15 迫られる選択
「私がそれを見過ごすと思うか?」
ディフォールが前に出た。
既にその表情から余裕の笑みは消えていた。
「マルスは必ず私の元に来ると思っていたが――見込み違いだったようだな」
「……!」
マルスは表情を引き締める。
確かに、セレンの話に気持ちが傾いているのは事実だ。
それに――ディフォールの表情の変わりっぷりを見ると、やはり不穏なものを感じる。
彼は、魔族なのだ。
そのことを今さらながらに思い起こす。
(僕は――魔族の誘いにあっさり乗るところだったんだな)
それだけ気持ちが追い詰められていた、ということか。
けれど、セレンの話を聞いて、目が覚める思いだった。
「僕は――」
ディフォールを見据える。
「君の誘いには乗らない」
「……ふざけるなよ」
ディフォールがうめいた。
ごうっ……!
その全身から黒い魔力のオーラが立ち上った。
「お前には強大な潜在能力がある。我ら魔族のために利用させてもらう」
「そうはさせません」
セレンが光の剣を手に、前に出た。
「彼は人類の希望となる少年です。無理やり連れていくつもりなら、私が守ります。無論、天軍総員で――」
「ここで全面戦争でもやる気か? ええっ?」
ディフォールの口調が乱暴になる。
「…………」
「知っているぞ。【絶対者】の制約により、お前たちは全力で私たちに攻撃できない。もしも、こっちがその気になれば――滅びるのはお前だ、セレン」
「……でしょうね」
セレンは険しい表情になった。
「覚悟の上です」
言って、彼女はマルスを見つめた。
「ですが――ただでは死にませんよ」
ずんっ!
次の瞬間、彼女の持つ光の剣がマルスを貫く――。
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