12 主人公としての道1
「ならば彼に決めてもらおうじゃないか。我らのうち、どちらに与するのかを」
ディフォールが提言した。
「……決めてもらう、ですって? 魔族の提案には乗りませんよ」
セレンが身構えた。
「ここであなたを誅すれば、すべては終わります」
「おっと、ここで私に攻撃しない方がいいと警告しよう」
強気に出るセレンに対し、ディフォールはあくまでも穏やかな態度だった。
「この私の動向は多くの同胞が把握している。私は彼らの中心魔族の一人だからね」
「…………」
「私が天使に危害を加えられれば、すぐにその情報は同胞たちに広まる。そして――一気に全面戦争に雪崩こむだろう」
「……!」
セレンの表情がこわばった。
「私たちはこれでも人間界に気を使っているんだよ。無意味に彼らを害する気はない。人間には――利用価値があるからね」
「……いいでしょう。この場で戦うことはしません」
セレンが戦闘態勢を解いた。
「話し合いといきましょうか」
「望むところだよ」
ディフォールは微笑み、マルスに向き直った。
「話の続きだ。ぜひ我らの陣営に加わってほしい、マルスくん」
「僕は魔族の元になんて――」
「力が欲しいんだろう?」
ディフォールがささやく。
まさしく悪魔のささやきだ。
「我らの元に来れば、それが手に入る」
「…………」
「君には、どうしても勝ちたい相手がいるんじゃないのか?」
ディフォールがさらにささやいた。
「それこそ――悪魔に魂を売ってでも」
「っ……!}
マルスは思わず息を吐きだした。
胸の鼓動が早まっていくのを感じる。
そう、僕は勝ちたいんだ。
レイヴンくんに。
でなければ、僕の心は――誇りは、一歩も前に進めない。
もしその力を与えてくれる者がいるなら、僕は――。
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