18 【エルシオンブレード】
ディフォール対マルス――。
決戦の火蓋が、切って落とされた。
「【エルシオンギア】の力、だと……!? 馬鹿な、なぜ人間のお前がそれを!」
ディフォールが驚愕の声を上げる。
その隙を、マルスは見逃さない。
どんっ!
地を蹴り、一瞬でディフォールとの間合いを詰める。
「ぐっ……うううっ……!」
あまりの速度に体がちぎれそうだった。
元来、マルスは魔術師である。
身体能力は人並み程度だし、こんなふうに接近戦の間合いで戦う機会はほとんどないに等しい。
だが、新たに目覚めた力――【エルシオンブレード】は接近戦用の魔法兵装だ。
まず間合いを詰めなければ使用できない。
そして、今のマルスは【エルシオンブレード】の力を受けて、身体能力が異様なまでに増大していた。
その圧倒的なパワーに戸惑いつつも、マルスはひたすら駆ける――。
「はあっ!」
そして黄金の剣【エルシオンブレード】を振るった。
「ちいっ……!」
ディフォールは辛うじてそれをかわすが、その表情には焦りの色が浮かんでいた。
マルスの猛攻は止まらない。
剣戟の応酬。
魔法の応酬。
最初は戸惑いながらも、マルスは徐々に【エルシオンギア】の力に慣れていった。
まるで最初から自分のものだったかのように、力が体に馴染んでいく。
「お、おのれ――」
ディフォールの顔には、はっきりと焦りの色があった。
次第にその戦いは互角となり、さらに――。
「おおおっ!」
「なっ……!?」
マルスの一撃が、ついにディフォールの防御を打ち破った。
ディフォールの頬を剣先がかすめ、一筋の血が流れる。
「馬鹿な……先ほどまでとは、まるで違う! この私が――」
信じられない、というようにディフォールがうめく。
相手の劣勢は明らかだった。
マルスは戦いの最中にも、さらに力を増していく。
どこまでも、無限に。
「僕は強くなる!」
マルスは叫んだ。
剣を構え直し、ディフォールをにらみつける。
「この一戦で! セレンのために! セレンの想いを背負って!」
黄金の輝きが、マルスの全身を包み込んでいた。
それは、悲しみを乗り越え、決意を新たにした主人公の輝きだった。
「そしてディフォール! 君を倒す!」
いよいよ決着の時が来たことを、マルスは確信していた。
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