27 立ち位置
「いや、緊張してないわけじゃないけど……まあ、同行するメンバーが強いし、お前だっているだろ」
俺はにっこり笑って答えた。
実際のところ、緊張よりも任務への集中力が高まっている状態だった。
それに、エイルやジャネットという魔法師団でも屈指の実力者が一緒だ。
模擬戦と任務はまた勝手が違うと思うから、二人が一緒にいてくれるのは心強い。
もちろん、マルスのことも頼りにしている。
「僕は、以前よりも精神的に強くなったつもりだけど、やっぱり事あるごとに心が揺らいじゃうな。正直、ちょっと怖いよ」
マルスが苦笑した。
「……いいんじゃないか。お前は、それで」
俺は少しだけ考え、答えた。
冗談めかした軽口で、マルスの緊張をほぐすという選択肢もあるけど、ここは真面目に俺が思うことを伝えようと考えたのだ。
「今までだって、マルスは自信がなかったり、心が折れそうな局面にぶつかってきただろ。でも、最後には乗り越えてきたじゃないか。立ち向かって、もがいて、悩んで――そこから答えを見出して進むことができるのが、お前の強さだ」
「僕の、強さ――」
「強さの形は人それぞれさ。お前からは俺が強い人間に見えるかもしれないけど、俺からはお前こそが強い人間に見えている」
言って、俺は笑った。
「だから、頼りにしてるぜ、相棒」
「っ……!」
マルスは照れたような顔をした。
と、
「本当に仲いいね、君たち」
ジャネットがからかってくる。
「はは、友だちだからな」
俺はにっこりとした顔で答える。
「友情は素晴らしいが、任務では気を抜くなよ」
エイルが俺とマルスを見て、軽くにらむ。
「特にレイヴン、君は俺やジャネットより確実に強い。模擬戦においては、な。そこは認める」
と、真剣な表情で続けるエイル。
「だが任務は――実戦は模擬戦とは違う。俺やジャネットの指示に従ってもらう局面も出てくる。実力で劣る俺たちに従えるか?」
「少なくとも実戦経験なら、エイルやジャネットの方が上だろ。なら、その経験には素直に敬意を払うし、命令にも従う」
俺はエイルを見つめ返した。
「二人の仕事ぶりから、俺も学ばせてもらう。もっと強くなるためにね」
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※補足
『どこまで続刊できるのか』については売り上げによるところもあり、最悪2巻打ち切りもありえます。なので、この作品に関しては2巻が最終巻になっても大丈夫なように、綺麗に区切りをつけました。
『打ち切られた場合、作品が中途半端なところで終わってしまう』という形にはならないので、そこは安心してお求めいただければと思います。
(3巻以降も続くようであれば、その展開も考えてあります)