23 マルスの戦い3
マルスは黄金の剣を手に、捨て身の突撃をかけた。
「おおおおっ……」
「劣勢になって焦ったか? まだまだ戦い慣れしていないな」
エイルはそれを易々と避ける。
「大振りになっているぞ。もっと精神を制御しろ。焦りが君の攻撃を雑にしている」
ばしゅっ!
さらにエイルが放った魔弾が、マルスに命中する。
またライフが減った。
「くっ、まずい――」
マルスはますます不利な状況に追い込まれた。
「だけど、僕は! 負けない!」
それでも闘志を萎えさせず、マルスはなおも前に出た。
「その意気や由、といったところか」
エイルが微笑む。
「後は――経験を積むことだ」
「負けた――」
マルスはその場にがくりと膝をついた。
結局、そのまま時間切れになり、マルスとエイルの模擬戦はライフの差で決着がついた。
エイルの、勝ちだ。
序列二位の壁は、まだ厚いということか――。
「……悔しい」
訓練の後、マルスは一人、拳を握りしめていた。
「マルス……」
「――平気だよ」
声をかけた俺に微笑むマルス。
その顔に絶望の色はない。
以前のように、闇に堕ちていくような雰囲気はまったく感じられなかった。
「エイルさんや……他にも何人かに負けたけど、得るものは大きかったよ。今の僕には、まだ足りないものがたくさんあるって分かったし、具体的に何を身に付ければいいのかが見えてきた」
マルスの瞳には、強い決意の光が宿っている。
「また鍛え直すよ。何度でも、一からね」
マルスの心は強く成長したんだ。
そんな友だちの姿が俺には誇らしく、嬉しかった。
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(3巻以降も続くようであれば、その展開も考えてあります)