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6 友か、敵か

「僕も尊敬しているよ……君は、僕の憧れなんだ」


 マルスが俺を見つめる。


 胸の奥が震えるような感動がこみ上げた。


 こんな風に誰かに言われることなんて――俺の前世では一度もなかった。


 あり得なかった。


 この転生先の世界で、俺は互いに敬意を払える本当の友人を得られたのか。


 ――だけど。


 俺はいつか、こいつに殺される。


 こいつがゲーム世界の主人公である限り。


 俺がゲーム世界の悪役である限り。


 俺たちの進む道は一時は交わるかもしれないけど、きっと最後には決裂するんだ。


 それが悲しく……同時に恐ろしかった。


「じゃあ、俺はそろそろ行くよ」

「あ、あの……本当にありがとう、レイヴンくん!」


 背を向けた俺に、マルスが声をかけた。


「決勝で戦えたらいいね」

「マルス……?」

「実力者の君はともかく、僕なんかじゃ一回戦で負けるかもしれないけど……でも君と戦うことを目標にがんばるよ」


 マルスが熱を込めて言った。


「もしも……もしも決勝まで行けたら、勝負の場で君と向かい合えたら……対等に向かい合えたら、本当の意味で君と友だちになれる気がする」

「マルス――」

「僕はそうなりたいんだ。君に、友だちとして認めてほしい。だから、がんばるよ……それじゃ!」


 言って、マルスが去っていく。


 友だちになる……か。


 もともとはマルスに殺されないことを目標に頑張ってきて、できれば彼が強くならないように、覚醒しないように……と立ち回ってきて。


 けれど今、俺の気持ちは乱れていた。


 自分の中に、あいつを応援する気持ちが芽生えているのを――否定できない。


「俺は、どうするべきなんだろう……」


 迷いが、生じていた。




 そんな迷いを抱えながらも、学内トーナメントは進む。


 その日は、二回戦が行われる日だ。


「【光弾(こうだん)】」


 俺は魔力弾一発で、対戦相手のライフを根こそぎ吹き飛ばした。


 ちなみに【光弾】は【魔弾】と同系統の魔力弾発射魔法だ。


 こっちの方がダメージ量は少ないけど、爆破範囲が広い。


 もともと俺の魔力なら多少弱い魔法を撃っても超威力になるから、より攻撃範囲が広い【光弾】を使うことにしたのだ。


「いけるところまでは【光弾】一発で勝利、ってパターンで行くか」


 楽でいいしな。


 まあ、さすがに四天王クラスだと【光弾】だけじゃ勝てないかもしれないけど――。


「……っと、次はマルスの試合だ」


 ちょうど選手用の花道からマルスが歩いてくるところだった。


「よう。次は君の番だな。がんばれ」

「あ、ありがとう……レイヴンくんに、は、は、恥じない試合をするよ……ぉ」


 マルスの声が裏返っている。


「なんか緊張してないか、マルス」

「してる。すごくしてる」

「落ち着け。深呼吸だ」

「すうはあ、すうはあ」


 俺の言った通り、何度も深呼吸をするマルス。


「よし、がんばれ」

「う、うん、ががががんばるるるるる」

「いや、緊張直ってないぞ!?」




 ――ともあれ、俺は観客席からマルスの応援をすることになった。


「レイヴン様、二回戦突破おめでとうございます」

「さすがね」


 キサラとマチルダがやって来た。


「二人もおめでとう。俺より前の試合だったから見てたよ。二回戦、危なげなく突破だな」

「えへへ」

「当然」


 照れたようなキサラと鼻を鳴らすマチルダ。


「二回戦はさすがに実力者たちは問題なく勝っているようですね。四天王の方々や、後はローゼさんやバルカンさんも」

「ん? ああ、あの双子か」


 クラス内ではいずれも上位の実力者たちだ。


 初日に絡まれたことを思い出しながら、


「後は――マルスがどうなるか」


 俺は試合場に注視した。


 ちなみに試合場は全部で八面あり、同時に試合が行われている。


 マルスがいるのは、そのうちの第六コート。


 対戦相手は三年生の女子で、確か学年ランキングは30位くらい。


 マルスはランキング500位台だから、相手の方がかなり格上だ。


 けれど、あいつには俺との訓練で身に付けた【螺旋魔弾】がある。


「がんばれ、マルス……!」


 俺は熱を込めて、彼の試合ぶりを見つめる――。

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忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


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