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2 努力する超天才は、すさまじい速度で進化する(予定)


 レイヴンは魔術師型のキャラクターだ。


 生まれ持った圧倒的な魔力量ですべてを粉砕するパワーキャラ。


 けれど、主人公は剣と魔法のコンビネーション……つまりは『技』によってレイヴンのパワーに対抗し、これを打ち破る。


 俺が学ばなきゃいけないのは一にも二にも魔法技術だろう。


「魔法の技って……どうやって鍛えればいいんだろう?」


 身体能力を鍛えるなら筋トレとか走り込みとかだろうけど、魔法のトレーニングというのは具体的に何をやればいいのか分からない。


「どうかなさいましたか、レイヴン様?」


 部屋に一人の少女が入ってきた。


 メイド姿で、頭には狐耳がぴょこんと出ている。


 獣人メイド――確かレイヴンの身の回りの世話から護衛までを務める超有能メイドの『キサラ・エリクシール』というキャラだ。


 ゲームのビジュアルそのままに息を呑むような美少女だった。


 薄桃色の髪に青い瞳、ぴょこぴょこ動く狐耳が愛らしい。


「えっと、魔法の技を鍛えたいんだけど――」


 どう切り出せばいいだろうか、と考えながら、俺はキサラに言った。


「そうだ。魔法のことを教えてくれる人間っているかな?」

「レイヴン様専属の魔導師範なら先週辞めたばかりで、まだ代わりが決まっていないんです。申し訳ございません」


 キサラが頭を下げた。


「辞めた? どうして?」

「その……レイヴン様と、えっと合わなかったとか、なんとか」


 ……ん?


「もしかして、俺が原因で辞めたんじゃないか? たとえば俺の態度が悪かったとか」

「い、いえいえいえいえいえいえ!」


 キサラが青ざめた顔で首を横に振った。


 ぴょこん、ぴょこん、ぴょこここんっ。


 狐耳が落ち着きなく揺れているのは、彼女の不安を表しているんだろうか。


「とんでもございません! レイヴン様の素行が理由では決してありませんので!」


 すごい勢いで否定された。


 けど、明らかにおびえてるよな、キサラ……。


 たぶん――実際にはレイヴンの素行の悪さが原因で魔導師範とやらは退職したんだろう。


 ゲーム内のレイヴンは傲岸不遜、自分勝手な俺様キャラ。


 周囲の人間をひたすら傷つけるだけのクズだからな……。


「……分かった。じゃあ魔法の教科書みたいなものはあるかな? 後任が決まるまで、とりあえず自分で学んでみたい」

「えええええええええええええええええええええええっ!? レイヴン様が……自分で学んでみたい!?」


 いちいちリアクション大きいな、この娘。




「ここが書庫になります。歴史書や文化、服飾、建築、絵画など各種が棚ごとに整理されていて――魔法書は一番奥にあります。案内しますね」


 と、キサラに先導され、俺は書庫内を歩く。


「この棚に入っているのは全部魔導書です」

「魔法の訓練方法が載っている書物があるといいんだけど……」

「訓練?」

「魔法能力を鍛えたいんだ。教師がいないなら、とりあえず独学でやるしかないだろ」

「ええええええええええええええええええええええええっ!? レイヴン様が自分の力を鍛えたい!?」


 毎回驚きすぎだと思う。


「あの……俺ってそんなに努力しない人間なのか?」

「それはもう!」


 キサラが身を乗り出して力説した。


「とにかく努力というものを一切しないですから! 超絶モノグサ! 怠け者! 傲岸不遜! 俺様気質! 素晴らしい素質があるのに、もったいない!」

「お、おう……」


 なんか途中でものすごい悪口の連打になってなかったか?


「だから……私は嬉しいです。ようやくレイヴン様がその気になってくれて」


 キサラは涙ぐんでいた。


「キサラ……?」

「以前から周囲に色々と言われていたので。次期当主にふさわしくないとか、弟君の方を次期当主にすべきだとか……それが悔しくて」


 言いながら、キサラは手の甲で涙をぬぐう。


「やっと、レイヴン様も次期当主としての自覚を持ってくださったのですね」

「い、いや、まあ……その、なんだ。うん」


 本当はそんな理由じゃないけど。


 俺はただ生き残りたいだけだ。


「とにかく、がんばってみるよ」


 俺はキサラに選んでもらった魔導書を手に取った。


『初心者用・魔法訓練書。1日30分のトレーニングで目指せ魔法マスター!』


 本にはそう書いてあった。


 ……なんかスポーツの入門書みたいなタイトルだな。




 俺ことレイヴン・ドラクセルは魔法の天才である。


 それもそんじょそこらの才能じゃない。


 100年に一人現れるかどうか、という超天才。


 生まれながらにして、その魔力量は並の魔術師の数十倍という規格外だ。


 ただし――努力を一切しない。


 少なくともゲーム内のレイヴンは魔法に関しておよそ訓練というものをしたことがない。


 生まれ持った素質だけで魔法を使う。


 そして、圧倒的に強い。


 ただ、ゲームシナリオでは、結局『天才ゆえの脆さ』を主人公に突かれ、敗北することになる。


 努力型の主人公が天才型の悪役レイヴンに勝利する、という王道ストーリーだ。


 では、もしもレイヴンが努力をしたらどうなるか?


「決まってる……最強だ」


 俺は魔導書を読みながら、魔法の訓練方法を学んでいた。


 魔術師として強くなる方法としてはいくつかある。


 まずはシンプルに魔力を増やすこと。


 次に威力の高い呪文を習得すること。


 他にも魔法の発動スピードに直結する詠唱速度を速めることなどもある。


 レイヴンはすでに世界最強最大の魔力量の持ち主だし、他の部分を鍛えた方がいいだろう。


「新しい呪文の習得と詠唱速度の上昇……この二つか」


 俺はあらためてレイヴンのステータスを見てみることにした。



****

名前:レイヴン・ドラクセル

LV:1

魔力:極大級

呪文:ファイア、サンダー、シールド

****



「使える呪文が下級の三つだけか……」


 そう、レイヴンは下級呪文三つしか使えない。


 だが、魔力量が桁違いすぎて、その三つだけで最強なのだ。


 実際、他のキャラが使う最上級魔法より、レイヴンが使う下級呪文の方が威力はずっと上。


『今のは最上級ファイアではない、ただの下級ファイアだ』


 というのが、ゲーム内でのレイヴンの決め台詞になっているほどだった。


「まずファイアの中級を覚えるか」





 俺は魔法の練習場にやって来た。


 ここはレイヴンのために作られた専用の魔法練習場らしい。


 防御結界が何重にも張られていて、強力な魔法を使っても外への被害を防げるんだとか。


 ただし、何度か言っている通りレイヴンは努力を一切しない。


 当然、ここを使ったこともない。


「さて、と。さっそく始めるか」


 俺は魔法書をめくった。


 魔法の呪文を発動するのに必要なのは、イメージと正確な詠唱の二つ。


 イメージというのは『その魔法がどんなふうに発現するのか』を思い描く力だ。


 ファイアを使うときなら、漠然と『火』を思い浮かべるよりも、燃え盛る『業火』なのか、ボール状に形成された『火球』なのか、あるいは『炎の渦』なのか、『火の矢』なのか――。


 そういった具体性が伴うほど、より精密に、あるいは高威力の魔法が発現する。


 そして、そのイメージづくりの補助となるのが詠唱だ。


「ええと、中級のファイアは『渦巻く炎』のイメージで生み出す……か。なるほど。詠唱は……ここに載ってるやつをそのまま唱えればいいんだな」


 よし、試してみよう。


 俺はまっすぐ右手を突き出した。


 書かれている通り、『渦巻く炎』を思い浮かべる。


 詠唱を棒読みで読み上げ、


「【ファイア・中級】!」


 発動した。


 ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!


 大爆発が起きた。


「え、えーっと……?」


 いや、自分でも驚いた。


 俺が放った中級ファイアは――。


 魔法の練習場を跡形もなく吹っ飛ばしたのだ。


 威力、強すぎないか……?

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