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10 魔王大戦に向けて


 こいつ――もしかして。


 俺はレスティアを見つめた。


 類まれな美少女という点を除けば、普通の人間に見える。


 実際、彼女も『自分が魔王の化身だ』というのは冗談だと言っていた。


 そもそもゲーム内に登場する魔王の名前は『アーヴィス』だし、青年の姿をしている。


 ……まあ、これは単に『レスティア』というのが仮の名前で、女子生徒の外見も仮の姿という可能性はあるが。


 けれど、それはそれとして――どうも引っかかる。


 だって、俺はこの世界における『悪役』だから。


 いずれ魔王軍の中枢に行く運命を持つ存在だから。


 なら俺に――魔王に深く関係する存在が接触してきても不思議じゃない。


 むしろ、遠からず接触してくるはずだと思っている。


 ゲーム通りなら三年後に始まる『魔王大戦』に向けて。


 今この瞬間にも、魔王の勢力が俺に近づいているかもしれないんだ。


「あら? さっきからあたしをジロジロ見ちゃって。もしかして――一目惚れでもした?」

「レイヴン様に対して失礼ではありませんか!」


 キサラが俺とレスティアの間に割って入った。


 彼女にしては珍しく怒ったような態度だ。


「キサラ……?」

「あら? ヤキモチ焼いちゃった? かわいい」

「ヤ、ヤキモチだなんて、そ、そんな……」


 たちまちキサラの顔が赤くなる。


「私とレイヴン様は主従ですので……あの身分差というか、私なんかが振り向いてもらえるわけないというか、だから、あのその……」


 急にモジモジし始める。


 どうしたんだ、キサラ……?


「ふふ、そういうところも可愛い。主従萌えね」


 レスティアが笑みを深くした。


「ま、今日のところは挨拶だけでいいわ。あたしのこと、覚えておいてね。レイヴンくん。これから仲良くしましょ?」


 パチンとウインクをするレスティア。


「じゃあ、あたしはこれで。またね」


 ついでに投げキスまでして去っていく。


 なんだったんだ、一体――。


「何よあいつ。初対面でレイヴンに馴れ馴れしくして……」


 なぜかマチルダまで怒っていた。


 今日は二人ともなぜか怒りっぽいぞ……?


    ※


 レスティアは一人、校舎の中庭を進んでいた。


 暇さえあれば学園内を散策しているのだ。


 いや――『偵察』というべきか。


 周囲を見回しつつ、先ほど会ったレイヴンのことを思い返す。


「なるほど、あれが人間側の『規格外』……か」


 レスティアの口元に微笑みが浮かんだ。


「ぜひ我が軍に欲しい逸材ね」


 魔力測定の授業の際にも見たが、とにかく驚くべき魔力だ。


 高位魔族すら圧倒的に凌駕しているだろう。


 とても人間だとは信じられないほどだった。


「本来なら三年後に控えた魔王大戦――少し早めようかしら、ふふ」


 レスティアの笑みが深くなる。


 魔王自らが軍を率いて、人間界に挑む決戦――いずれは『魔王大戦』と呼ばれるであろうその戦いを、彼女は心待ちにしていた。


 ただ、そのためには戦力が必要だ。


 魔族が人間より高い魔力を持っているとはいえ、なにしろ絶対数が少ない。


 そして人間は……特に一部の優れた魔術師は侮れない存在だった。


「人間側からスカウトしたいものね。レイヴンと――そして、もう一人の逸材――」


 彼女が目を付けているのは、もう一人いる。


「レイヴンとマルス……二人がそろえば、我が魔王軍は無敵の兵団となる――」


 魔王レスティアの目が妖しく輝いた。


     ※


「おはよう、レイヴンくん」

「ねえ、レイヴンくん。昨日の課題やってきた?」

「ねえねえ、レイヴンくん、よかったら今日の昼はあたしたちと一緒に食べない?」


 翌日――俺は教室に入るなり、複数の生徒からかわるがわる話しかけられた。


 魔術師の素質を持つ者は男よりも圧倒的に女の方が多い。


 俺が所属する一年A組も30人中で男は俺を含めて4人、残りの26人が女である。


 で、その女子生徒たちが俺に群がってくる。


 はっきり言ってモテモテだ。


 ……まあ悪い気はしないんだけど、ちょっと戸惑っているのが本音だった。


 前世でこんなにモテたことがないからな……。

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忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


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