25 ある日の模擬戦風景2
一方、マルスも努力を続けている。
以前は自信をなくしたり、ちょっと闇堕ちしてないか? って思うくらい心配な時期もあったけど、そこからすっかり精神状態を回復させたみたいで、俺もホッとしている。
先日、序列二位のエイルとの模擬戦では敗北を喫したものの、その闘志は少しも衰えていない。
むしろ、その敗北はマルスの闘志に火をつけたように思えた。
さらなる成長を誓うきっかけになった――。
俺にはそう見える。
そんなマルスの良き競争相手となっているのが、序列七位のジャネットだ。
彼女は以前、マルスに模擬戦で敗れた経験があり、そのリベンジを誓って、よくマルスと一緒に訓練に励んでいる。
そう、今も――。
「マルスくん、今日の訓練、すごく集中してたね。何かつかんだ?」
模擬戦の後、ジャネットがマルスに話しかけているのが見えた。
その声には以前よりもずっと親しみが増しているようだ。
「ジャネットさん……はい、少しだけど、新しい戦い方が見えてきた気がするんです」
マルスもジャネットに対して、以前よりも打ち解けた様子で答える。
「へえ、どんな戦い方? 私にも教えてくれる?」
「ジャネットさんにはまだ内緒です。次の模擬戦で驚かせたいので」
マルスが悪戯っぽく笑った。
「じゃあ、楽しみにしてる。私も負けないからね!」
ジャネットも楽しそうに笑い返す。
と、それから真剣な顔になり、
「でも、あんまり無理しないでね。マルスくん、頑張り屋だから心配になる時があるの」
と、気遣う言葉をかけた。
「あ、ありがとうございます、ジャネットさん」
ん、なんか顔が赤くないか、マルス?
そうやって訓練が続く中で、俺は魔族の動向が気になっていた。
幸い、今は小康状態だ。
けれど、以前のように一斉攻撃が来る可能性は十分にある。
もしかしたら明日にも――いや、次の瞬間にも魔族との大戦に雪崩込むことだってありうる。
俺は緊張感をもって日々を過ごしていた。
そんなある日、俺やマルス、エイル、ジャネットの四人に対し、クーデリア団長から一つの任務が言い渡された――。
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『打ち切られた場合、作品が中途半端なところで終わってしまう』という形にはならないので、そこは安心してお求めいただければと思います。
(3巻以降も続くようであれば、その展開も考えてあります)





