11 天使と魔族
「そこまでです、魔族!」
「――お前は」
ディフォールが顔をしかめた。
「天使か」
背中から光り輝く翼を伸ばした少女が、上空から降り立つ。
「セレン・ディ・フルーレ。お見知りおきを」
白い肌に白い髪、赤い瞳をした美少女が元気よく笑った。
彼女は――転校生だ。
だが、背中から伸びる翼は何だろうか?
マルスは戸惑っていた。
どうやら魔力を翼の形にして具現化しているようだが――。
こんな魔法は見たことがない。
「マルスくん、魔族の言うことを聞いてはいけませんよ」
セレンはマルスを軽くにらんだ。
「それにしても――魔族が大規模侵攻をかけてきたこの時期に、人間側の主戦力を引き抜こうとは……随分大胆なことをしてくれますね」
「ふん、それはお前たちも同じだろう。マルスを天軍に引き入れるために来たのだろう、セレン?」
「否定はしません」
彼女……セレンがうなずいた。
「だけど私は――私たちは彼を利用するつもりはありません。あなたたち魔族とは違う!」
「私だって利用などしない。彼は大切な友人だ。そしてこれからは――もっと親しい友になれると私は確信している。そう、無二の親友に」
「白々しいですね」
吐き捨てるセレン。
「マルスくん、私の正体は――天使です」
「天使……」
さっきディフォールもその言葉を言っていた。
確かこの間の魔族侵攻の際、天使も出現していたが――。
「あなたも天軍の姿を目にしていますね? 魔族の大規模侵攻に合わせて、私たち天使の軍団も大勢が地上に降り立ちました。私は先遣隊として、すでにここに降りていましたが」
と、セレン。
「あなたたちの学園に転校生として来たのも、一つには予想されていた魔族の侵攻に早急に対応するためです」
言って、彼女はマルスに近づく。
「そして、もう一つは――天軍に協力する人間側の戦力を把握すること。そして協力を依頼すること。あなたのように強力な魔術師に、ね」
「僕は……」
「あなたこそ――これから行われる魔族軍との対戦において主戦力となる人間。いわば主人公となれる存在なのです、マルス・ボードウィンくん」
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