30 連係と接近
「がっ……」
エイルが【ダイヤモンドバイソン】の角に腹を貫かれ、くぐもった悲鳴を上げた。
鮮血が勢いよくほとばしる。
どさりっ。
角が引き抜かれると、エイルはその場に崩れ落ちるようにして倒れた。
「エイル!」
俺は思わず叫んだ。
「くっ……」
ジャネットが彼に駆け寄り、
「【ヒール】!」
治癒魔法を発動する。
彼女は分身や探知など様々な魔法を使えるようだ。
なら、治癒は彼女に任せ、俺はモンスターの対処といこう。
「俺たちでやるぞ、マルス」
「あ……あ……」
マルスは顔面蒼白で呆然としているようだ。
目の前で仲間が致命傷に近いダメージを受けるのを見て、ショックを受けたんだろう。
「マルス、しっかりしろ!」
俺は彼を叱咤した。
「俺たちでやるんだ!」
「あ……う、うん」
ようやくマルスも気を取り直したようだ。
「【ブラスティボルト】!」
俺が雷撃を放つが、【ダイヤモンドバイソン】は素早く避けた。
だけど――。
「はあああああっ!」
【エルシオンブレード】を発動したマルスが、敵の避けた方向で待ち構えている。
最初から俺の一撃は、マルスがいる場所に誘導するためのものだったのだ。
この局面、敵モンスターに逃げられるのが一番厄介だからな。
人里にでも降りられ、被害が出たら目も当てられない。
この場で確実に倒す――。
それが俺とマルスが打ち合わせなしのアイコンタクトだけで導き出した結論であり、作戦だった。
ざんっ!
マルスの振り下ろした【エルシオンブレード】が【ダイヤモンドバイソン】を両断した。
既に一体目を無力化しているから、二体目に関しては討伐しても問題ない。
後は一体目を捕獲し、エイルの治癒を待って引き上げれば、任務完了だ――。
「――!」
と、そうはいかないらしいな。
俺は新たに接近する高魔力反応を感じ取った。
探知系の魔法に関しては、俺はジャネットほどの能力を持っていない。
それでも十分に感じ取れるほどに――近づいてくる魔力の反応は莫大なものだった。
強い――。
おそらく、ここに向かってくるのは【ダイヤモンドバイソン】をはるかにしのぐ敵だ。
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※補足
『どこまで続刊できるのか』については売り上げによるところもあり、最悪2巻打ち切りもありえます。なので、この作品に関しては2巻が最終巻になっても大丈夫なように、綺麗に区切りをつけました。
『打ち切られた場合、作品が中途半端なところで終わってしまう』という形にはならないので、そこは安心してお求めいただければと思います。
(3巻以降も続くようであれば、その展開も考えてあります)