俺はレスティアを見つめた。


「何せお前の目的は人間界だけじゃない。いずれは神の世界も侵略するつもりだ」

「……へえ」


 レスティアの表情から笑みが消えた。


「何か情報を握っているの、君?」

「ただの推測だ」


 ごまかしたが、本当はもちろん違う。


 ゲーム内の設定を知っているからこそ、俺は『魔王が人間界だけじゃなく神の世界にも攻め入ろうとしている』という事実を言い当てられただけだ。


「逆に勇者がお前を滅ぼしても、俺は何もしない。いや、戦いの行方が決定的になったら、勇者側に付いてお前を殺すかもしれない」

「……つまり、魔王軍にも人間側にも積極的に味方しない、ってことね」

「そうだ。けど、それだけでお前にはメリットがあるだろう? なにせ俺という『人間側で最強レベルの敵』と戦わずに済むんだから」


 俺は肩をすくめた。


「その代わり、お前も俺に手を出すな。わざわざ魔王と正面からやり合いたいとは思わないからな」

「君も魔王と戦うリスクを冒さずに済む、ってわけだ」

「そういうこと。お互いに戦えば無事じゃ済まないんだから、不可侵条約を結びたいわけさ」


 これは――きっと『悪役』らしい提案だと思う。

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忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


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